ゾンビ企業は本当に非効率なのか?
(ケインジアンは理想を言うけど、気をつけないとレントシーカーを大量生産して、非効率なゾンビを延命させることになる、という意見に対し)
「非効率なゾンビ」って言葉が成田氏あたりから流行してるみたいですけど、この言葉を少し吟味したほうがよいと思います。ゾンビ企業は少し補助を出すだけで雇用を守り、給料をもらった人が消費者となり、社会にお金を回してくれます。しかしもしゾンビ企業を安易に潰した場合。
新しい産業に移ることのできない人が多数現れます。この人達は雇用保険や、場合によっては生活保護で丸抱えすることになります。おカネを渡すのに労働力を社会に提供できない状態となります。結果として、社会全体で供給する労働力が減少することにつながります。
多少の助成はしても社会に提供できる労働力を減らさずに済む道、政府丸抱えでしかも労働力が減る道、どちらが真に効率的かを勘案せねばなりません。なのに「ゾンビ企業」と呼んだとたん、無思慮に潰したほうがよいという思考停止を招きます。私はこれは一種の「言騙し」(言葉を生むことで真実味を感じさせといて、まんまと騙す手法)だと考えています。
ケインジアンを弁護する気はありませんが、ケインジアンは理想を唱えているのではなく、現実的妥協点を探る考え方だと思います。むしろ新自由主義のほうが、無思慮に自由という妙な理想を現実に押しつけて不具合を起こそうとする、非現実的理想狂に私には見えます。
それに、ケインジアンは政府を食い物にする人たち(レントシーカー)を増やすというご批判ですが、新自由主義は「労働者を食い物にする」ことと比較する必要があります。新自由主義は政府からお金をもらわないかわり、労働者から搾取する権利を法的に許してもらおうとします。それが「規制緩和」です。
レントシーカーは、政府が分配しようとしたときに発生する歪み・偏りですが、分配しようという姿勢があるので、労働者が搾取されるという構図からは脱却しやすいです。しかし新自由主義は強者による弱者からの搾取を公然と許すという問題があります。しかもこの手法は社会から労働力を減らします。
あまりに給料安すぎて、酷使されっぱなしのために働くのがバカらしくなる人が増えるからです。この結果、新自由主義では社会がすさみます。新自由主義は、ケインジアンの欠点をあげつらい、言葉巧みに「そりゃいかん、そんなゾンビは潰してしまえ」と人々を誘導しようとしますけど、
私は、その裏の意図を読み、さらにその裏をかく知恵を庶民は持たねばならないと思います。ゾンビとかレントシーカーとか、もっともらしい言葉が生まれると、私達はそれが一見正しいかのように感じてしまいます。しかしそれは「言騙し」です。新自由主義の人達は言騙しの天才が多い。
そうした人達に安易に騙されないように気をつけていただけたらと存じます。