昔の彼氏に冷めた瞬間は、月の満ち欠けの原理を知らなかったからだった。

月って、真っ暗ななかに一際輝きながら浮いていて、1日たりとも同じ形をしていない。

満月の日は、暗闇のなかでより一層の存在感と、なのに派手すぎないシンプルな銀色を灯していて、それがとにかく、とても綺麗だと思う。

満月の夜は、殺人事件が多いらしい。

満月の夜は、出産率が多いらしい。

本当かどうかは分からないけど、月は確かに私たち人間の中にある何かを刺激するような存在だってことじゃないか。

だからわたしは、当時の彼氏が、そんな月に対してなんの関心も抱かないのがなんとなく嫌だった。

その価値観が理解できなかった。

そんなの知らないと言われた瞬間に、この人とは将来一緒にいても楽しくないなと思ってしまった。

恋愛の解れって、そういう些細なところからだと思う。

でもなんとなく、そのカンのようなものは当たっている。

心の中の本能が、この人じゃないって呟く瞬間。

私はこれからも、月の綺麗さについて話ができるような人に惹かれるし、

夜道で不意に空を見上げるような人と、結婚したいなと思う。


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