金持ちイジメに見えて金持ちに有利になる世論誘導
もう二十年ほど前から「東大に進学するのは裕福な家庭」という報道が繰り返されている。そしてそのことを知っている人は非常に多く、今や常識。そのためか、街角インタビューでも「どうせ東大生は金持ち出身なんでしょ、だったら学費上げても構わないでしょ」という意見が。
これは恐らく「金持ちからはふんだくったらいい、ざまあみろ」という報復感情も多少手伝っているのだろう。
しかし実態は逆になる。金持ちには150万円の学費なんか痛くもかゆくもない。しかし貧困家庭ではとても支払えない金額。単に貧困家庭を大学という学歴から締め出す効果しか起きない。
これと似たことが政治でも。日本では「政治家はカネに汚い」というイメージがある。どうせ権力を利用してお金儲けしてるのだし、元々金持ちだろうから、政治家は無給にしてタダ働きさせればいい、という意見がしばしば出る。これを、金持ち政治家に一矢報いるアイディアくらいに思う人が少なくない。
しかし実態は逆となる。無給となれば金持ちしか政治家になれなくなる。貧しい人は議員になると食べていけなくなるからだ。すると金持ちは、政治権力を利用してますます金持ちに有利な社会システムに変えていくだろう。金持ち政治家は、表向き「無給だから出費ばかりで大変」と嘆きながら、裏で大儲けして、内心舌を出して笑うことだろう。
貧困層は「金持ち政治家め、無給で働け、ざまあみろ」と、溜飲を下げるけど、その実、金持ち政治家は自分たち金持ちに有利な法改正を進め、貧困層をさらに搾り取る政策を進めるだろう。議員を無給で働かせることは、金持ちを苦しめるどころか、彼らに有利な社会にし、貧困層を苦しめるだけに終わる。
朝ドラ「虎に翼」で、憲法12条が登場したという。
「第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。」
これは、どの国民もその気になれば大学に進学でき、あるいは国会議員になれる社会であり続けることにも通じているのではないか。
私は以前から気になっている。「東大生は金持ち出身が多い」「政治家は金持ちが多く、金に意地汚い」という言説は、事実なのかもしれないが、それが繰り返し報道されるのを利用して、金持ちに有利な社会に誘導しようとしている輩がいるのではないか、と。
「金持ちだったら学費上げればいいじゃないか、議員は無給にしてタダ働きさせればいいじゃないか」という方向に世論を誘導することで、金持ちに有利な社会に変えようと企んでいる連中がいるのではないか?と。実際、学費を上げ、議員を無給にすれば、貧困層を搾り上げ、金持ちに有利な社会に変貌するだろう。
騙されてはいけない。学費を上げることも、議員を無給にすることも、金持ちを困らせることになりはしない。表向き、金持ちは「困った、弱った」と一芝居打って、金持ちに有利な社会を作り上げるのに手を貸すだけだ。
私達は「不断の努力」で、貧困層が貧困から抜けられる社会の実現を目指さねばならない。貧困家庭でも、子どもが望めば進学できる社会にせねばならない。経済的理由で夢を断念せねばならない社会はおかしいと言い続ける社会を目指さねばならない。
国会議員も、金持ちでなくても目指せる仕事にしなければならない。貧困層出身の人が尻込みするような薄給や無給であってはならない。むしろ、金の心配をせずとも議員ができ、貧困層の待遇改善のために努力する議員が増える社会システムを不断の努力で目指さねばならない。
金持ちが東大に行くのは当たり前、という現実を当然視するのはおかしいと振り返る必要がある。貧困層でも東大に行けるのが当たり前、と言えるようでなくてはならぬ。それができない社会はどこかイビツなのだとむしろ反省すべきなのではないか。「不断の努力」が足らぬのではないか。
国会議員ならば金持ちに違いない、と考えることを当然視するのはおかしいと考える必要がある。貧困層でも国会議員になれる社会が当然で、それができない社会はどこかがイビツだと考える必要がある。それができないなら、きっと「不断の努力」が不足しているのだと思う。
金持ちに一矢報いようとするその考えが、むしろ金持ちに有利な社会へと誘導するリスクに気づこう。そして、金持ちに有利な社会はどこかがイビツなのだと考える「常識」を取り戻そう。私達は誰も奴隷ではないのだから。
追伸
この方が試算してくれているけれど、今回計画している東大の値上げで、東大の予算がどれだけ増えるかと言うとわずか1%強。学生の支払う学費なんて、全体から見ればそんなもん。200万にしても17%でしかない。それならいっそ学費をタダにした方がいい。
https://x.com/e869120/status/1798903360130863435?t=_6H1Jv2yrw4Xz6Pa_H_Aaw&s=19