アネットとシルヴィ 第12回 ロランの『魅惑の魂』から
だが手紙の探索はまだ終ってはいなかった。別の引き出しから、より長く関係が続いたものが発見された。それは、母親の手紙よりも大事にされていたことが明らかだった。書かれている日付から、この手紙のやり取りが長い年月に渡っていることは容易にわかった。それには二つの筆跡があった。 一つは、稚拙でだらしない文字で殴るよう書かれていたが、束の途中でなくなっていた。もう一つのものは、最初は幼ないが力強い筆致だったが、少しずつ自分を主張するようになってきて、後年までも続いていた。アネットが苦痛を感じたのは、それが父の最後の数ヶ月まで続いていたことだった。 この手紙の書き主は、アネットが父を自分だけのものと思っていた時期の一部を彼女から盗んでいただけではなかった。この侵入者は父のことを「私のパパ」と書いていた!…
彼女は痛手に耐えられなかった。怒りの身ぶりで、彼女は肩にかけていた父のガウンを放り投げた。手紙は手から落ち、彼女の身は椅子に折りたたまれ、目は乾き頬は燃えてた。もう彼女は自分を理解できなかった。彼女は激しい感情の揺れの中で、自分が何を考えているのか分からなかった。だが、彼女は怒りを込めて考えていた。父は私をだました!…
彼女はもう一度、断罪する必要を感じている手紙を取り上げた。今度は、最後の行までを読み終えるまで彼女はそれらを手放さなかった。彼女は読んだ。鼻を膨らませ口を閉じ、ひそかに嫉妬の炎に燃やしていた。この手紙の親密さを知って、父親の秘密を暴いてしまったが、彼女は良心の罪を犯しているかもしれないなどの考えは一瞬も持つことはなかった。彼女は一瞬たりとも自分の権利を疑わなかった… 彼女の権利! そう思う気持が理性を遠ざけていた。まったく違った専制的な力が口を開いていたのだ… それどころか、苦しんでるのは自分自身だと彼女は思っていた… 彼女の権利! 父のために!