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短歌3: エンドルフィン

「まるで夢」力の抜けた肉体とエンドルフィンのプールに浮かぶ / 篠山 椎


 セックスしたあとに「夢を見てるみたいだった」と言われたことがあり、そのことをずっと覚えている。
今も記憶しているということは多分印象に残るフレーズだったのだろう。
 こういう順序が逆転することが割とある。
印象的だったから記憶しているのではなく、記憶しているということは印象的だったのだ、と。

 別の人の「私、浮気しちゃったんですね。」という言葉もよく思い出す。

 あれがベッドだったか布団だったか。
風景に関することは覚えていない癖に人の感覚や台詞だけは異様に覚えていたりする。
力が抜けて動けなくなっている人の横で寝転がっていると、そこが無重力になったかのような、プールに漂っているような感覚に陥る。
その人は死体みたいに(強かったか弱かったかも覚えていない)寝具の反発力に身を任せていた。
このまま持ち上げたらその人の形が残るんじゃないだろうか。

 良く「行為後に男性が寝てしまって…」という愚痴を聞くことがあるが、僕の経験で言えばほとんどの相手が先に寝てしまうように思う。
そのくらいリラックスしてくれているのだと思えば悪い気はしないし、そういう場所を提供できることを喜ぶべきなんじゃないかと自分は思っている。


篠山 椎
シイ。

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