世界の情勢を理解するための補助線(証拠なしの仮説)
東日本大震災が起きる前だけど、社会的成功者と自認する人たちの会話で、次のような趣旨が多かったのが気になった。
「地球は人類増えすぎた、この世は弱肉強食、弱者が野垂れ死ぬのは仕方ない」
その頃、アメリカも日本も超格差社会を当然視する人が増えていた。竹中平蔵氏による改革はその路線。
とある有名女優と結婚(すぐ離婚)した資産家は有料メルマガを発行していて、アメリカの上流階級ともつきあいがあり、やはりこれからの世界は強者である支配者が生き残り、弱者は必死に努力して能力を高めた人間だけをすくい上げ、その外は野垂れ死ぬのもやむなし、みたいな世界観を語っていたという。
アメリカのセレブ達もそうした思考をもつ者が支配的だったようだが、二つの出来事が、セレブの意見を変えたらしい。一つはオバマ大統領の登場。もう一つはトランプ大統領の登場。
オバマ大統領の登場は、もう一度、理想に燃えた、一体感のある国づくりが可能かもしれない、と、一時、期待させるものがあった。弱肉強食主義のセレブ達も、オバマ大統領の輝かしい登場で、少し改心した感じが起きた。ただ、その後、政権は十分機能せず、期待はずれで終わった感があったのだが。
アメリカのセレブ達はもう一度、弱肉強食的な世界観を取り戻すに思われたが、彼らを震撼させる出来事が起きた。トランプ大統領の登場。誰もが全く予想しない行動をとるトランプ氏の登場は、アメリカにもナチス的な人物が生まれるスキがあることを知らしめた。たとえトランプ氏はそうでなくとも。
セレブ達は恐らく、第二次大戦時の状況の再現に恐れおののいた。第二次大戦では、共産主義とナチスが台頭した。この二つに共通するのは、資産家への怨念。どちらも、資産家から全財産を剥奪し、場合によっては殺すこともあった。
トランプ氏自体は、自身が資産家だから、資産家憎しな政策はとらないのははっきりしていた。しかし、ラストベルトの白人層が、自分たちは虐げられているという怨念をもち、それがトランプ氏を大統領に押し上げたという構造に、おそらく恐れおののいた。セレブ達も怨念の対象者が少なくないから。
トランプ氏は資産家だからセレブに不利な政策はしないだろう。しかしこんなとんでもない人物を選んででも、セレブ達成功者への恨みを晴らしたいという怨念が渦巻いているのだとしたら。いつ、共産主義やナチスが登場するとも分からない。そのことに、セレブ達は気がついたようだ。
SDGsのような、以前のセレブ達なら大嫌いだったはずの政策に異を唱える者があまり出ていないのは、共産主義やナチス的なものが今後生まれるリスクがあるなら、富を分配してリスクを回避しよう、という考えがセレブ達に広がったためだろう。エシカル(倫理的)投資が盛んなのもその証拠。
ところが日本は。オバマ大統領が登場する前のセレブ達とつきあいの深い人が支配者層に多いらしく。アメリカのセレブ達が宗旨変えする中で、日本の支配者層は相変わらず、弱肉強食、セレブが庶民を食い物にして利益を貪る世界観から抜け出せていないらしい。
とある国のリーダーは、叩き上げが自慢の人物だが、そうした価値観のセレブ達から目をかけられたという経歴があるせいか、竹中平蔵路線が大好きで、アメリカがオバマ大統領登場以降放棄した路線を継続するという、周回遅れな政策を選ぶ傾向が強い。
とある国のリーダーは、叩き上げが自慢の人物だが、そうした価値観のセレブ達から目をかけられたという経歴があるせいか、竹中平蔵路線が大好きで、アメリカがオバマ大統領登場以降放棄した路線を継続するという、周回遅れな政策を選ぶ傾向が強い。
しかしどうやら、アメリカのセレブ達の改心は本物らしい。IEAという、石油文明バンザイで来た、弱肉強食主義セレブの思想を体現してきた組織が、なんと「今後は石油への投資はゼロでよい」とレポートを提出。前は、自分たちセレブだけはエネルギー使いたい放題の世界観を持っていたのが、方向転換。
ところがどうも、日本の支配者層は方向転換していない。私から見ると、どうも見当違い。それでも世界中が脱石油とか格差是正に動いてるので、不承不承、そうした政策をとらざるを得ない観。
妙なのは、野党。こうした世界の潮流が読めてないらしい。全然流れを自分のものにできていない。
以上は、私の管見から紡ぎ出した仮説。大した証拠はないから、信じるに足りない。ただ、今の世界の構造と動きを理解するのに、こうした補助線を引くと理解しやすいので、当面、この仮説に基づいて世界を観察している。有力な情報が入れば、もちろん仮説を変更するつもり。