「若者の心をガッチリつかむ」必要はない

「若者の心をガッチリつかむにはどうしたらよいか」という記者からの質問に栗山監督は「そんなの僕も知りたい」と答えていた。けど、栗山監督は実のところ、心をつかむ必要なんてない、と考えているように思う。

心をつかもうとしている時点で、若者のパフォーマンスを最大化する、という本来最重要の目的から離れてしまう。若者の心に自分を強く刻印することが最大の目的になってしまっては、若者のパフォーマンスを最大化することはできない。

どうやら記者は、若者のパフォーマンスを最大化するにはまず若者の心をつかまねばならない、という、よくあるリーター論に惑わされているように思う。しかしこのリーター論、実は「若者に敬仰される人間になりたい」という願望に甘いささやきをしてるだけで、実効性はないと思う。

肝腎なことは心をつかまえることではない。若者のパフォーマンスを最大化することだ。もしパフォーマンス最大化に成功するなら、別に選手から尊敬されなくても構わない、なんなら反発でも構わない、と開き直る必要があるように思う。

みんながリーダーになりたがるのは、「みんなから尊敬されるオレ」という映像に憧れるからだろう。しかしリーダーに求められるのはそんな自己陶酔ではない。チームのパフォーマンスを最大化すること。選手一人一人の力と気力を引き出すこと。それができるなら、監督の存在は忘れて構わない。

実のところ、栗山監督はそんなふうに考えているように思う。だから世界一にもなれたのではないか。自分に人心を引き寄せようとするスケベ根性があると、うまくいかないもののように思う。

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