難解教科書のために英語への学習意欲を喪失してしまう子どもたち

英語教育に関して絶対の信頼を置いている友人が、気になる投稿をしていた。その人はイギリスの大学院も卒業した英語の達者なのだけれど、偏差値が高い私立中学校で英語がボロボロになってしまう子がいるのだという。その原因が「ニュートレジャー」。

ニュートレジャーとは、偏差値の高い私立中学校で採用されていることの多い英語の教科書。ただしニューホライズンやニュークラウンのように教科書検定をくぐったものではない。ニューホライズンなどは、繰り返しやり込むことで文法などが全部マスターできるようになっている。しかしニュートレジャーは。

英語初心者には全く不向きな内容だという。検定を通った教科書で登場する英単語はせいぜい９００、ところがニュートレジャーは３０００。私は京大に入ったけど、読み込んでいた単語帳は８００語だったぞ・・・。この単語数もべらぼうだけれど、文法もヤバイらしい。

すでに英語をそこそこ学んで中上級者になっている子でないと、ニュートレジャーにはついていけないという。まだ習ってもいない文法が突然出てきたりと、英語の初学者を混乱に陥れてしまうという。本来、偏差値の高い私立中学校に合格するのだから、素質は十分ある子たちなのだけれど。

英語は中学校に入ってから学べばいいや、なんて思っていると、ニュートレジャーでは全くついていけない。そのためにすっかり自信喪失してしまう。ついていけないから塾に通うしかないのだけれど、私の友人が相談に乗る頃には心が砕けて、もう学ぶ意欲を喪失してしまっているのだという。

友人は、検定を受けたニューホライズンなどの基礎的な教科書で英語学習は十分だという。私もそう思う。京大の農芸化学科は偏差値的には結構上の難関だが、私もそうした基礎的な教科書しか使っていない。高校に入っても、簡単なテキストしか使用していない。それでも京大に入学できている。

英単語も厳選８００というもので十分対応できた。３０００語？意味不明。そんなのできなくても構わない。しかし偏差値の高い私学では、ニュートレジャーを使うのが一種のステータスになっているという。「こんな難しいのを読めるオレ、スゴイだろ」。意味不明。

なぜそんな難しい教科書をわざわざ使用して、英語の初学者がつまづくようなことをするのか？結局、「ついてこれる奴だけついてこい」であるらしい。ついてこれないヤツは見捨てる式。つまり教育する気がない。単なるふるい落とし。教師じゃなくて単なる選抜官がいるだけなのだろう。

友人によれば、検定を受けた平易な教科書で十分英語力がつくという。偏差値の高い私立中学に合格しているのだから、検定教科書で学んでいればその子たちも問題なく英語をマスターできたであろうに、ニュートレジャーという難解な教科書のために挫折し、立ち上がれなくなってしまう子続出。

ニュートレジャーを教科書に使っている学校は、シリウスという問題集を使っているところも多いという。ところがこれも英語初心者にまったく不向きな内容となっているという。高偏差値の私立の英語教育は、子どもを育てる気がないらしい。単についてこれるだけの子を選抜する作業を行っているらしい。

旧帝大に入学するにしても不必要なほどの難解な教科書を使う意味が私には分からない。友人も「意味不明」という。なのになぜそんなムダに難しい教科書を採用してしまうのか？友人の見解では、「教師も『こんな難しいものを読めるんだぞ』と鼻の穴膨らんでるタイプが多いのでは」と。

名選手必ずしも名監督ならず、という。もしかしたら高学歴の私立英語教師は、教育力、指導力がないのかもしれない。ニュートレジャーという、もともと英語をそこそこマスターしている子どもだけがついていけるように「選抜」しているだけなのかもしれない。

ニュートレジャーを作っている会社は別に悪くないが、それを採用し、英語初心者をおいてけぼりにする指導者というのはいかがなものか。もし本当に指導能力があるのなら、検定教科書を使って見事英語力を身に着けさせればよいではないか、と思う。そうすれば落ちこぼれは一人も出ずに済むだろう。

十分な素地を持ちながら、ニュートレジャーという英語初心者にはあまりに不向きな教科書で教えられたために学習意欲をすっかり失ってしまう子どもたちが出てしまう、というのは、本当に残念。

繰り返すが、ニュートレジャーという教科書なんか分からなくても、検定教科書で丁寧に学べば旧帝大にだって行ける。基礎をしっかりみっちりやれば十分。そのことを広く知ってほしくてつぶやいた。