社労士法人立ち上げの背景と事業内容
「これからの労務」を語るWeek として 8/29〜9/2 の毎日連続、Youtube Liveでお話をさせていただきました。
その中で「納品主義からの脱却」という話題が出ましたが、お聴きいただいていた方からも共感をいただく機会も多く、記事にいたしました。
(noteの「メンバーシップ」機能にて公開したものを加筆・修正しております。)
※「これからの労務」WeeK のアーカイブはこちらからご覧いただけます。
納品主義とは
きっかけは、たまたまどこかの社労士さんが「納品」ってキーワードを利用しているのを見かけたんですよね。例えば、毎月の給与計算を「納品」と表現していることに少し違和感を覚えたのでちょっと考えてみました。
運用・保守管理とか定期メンテこそ、中小企業が特に必要とされているはずなんですよね。労務管理を筆頭に、中小企業業務がほとんどの場合、世の中の変化の振れ幅に対して、メンテナンスや見直しが後手に回っていると思います。なので、基本的にはここに需要があると思っています。つまり、「就業規則を作って終わり」「給与計算を締めて終わり」以上のニーズがあると感じています。
(もちろん、安く納品型を提供することもニーズとしてはありますので、どちらが良いとか優れているとかの話ではありません)
一方、社労士などのサービス提供側は、多くにおいて「納品主義」だから毎回・毎月の成果を積み上げにくく、伸びも頭打ちになるのではないかと考えています。労務の外部相談先としてビジネスをやる、ということは、売上=顧客企業の労務への投資額 だと思います。つまり、毎月毎月の額が、作業代行料金だと、顧客企業の成長度合いも頭打ちになってしまう、もしくは顧客が必要なサービスを外部に求めても見つからない、という需給格差が起きてしまうのではないでしょうか。
納品主義の課題
この納品主義の課題はもう一つあると思います。
顧問先は「納品物」に対して「対価」を払っているわけですから、ある理想形のものが納められると思うわけですね。
しかしながら多くの場合、
1 毎回変わる理想形(企業のフェーズが変わるからです)
2 そこに至るまでの整理は加味されない(結果しか見てもらえない)
という顧客ニーズの曖昧さや振れ幅リスクを孕んでいます。つまり給与計算ひとつとっても、顧客は毎回、欲しいものが違う可能性があるということです。
1については、法改正、時流、会社の置かれている状況などで変わります。なので、例えば、給与計算をやっていても求められるポイントがコロコロ変わってる可能性があるってことだと思ってます。給与計算に限らず、労務相談も同じです。
この状況で受託し続けた場合、一度何か問題が起きると「だからまるっと全部お願いしてたのに」と言われてしまいます。これは、解いてほしい課題も不明、かつその変化が大きいにもかかわらず、「納品」をしているからです。こういうことが繰り返されるので、サービス提供側は、「納品」だからこそのチェックリストなどの「検品」に労力時間をかけてしまいます。そのサービスレベルそのものではなく、提供しなければならないサービスのポイントがズレていたにもかかわらず、です。
ではどうしたら良いのでしょうか。僕は、当たり前のことですが、売り手と買い手のギャップを克服することで、顧客目線でのサービス提供が可能になると思います。
顧客の理想形が変わる、ということは常に顧客の要望をキャッチして変化しなければなりません。いまのやり方では「納品」ですから月単位や仕事単位で「完了」になってしまいますね。相談を受けてもそれに対して回答して終わり(=納品)、と言った具合です。このままだと、連続性が失われ、部分の仕事だけ、になってしまいます。なので、ここを「完了」とせず、「保守管理」するという目線に変えなければなりません。あくまで未完成というか、理想に向かって努力しつづける、その伴走をする、ということです。 業務のSaaS化みたいなものですね。そのためには、保守管理の重要性を説くことが必要ですし、理想に一緒に向かうサービスモデルに変える必要があります。
次に、2の場合ですが、「納品」する側というのは、最終工程を引き受けており、最終責任を負っていることになります。つまり、仮に前工程でトラブルがあると後工程に響いた場合、最終のOUTPUTの質すら変わるということです。給与計算で言うと勤怠が締まらない、社会保険手続きで言うと、必要な情納品主義の課題報提出がない、などです。そんなことがあったとしても、完了品に対するクレームは寄せられがちです。そしてこのような場合、大抵の確率で、前工程の問題は顧客側にもありますが、タイトな日程などで辻褄を合わせるのは後工程です。作業期間が3日でも1日でも仕上げなければなりません。ちなみに、ここでいただける報酬は同額ですね。「納品」主義なので。
いかにして脱却するのか
そうなってくると、現場(社労士事務所等)では「納品」を守るための自オーダーしか出せなくなります。「●日前までにデータがこないと出来ません」などというものです。事務所側もスタッフを守りたいので、顧客にオーダーだけをそのまま伝えてしまいがちです。お互いの業務の一線を越えることなく、それぞれの持ち場だけで課題を解決しようとしてしまうわけです。
けれども、業務が一続きになっている以上、前工程に入っていかないと本質的には改善されないので、お互いに苦労していくんですよね。。こうなってくるといざトラブルになったときには泥試合です。社会保険手続きにしろ、給与計算にしろ、関係者が多く存在し、1業務については断続ではなく連続したフローの中で行われるわけですから、
いずれにせよ、部分最適をやめて、全体最適をすることで、双方にメリットが出ることを理解してもらわなければ、「納品」(=単なる外注企業)になってしまいます。 仮に「納品」でよいなら割り切った上で、アウトソースする方の作法も定義して受託するのも良いでしょう。ただし、社労士事務所としてだったり、労務相談とかを一緒に受けてしまうので、この境界線はすぐに曖昧になりがちです。しっかりとやるなら十分な設計、説明が必要です。もしかしたらそもそも別サービスとして、振り分ける必要があるかもしれません。幸い時代がそう言う風潮になりつつあるので、チャンスではあるとは思います。
納品主義からの脱却が、社労士事務所だけではなく、顧客の成長にとっても良いことである、と、いちはやく啓蒙し、営業することでチャンスが開けると思いますが、そういう自分たちが新しい価値観になれていないと、なんの信憑性もなくなってしまいます。永遠の未完、というほど大袈裟ではないですが、やはり企業も人もナマモノである、という意識でサステナブルに伴走することへの価値転換が求められてくるのではないかと思います。
具体論については、別途、士業向けIT勉強会「クラウドは金曜日」などでお話ししていきたいと思いますが、解決を”肩代わり”して引き渡すことをゴールにするのではなく、お互いの視座を高め、パートナーとして伴走する、長くて高い目標を共有する、などが期待されていると思います。
その他にも
・提供する価値をあらためて議論して見直す
・顧問料のあり方を見直す
・組織体制を見直す
・コミュニケーションの取り方を見直す
・ツールを見直す
などできることがたくさんあります。
このような納品主義からの脱却による、新しい事務所モデルを作れない か、に挑戦することにしました。
一緒に挑戦したい、という方、ぜひお話ししましょう!!