第三者とつなぐのがスクールカウンセラーの仕事

(学校の校医が講演で「不登校の原因は家庭環境」と話したという書き込みを見て)

まだそんなこと言ってるのか・・・
もう5年ほど前になるだろうか、三重県で不登校についての講演があるというので、最新情報に触れてみたいと思って参加。どうも三重県のスクールカウンセラーの重鎮とやらの高齢の方が講演。さすがカウンセラーだけあって優しい語り口。でも。

話してる内容は「不登校は親が問題、親には子どもを学校に通わせる義務がある、学校に通おうとしないのは親の声のかけ方に問題があるから」というもの。つまり「悪いのは全部親」。私は講演聞いててだんだんムカッ腹立ってきて、途中で我慢ならず、怒鳴った。

「あなたは親が悪いとしか言ってないじゃないですか!あなたはスクールカウンセラーでしょう?親のせいにするだけならカウンセラーでなくてもできるやないですか!もうスクールカウンセラーなんか名乗るのやめなはれ!何で第三者の話が出ないんですか!親と学校しか話に出てないやないですか!」

何か言い訳されたのでとりあえず矛をおさめて、講演が続いた。やがて会場から集められた質問に講演者が答える時間に。しかしどれもこれも「親の関わりが悪い、こんなふうに子どもに語りかけるべき」と、親の振る舞いが原因だとしか言わない。私はまた怒鳴った。

「ここに来ている不登校の親御さんたちは既に自分を責めておられるのが、質問からも十分に窺える。どうしたらよいか分からないから質問してるのに、あなたは親が悪い、親だけが努力しろとしか言わない。なぜ親でも先生でもない第三者の力を借りようという話をしないのですか!」

講演終了後、私は怒鳴ったことを講演者に詫びたうえで、「なぜ第三者の話をしないのですか?不登校の問題は、親だけでは解決が難しいのに」というと、「ご近所の力ですね。今はご近所付き合いが崩壊していて、その助けを得るのはむずかしいのです」という答え。私は回答に謝意を述べつつ、

心の中では「親にすべて責任を押しつけ、親を説教するだけならスクールカウンセラーなんていう看板なんかおろしちまえ」と罵った。正直、親のせいにしかせず、親を責めるだけのカウンセラーなんか要らねえ、と思った。

これは私の考えだけど、不登校とは、第三者との関係性を作るのに失敗した状態だと考えている。そして親は決して第三者になれない。子どもと同じ立場か、せいぜい第二者。だから第三者の代わりを果たすことは親にはできない。第三者との関係性で悩んでるのだから、不登校に関して親は無力。

第三者との関係性に悩んでいるのなら、第三者の力こそが必要。学校で出会う第三者とうまくいかないからといって、他の第三者とうまくいかないわけではない。しかし現代社会で厄介なのは、学校に行けなくなると第三者と出会う場面がない。このため、第三者と付き合う訓練が難しくなる。

大切なことは、「君、オモロイやっちゃな」と、その子との関係性を面白がる第三者が増えること。学校に行くことにこだわる必要はない。第三者と向き合う力さえつけば社会に出ることは可能。しかし、第三者と関係性を結ぶことが絶無になると、社会に出ること自体に臆病になってしまう。

だから、スクールカウンセラーがやるべきことは、不登校の子が第三者と関係性を作れるようにコーディネートすることだと思う。そうしたことに理解のある大人や若者、あるいは場を普段から発掘しておき、不登校の子をそうした人や場につなぐこと。それが不登校の子に一番必要なことでないか。

親が不安になるのは、自分がいずれ死んだ時に、我が子が社会から孤立してしまうことではないか。そして子どももそのことを重々承知している。親が亡くなったとき、自分は第三者だらけの海で生きていかねばならないのだと。しかし学校でつまづくと、第三者との関係性が結べなくなる。

そこでもしスクールカウンセラーが、学校外の第三者と結びつくきっかけを提供できれば、その子は第三者とつながり続けることができ、それが社会に出る際の突破口にもつながっていくだろう。

だから本来、スクールカウンセラーは、学校の教師にはできない「他者とのつながり、第三者との関係性の機会」を作ることの出来る、絶好の位置にいる。なのになぜか少なからぬスクールカウンセラーが、「学校は悪くない、悪いのは親」と主張するのが仕事と勘違いしていないか。

あなた達の仕事は、学校でなじめず、問題を抱えている子のために橋をかけることではないか。そしてあなたたちはまさにそれができる立ち位置にある。学校以外の第三者を発掘し、不登校の子が第三者との関係性を断ち切らずに済む機会を作る。それだけでどれだけの子が救われるか知れやしない。

少なくとも、親のせいにだけするのでは何の解決にもならない。不登校は「第三者との関係性の形成不全」と捉え、そこに手を入れることを、スクールカウンセラーにはぜひお願いしたい。

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