第1回『双極性障害(躁うつ病)とつきあうために』を読む
本サマリーは、日本うつ病学会双極性障害委員会の『双極性障害(躁うつ病)とつきあうために』(ver.9 2019年7月5日)について解説したもので、枠線内グレー部分はテキストを引用しています。
制作
窓師(薬剤師)、布団ちゃん(公認心理師、社会福祉士)
ネット心理教育研究会
7.双極性障害の原因
病気の原因がわかれば、その原因に対処することによって治療を行うことができます。例えば細菌によってひきおこされる肺炎はその細菌を殺す抗生物質を用いることによって治すことができます。
では双極性障害の原因としてどのようなことが考えられているのでしょうか?原因がわかればそれは治療に役立つに違いありません。
スライド1
双極性障害患者さんの脳の中では、脳のはたらきを調節しているホルモンのようなもの(神経伝達物質)が、異常に増えたり、減ったり、バランスが崩れています。
双極性障害の原因は現時点で、まだはっきりしてはいませんが、遺伝子、環境、性格などの要素が関係していると考えられています。
双極性障害の発症に関与していることは一卵性双生児と二卵性双生児の研究、養子の研究および家族研究から示されました。一卵性双生児では2人とも同じ遺伝子を持っていますが、2人とも双極性障害を発症するのは約80%です。また、双極性障害は1つの遺伝子による疾患ではなく、多因子が関与する疾患であることがわかりました。
7-1.遺伝について
スライド2
遺伝子とは人間の身体をつくる設計図にあたるもので、ヒトには約 3 万個の遺伝子があると考えられています。脳を含めた人間の身体は、この遺伝子の指令に基づいて作られ、維持されています。こうした非常に大事な役割を持つ遺伝子の違いが、さまざまな病気にかかりやすいかどうかや、くすりの効き目や副作用の出やすさに影響を与えます。この遺伝子が「病気のかかりやすさに与える影響」「くすりの効き目や副作用の出やすさに与える影響」は、非常に強い影響のものから、ごく弱い影響まで様々です。
遺伝子はゲノムとも呼ばれ、一つ一つのゲノムにどのような違いがあるかどうかを明らかにする研究が進められています。ちなみに、人間の遺伝子を担っているDNAの情報は2003年全て解読され、その後遺伝子(ゲノム)の数は2万3千弱と確認されました。
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