子どもがカウンセリングを受けたがらないときに考えて欲しいこと
「子どもがカウンセリングを受けたがらない」と話される親御さんが多いです。先生や親御さんは、学校に再登校するための手段として、スクールカウンセラーの面談を受けてほしいと願います。しかし、不登校の初めの頃に「カウンセリングを受けなさい」と言われても、子ども自身はまだ気持ちの整理がついていないことがほとんどです。どうして不登校になったのか、自分でもよくわからない状況で、「なぜ他人に話さなければいけないのか」と思うのは当然ではないでしょうか。
また、家に閉じこもって外に出られない状態の子どもにとって、カウンセリングに行くという行動自体が非常に高いハードルになります。
カウンセリングへのハードルと親の葛藤
私のもとに相談に来られる親御さんの中には、やっと予約が取れた心療内科の受診日に子どもが「行かない」と言い出したという話をされる方が多くいらっしゃいます。結局、親御さんだけがカウンセリングを受けることになったり、親自身が「どうしても」と子どもを病院に連れて行ったものの、本人は「意味がない」と感じて途中でやめてしまったりすることもあります。
私自身も、娘を心療内科に通わせた経験があります。当時の私は何かにすがる思いで病院に通わせていました。しかし、ある日娘から「意味がないからやめていいか」と言われたとき、彼女の気持ちを尊重し、通うのをやめました。その頃の私は、ただ自分が安心したいがために病院に頼っていたのだと、今になって振り返っています。
親が変わることで子どもも変わる
カウンセリングは本人が行かないと意味がないと思われがちですが、必ずしもそうではありません。不登校の子どもは家族とのコミュニケーションは取れている場合が多いです。ですから、直接子どもと話さなくても、子どもと日々関わっている親が変わることで、子どもとの会話や関係性に変化が生まれる可能性があります。
これは私が運営している「Omimi事業」でも実感しています。この事業では主に保護者を対象としており、直接お子さんと話をすることは少ないです。しかし、保護者が対話の姿勢を見直し、行動を変えることで、お子さんにも良い影響が現れることが多いのです。
子どもの意思を尊重する重要性
子どもに「あなたのためだから」と無理やりカウンセリングを受けさせることは、逆効果になる場合があります。子ども自身が嫌がっているのに、親が「お願いする形」で進めるカウンセリングは、結果的に子どもを追い詰めることにもなりかねません。
子どもは親に「お願いされた」場合、それを断るのが難しく、「親のため」に動いてしまうことがあります。そして、その状況を親が「子ども自身が望んだ」と誤解してしまうこともあるのです。このような場合、親は自分の願いが子どもに押し付けられていないか、注意深く振り返る必要があります。
子どものペースを大切にする
「何もせずに見守るだけが良いのか」と疑問に思うかもしれません。それも違います。親として一番大切にしてほしいのは、子どもを自分の思い通りに動かそうとしていないかを見直すこと。そして、子どもと本当の意味で対話ができているかを確認することです。
対話を通じて、子どもの気持ちや考えを共有できるようになれば、それが次のステップへのきっかけになるでしょう。焦らず、早まらず、親のペースではなく子どものペースを大切にしてほしいのです。
不登校は不幸ではない
私は日頃から「不登校は不幸ではない」という考えを持っています。子どもが不登校になったことで、家庭内にさまざまな混乱が生まれるかもしれません。しかし、それが親子関係や家族関係を見直すきっかけとなり、結果的に家庭がより良い方向に進むことも多いのです。
本当に子どもを愛するとはどういうことなのか。親も子も、これまでとらわれていた価値観を打ち破り、新しい関係性を築いていくチャンスなのです。不登校は、家族が成長し、進化するきっかけになるのかもしれません。