母と息子 57『魅惑の魂』第3巻第1部 第57回
ペルティエにはそもそも娘はいない。しかしすでに彼の名誉には(そう解することできるなら)影が見えていて、傷つくことには変わりなかった。彼の妻は綺麗な女だったが、ゴシップが好きで陽気で気も利いていた。そして絹で編んだストッキングをつけ、それを二十の紐が付いた編上靴を履いていた。それは彼女自身が働いて手に入れた金で買ったものだった。彼女は工場で働いているものの、笛に来たものは太鼓で出ていく… これはなんと戦争の時代に相応しい諺でろう! 工場には立派な愛国者がいる。ペルテイィエの妻もそうだった。彼女は夫を騙してはいても、相手は同盟国の者たちだけしかない。これは夫に対して悪いことなのだろうか? これは彼とともに戦っていることに変わりない。そう言って彼女は笑っていた。このゴロワーズが言うことは見当外れでない。どうなんです、神様! 彼女が面白く生活を続けることが、可哀想な夫に状況が悪くなったとは言えない… こうした場にいないの者には気の毒な話と言うしかない! 今の世間の状況では、これまでのこと、そしてこれから起こることを、いあら考えてもどうし宇ようもない! 現在は大きな「胃袋を持っている。それがすべてを受け取り、すべてを欲望する、それが一切だ。それは実際には「無」と言うべきものだった。それは今を顕す深淵だった。