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「まずは話を聞いてほしい」親と学校のすれ違いを解消するためにできること

私の活動の始まりは、学校の中からでした。ですから、保護者からの相談だけではなく、学校側からの依頼でお話をお伺いすることもあります。

「Omimi活動」を通して、学校側と保護者の間に生じるすれ違いやトラブルが、子どもの生活にどれだけ影響を及ぼしているかを目の当たりにしてきました。

学校は子どもの成長を支える場ですが、時にその運営や対応が保護者の不安や不信感を増幅させてしまうことがあります。今回は、私が第三者として関わった、具体的なエピソードをいくつかご紹介したいと思います。


ケガをきっかけにこじれた親子と学校の関係

ある日、6年生のお子さんが体育の授業中にケガをしました。親御さんは学校の対応に納得できず、何度も話し合いを持ちましたが、最終的に教育委員会まで巻き込む事態に発展しました。この時、校長先生から「どうにか解決の糸口を見つけたい」と相談を受け、私が間に入りました。

親御さんにお会いすると、たくさんの資料やレントゲンの写真、検査結果を目の前に広げ、感情を抑えきれない様子で話し続けられました。その間、私は口を挟まず、ただ耳を傾けることに徹しました。
1時間近く話された後、私が最初にかけた言葉は、「本当に大変でしたね」でした。その瞬間、親御さんは涙を流し始め、その後30分以上嗚咽を漏らしながら泣かれました。その間は隣で、背中をさすり続けることしかしませんでした。

泣き終えて、気持ちが落ち着いた親御さんに「これまでのことは良くわ
かりました。お母さんもよく頑張りましたね。私ができることは少ないですが、これからはお子さんの幸せのために何が必要か話しませんか?」とお伝えしたのです。これをきっかけに、学校側とも冷静に話し合いが進み、お子さんは怪我を完治させ、元気に学校生活を取り戻し、無事卒業を迎えました。


中学生のお子さんと学校の再構築

ある家庭では、お母さんが病気になったことをきっかけに、中学生のお子さんが急に学校へ行けなくなりました。学校からの頻繁な電話や自宅訪問が、親御さんの心の余裕を奪い、不登校の解決がさらに難しくなっていました。

この家庭を支援するために、私が親御さんと一緒に学校へ出向き、担任の先生や教務主任に親御さんの状況を説明しました。また、「えがおの会」の取り組みを共有し、家庭への支援の必要性を伝えました。

これをきっかけに、担任の先生からは2ヶ月に一度私に連絡が入り、親御さんの様子を尋ね、学校側が訪問した際のお子さんの様子などを教えてくれるようになりました。

その結果、このお子さんは3年生の時に学校復帰を果たし、高校進学を実現しました。


声が受け止められない不信感

ある親御さんが担任の先生の子どもへの対応に不信感を覚え、その思いを学校側に伝えた際、返ってきた言葉は「この先生はベテランの先生なので、これぐらいのことで済んだのだ」というものでした。この言葉の裏には、「この先生が担任で良かったのに、何を言ってくるんだ」という思いが透けて見えます。親御さんとしては、子どもの不安や居心地の悪さを訴えたにもかかわらず、その声が軽視されたと感じ、不信感がさらに深まってしまいました。

多くの場合、親御さんが学校に相談を持ちかけても、その声が十分に受け止められないことが問題を深刻化させています。


第三者の役割と重要性

これらの事例を通じて感じるのは、学校と保護者の間に信頼関係を築くには、子どもの状況を理解し、親御さんの不安に寄り添う姿勢が不可欠だということです。しかし、学校側だけでそれを行うのは難しい場合もあります。その際、第三者が関与することで、解決に向けた道筋が見えてくることがあります。

現在の教育現場にはスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーといった専門職が存在しますが、親御さんの気持ちに寄り添うためには、不登校経験や育児の課題を理解した支援者の役割も重要です。私たち「えがおの会」では、そうした第三者の視点から親御さんや子どもたちをサポートし、学校との橋渡しを行っています。


子どもと親が安心できる環境を作るために

不登校や発達支援の課題は、子どもへの直接的な支援と家庭への支援の両輪が必要です。親御さんの気持ちを受け止め、子どもが安心して過ごせる環境を整えるために、私たちができることを一緒に考えましょう。

もしあなたや周りに似たような状況で悩んでいる方がいれば、ぜひ一度ご相談ください。解決の第一歩は、話を聞いてもらうことから始まります。

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