「MMTがよくわかる本」を読んで

「MMTがよくわかる本」読了。
青木秀和さん勧めてくれただけあって、良書と思う。MMTという言葉が出てくる時によく伴う極端な話のいくつかに否定的な見解と説明があって、妥当な内容。私の印象では、「お金の現実見ましょう」というのがMMT、ということらしい。
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しかし最後まで疑問が払拭されなかったのは、巨額の財政赤字が出ても構わない、とする論拠がどうもはっきり示されていないこと。著者としては、お金の仕組みがこうなんだから考えなくていい、で済んでる話のようだけど、私は、それはMMTによって国家運営されたとき初めて成り立つ話のように思う。

戦争に負けたとき、戦時国債を大量に持ってる国民は多かった。「贅沢しなければ一生働かずに食べていける」ほど、祖母は持っていたらしい。しかし戦後のハイパーインフレでほぼ紙屑に。この時期、国民は塗炭の苦しみを味わった(餓死者も)のだけど、これと同じことが再現しないか、私は気になる。

戦後は戦死者も多く、焼け野原になって工場も全部焼けてしまった。労働力不足、生産力不足の時に、戦時国債をもとにモノを買おうとしたら、モノがないのにお金(戦時国債)だけあるわけだから、そりゃハイパーインフレにもなるだろう。この経済混乱で、餓死する人も出た。

気になるのは、現代あるいは近未来の日本でも、違う形だけど似たことが起きるのでは、ということ。少子高齢化で労働力不足が進んでいる。世界貿易の混乱で、海外からモノを買い付ける力を弱めている。そんな中で、日本国民は1900兆円ものお金を持っている。

もしこの膨大なお金で、モノやサービスを買い求めようという動きが加速すると、労働力も生産力も不足している中では、ハイパーインフレになりかねない、と私は感じるのだけど、どうなのだろう。戦後まもなくの日本と、形は違えど
・労働力・生産力不足
・やたらお金がある
の条件は似てないか。

お金がむやみにある状態で労働力不足・生産力不足が起きると、それまで隠されていた問題が一気に表面化し、それが「お金崩壊」になる気がする。その不安を払拭してくれる記述は、この本にはなかった。

ただ、現在、お金を持ってるのはお金持ちと企業。多くの国民はお金を大して持っていない。物不足に陥ったら、もう国民はどうしようもない。他方、お金持ちはお金を出して買えるけど、そもそもこの人たちは人数が少ないから、物価を押し上げるほど数と量を買うかというと、微妙。

MMTへの理解、というより、現代のお金の仕組みについての理解は深まった。ただ、それでも巨額の財政赤字が本当に問題にならないのか、という点について、ツッコミが甘いように思う。戦後の日本みたいな経済混乱が起きない保証は、この本を読んでも得られなかった、という印象。

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