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母と息子 108『魅惑の魂』第3巻 第2部 第36回

承前

 閉じ込められている、こう思う気持ちとともに若い肉体が燃え上がった! ここは牢獄だ、宿舎は中学生たちにとっては街よりも、さらに危険な場所でしかなかった。ここには倦怠しか存在しなかった。そして倦怠は精神をついばんで破壊していく。不安、期待、欲望、恐怖、残忍、これがこの小さな動物たちの動かし悩みをさらに大きくしていく。包囲された都市に重くのしかかる硫黄の雲は彼らの頭脳を圧迫し、彼らの手足を腐食させる。
 監視が緩んでる、小さな心たちがそれに気づいて、汗にまみれた寮の寝室全体にそれが伝わっていた。寮生の今日の担当が模範を示してくれた。彼は鍵の保管係を誑し込んで黙認に成功した。そして三日うちの一晩を外出(脱出?)できるようにした。監督官自身は近くの部屋でいびきをかいている。なにごとも神妙に行われさえすれば、厄介な問題はなくなって夜明けまで少年たちは解き放たれる。
 そのときマルクは耳を傾けていた、息をため込んで、そこに大きな望みを持つことはできなかった。だが彼は部屋の窓から宿舎の庭、牢獄の庭に飛び込んだ…

つづく


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