「気のせい」に効く漢方薬あれこれ。
春です!今日はめっちゃ良い天気ーーーーー!!
あーーー!気持ちよくってピクニックにでも行きたい気分。ルンルン。ルン。。。。
ってなんでこんなに道が渋滞しとんのじゃ!ぐぉらぁーーーーーーっ!!!
うぉーーー!イライラ!イライラするぅーーー!!
はい。こんなパパはイヤだ。というお題ではじまりました春の爽やかなnoteです。
この春になって多いですね。イライラ。不眠。不安感。うーーん。本当につらい。
何がつらいかってこの症状が他の人からは見えないので「気のせい」でしょ?「心の持ちようじゃない?」とか言われちゃうことが多いんです。
ほら!そこのご主人!奥様のつらさをその一言で片付けてませんか??
でも「気のせい」ってあながち間違いではなくて。「病は気から」とはよく言ったもので「喜・怒・憂・思・悲・恐・驚」は七情といって中医学において病気の原因とされています。
以前のnoteでも触れていますが中医学のもとになっている五行説を紐解くと「五臓とメンタル」には深い関わりがあるんですね。
この中で怒りという感情が昂ると肝を失調させます。この肝は自然界の中で「木」の性質を持っておりのびのびとしたがる性質となります。季節的にも木の芽時にあたる春は肝の働きが旺盛となるため、この肝を刺激する怒りの感情がいき過ぎて調子を崩すことが多々あります。
もっと詳しくみてみると。肝には疏泄作用といって気の巡りをつかさどる働きがあります。また蔵血作用といって血を貯蔵する働きもあるのです。春先に目がピクピクしたり足がつったりしやすくなるのはこの肝の失調によるものと考えられます。*生理前に胸が張ったりお腹が張ったりしてつらいというのもこの肝の働きが絡むようです。
で。この肝の失調に代表される症状はなかなか病院で対処しづらいというのも特徴としてあります。
炎症が見られない。検査数値に出ない。どこかの臓器など器質的な異常が見られない。病院の先生方も言われるのが「気のせい」「歳のせい」「自律神経失調」などですね。西洋医学における自律神経失調症・心身症・不安神経症・更年期障害・不眠症・認知症などと名付けられている疾患は中医学において「鬱症」と呼ばれており、系統立てて考えられており対処法もそれぞれしっかりとあります。
*「鬱症」は西洋医学における鬱病よりも範囲を広くとらえています。
ということで!今回は「ましもん!春のメンタル祭り!!」を記念してこの鬱症について深掘りしてみます。
①めっちゃイライラする!肝気鬱血タイプ。
これは先ほどあげたようにストレスや怒りの感情によって肝の疏泄機能が失調して気の巡りが悪くなった状態。気鬱とも呼びます。
この状態が長引くと熱が生まれ肝火上炎・心火上炎といった症状に発展します。
また気は推動作用という働きも持つため気鬱によって血の流れが悪くなる血瘀が現れたり、脾胃の働きも悪くなるため痰湿を生んだりすることもあります。
【主な特徴】
*憂鬱感・イライラしやすい・ため息ばかり出る。
*胸の脇がつかえる。張ったような不快感や痛みなどが出る。
*食欲不振。お腹が張ってガスがたまる。
*口が渇く。口の苦みが出る。(肝火上炎)
*頭痛。特に偏頭痛が出やすくなる。
*月経不順。生理痛(瘀血による)。
【よく使われる漢方薬】
*逍遥散:疏肝解鬱養血+脾の働きも良くする。
柴胡・薄荷→肝の疏泄作用を回復して気鬱を寛解する。
芍薬・当帰→血を養って血流を改善する。
白朮・茯苓・甘草・生姜→脾の働きを補って胃の調子を整える。
*加味逍遥散:疏肝解鬱養血+清熱+瘀血を改善。
逍遥散の組成に以下の2種類を追加。
牡丹皮→瘀血を改善する作用。
山杷子→熱を冷ます作用。
*四逆散:疏肝解鬱養血+理気止痛する。
柴胡→肝の疏泄作用を回復して気鬱を寛解する。
芍薬→血を養って血流を改善する。
枳実→気の流れを正常にして機能を回復する。
甘草→それぞれの薬を調和する。
②のどが詰まる。胸がつかえる。気滞痰鬱タイプ。
【主な特徴】
*胸が重苦しくつかえる。
*痰が多く出ることもある。(出ないことも多い。)
*異物がないのにのどが詰まった感じがする。
*ムカムカする。食欲が出ない。
【よく使われる漢方薬】
*半夏厚朴湯:気の巡りを正常にして痰を消化する。
半夏・生姜・茯苓→脾胃の調子を改善して湿気を排出。痰を消化する。
厚朴・紫蘇葉→気の流れを正常にして機能を回復する。
(薬性が温性に偏っているので口の渇きや苦みなどが伴う熱症状のある方には向きません。)
*柴朴湯:半夏厚朴湯の作用に加えて肝の疏泄機能も回復。
半夏厚朴湯の組成に加えて以下の処方を追加。
小柴胡湯(柴胡・黄芩・人参・甘草・大棗・生姜・半夏)→肝の疏泄作用を回復。こもった熱を冷ます。脾胃の働きを改善する。
*竹茹温胆湯:熱を冷まして痰を消化する。肝の疏泄作用を回復して気鬱を寛解。
二陳湯(半夏・陳皮・茯苓・生姜・甘草)→湿を乾燥して痰を消化する。
桔梗→痰を消化する。
竹茹・黄連・柴胡→清熱作用。
柴胡・香附子・枳実→肝の疏泄作用を回復して気鬱を寛解。
麦門冬・人参→気を益して心の安定作用も。
③クヨクヨドキドキ眠れない。心脾両虚タイプ。
【主な特徴】
*循環器に異常はないがドキドキする。
*不安感がとれない。
*眠りが浅く夢を多く見る。
*物忘れしやすい。
*クラクラめまいする。
*顔色が白い。くすみがある。
*手足が冷えてだるい。
*食欲が出ない。
【よく使われる漢方薬】
*甘麦大棗湯:心を養い気持ちを安定させる。陰を補う作用も。
小麦→気を益して陰を養う。安定作用も。
甘草→気を益して脾を補う。
大棗→気を益して血を養う。
*酸棗仁湯:不眠の代表的な方剤。熱を冷まして肝の疏泄を回復させる。
酸棗仁→血を養い安定させる。
茯苓→脾の調子を良くして安定させる。
川芎→気を巡らせて血流を改善する。
知母→熱を冷ましてモヤモヤを去る。
甘草→それぞれの薬性を調和する。
*帰脾湯:脾の調子を整えて気血を補い気持ちを安定させる。
人参・黄耆・白朮・炙甘草→脾を補って気を益す。
当帰・竜眼肉・酸棗仁→血を補う。
酸棗仁・遠志・茯神→安定作用をもつ。
木香・生姜・大棗→気の働きを正常にして胃腸の調子も改善。
*桂枝加竜骨牡蠣湯:陰陽のバランスを整えて気持ちを安定させる。
桂枝湯(桂枝・芍薬・生姜・甘草・大棗)→陰陽をバランスよく調和する。
竜骨・牡蠣→高ぶった精神を安定させる。各器官を引き締める作用も。
桂枝湯が温性なので手足の冷え・寒気を伴うカゼをよくひく方に適しています。
*柴胡加竜骨牡蛎湯:肝の疏泄機能を回復。熱を去って安定させる。
小柴胡湯去甘草(柴胡・黄芩・人参・大棗・生姜・半夏)→肝の疏泄作用を回復。こもった熱を冷ます。
桂枝→身体を温めて流れを良くする。
茯苓→湿気を排出して安定させる。
竜骨・牡蠣→高ぶった精神を安定。驚きやすい状態も改善。
前掲の桂枝加竜骨牡蠣湯に比較すると清熱作用が強いため、頭痛・イライラ・のぼせ・口の渇きなど熱症状を伴う方に適しています。
④のぼせてモヤモヤ更年期。陰虚火旺タイプ。
【主な特徴】
*めまい・耳鳴り。
*のぼせ・寝汗。
*動悸がして眠れない。
*胸がモヤモヤして落ち着かない。
*腰がだるくて痛みが重い。
*生理不順。
*月経前に不安定になりやすい。
【よく使われる漢方薬】
*知母地黄丸:弱った腎の働きを補う。熱を冷ます。
補腎剤の代表である六味地黄丸をベースに熱を冷ます生薬を足しています。
熟地黄・山薬・山茱萸→不足している腎の陰分を補う。
沢瀉・茯苓・牡丹皮→利水して身体の老廃物を排出する。
知母・黄柏→熱を冷ましてモヤモヤを去る。
*天王補心丹:足りない陰分を補って熱を冷ます。心を補って安定させる。
生地黄・天門冬・麦門冬→陰を補って清熱する。
丹参・当帰→血を補って血流を改善し安定させる。
党参・茯苓→気を益して安定させる。
柏子仁・遠志・酸棗仁→心を養って安定させる。
桔梗→薬性を上部に行き渡らせる。
いかがでしたでしょうか?ざっくりとですが代表的な症状と漢方薬を挙げてみました。一言で「気のせい」と言っても原因は多岐に渡りますし使う漢方薬も変わってきます。
たかが気のせい。されど気のせい。
つらい症状。なかなか改善しない症状は専門店で相談してみてはいかがでしょうか?あなたにあった養生もご提案できると思います。
またご家族の方が悩んでいたら「気のせい」だと思うからしっかり治していこうね。と優しく寄り添ってあげてくださいね。それだけで楽になることも多いものです。
*かえで薬局では「こころと身体の長引く不調」をお持ちの方に漢方相談を承っております。ご来店できない方にはzoomでのご相談もお受けしております。まずはお気軽にお電話くださいませ。【相談専用窓口】0120−979−802
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