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教育機会確保法を知っていますか? 不登校の現場から考える支援のあり方

「うちの子が学校に行かなくなったんです。」
そう話し始める親御さんの表情は、どこか申し訳なさそうで、時には自分を責めているようにも見えます。でも、不登校はその子だけの問題でも、親の責任という訳でもありません。
むしろ、そこには子どもたちが社会に伝えたい大切なメッセージが隠れているのです。


学校に行きたい気持ちが壊れた瞬間

Omimiかふぇに来られる親御さんから、このようなお話を聞きました。
小学校6年生に進級したお子さんが「クラスには入れないけれど、別室なら行ってみたい」と話してくれました。

親御さんはそれを担任の先生に相談し、別室を準備してもらうことになりました。しかし、いざその部屋に入ると、そこには他の先生方が作業をしており、驚かれた様子で迎えられました。子どもは気まずさと居心地の悪い空気感の中で「自分は邪魔なんだ」と感じ、

その後は卒業式まで一度も学校に行くことができなかったそうです。


給食費の支払いを巡る混乱

別の親御さんは、給食費の支払いについて担任に相談しました。
「子どもは一度も給食を食べていないので、支払いを止めたい」と伝えたところ、担任の答えは「そんなことができるのかわからないので、確認してみます」でした。

本来、給食提供停止の手続きは簡単で、「給食提供停止申込書」という書類を提出すれば済む話です。学校側が事前に案内していれば親御さんの負担も減らせるのですが、情報の不足などもあり、保護者側から申し出ないと、書類がいただけないというケースをよく耳にします。

こういったことが親子の不安やストレスを増幅させてしまっているように感じています。


応援のようで、追い詰めてしまう手紙

学校に行き渋るお子さんへの担任からの手紙に驚いた、というお話を伺いました。その手紙にはこう書かれていたそうです。

“お休みせずに学校にきましょう。もしもやすむのなら、元気なので、みんながべんきょうをしているときは家でしっかりとべんきょうしてください。”

親御さんはこの手紙を受け取り、せっかく先生が送ってくれたものではあるけれど、この内容を子どもに見せることはできない——と、悲しそうに話されていました。


修学旅行へのハードル

ある中学生のお子さんは、不登校の状態でも「修学旅行には行きたい」と親御さんに話をしてくれたため、学校に伝えました。ですが担任の先生からの条件はこうでした。
「1週間、遅刻せずに学校に来ることができたら認めます。」
これを聞いたお子さんの気持ちはどうだったでしょうか?きっと、「行きたい」という勇気を出した気持ちは、目に見えない壁にぶつかってしまったはずです。


不登校の「意味」を問い直す

これらの事例は、決して特殊なものではありません。不登校の背景には、子どもたちが「ここでは安心できない」「自分は理解されていない」と感じてしまう環境があります。そしてそれは、学校だけの問題ではなく、私たち大人全体の社会的な課題でもあるのです。

不登校という状況に対して、私たちは子どもたちをどう支えられるのか?彼らの「ここにいていい」という感覚を取り戻すために、何ができるのでしょうか?


知ることから始めるために

私が共同代表を務める「不登校を考える親の会ネットワークふくおか」では、「学校に行きづらい子と親のためのサポートBOOK」を作成し、無料で配布しています。この冊子には、不登校の子どもを持つ親御さんが知っておくべき情報や、困った時の相談先などがわかりやすくまとめられています。

読まれた方からは、「もっと早く知りたかった」「これを読んで救われた」といった声がたくさん届いています。

サポートBOOKはこちらから


教育機会確保法ができて8年が経ちました。それは、不登校の子どもたちが「心と体を休ませる時間」を持ち、安心できる環境で学び直すことを保障するための法律です。しかし、この法律を知っている人はまだ少なく、実際の現場では旧態依然とした対応が行われています。

だからこそ、親御さんだけでなく、学校の先生や地域の大人たち一人ひとりが「知ること」から始める必要があります。子どもたちの声に耳を傾け、その声を社会の中で生かしていく。それが、未来を生きる子どもたちのために、私たち大人ができることではないでしょうか。

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