CROSS DIG 1on1 【受験で子どもを幸せにできるのか】
新メディア TBS CROSS DIG with Bloombergにて、じゅそうけん(受験総合研究所)代表・伊藤滉一郎さんにインタビューを行いました。
※今回の記事は中学受験(主に首都圏)と大学受験についてです。データというよりインタビュー後の篠原の感想が多く含まれます。ご興味のある方はこの先にお進みください。
わたしは受験について複雑な思いを抱えています。
地元の小学校では都内の私立中学校が通学圏内ということもあり、中学受験をする子たちが全体の半分くらい。夜遅くまで塾で受験対策をする友人たちを案じつつ、心の中で応援していました。
しかし、中学受験組の友人が選民思想を植え付けられているのではないかと感じるような体験も。(詳しくは動画をご覧ください。)
誰が悪いというわけではありません。塾では子どもたちに発破をかけます。本人も、テストで人より良い点を取ることが嬉しかったり、偏差値を競うのがゲーム感覚で楽しかったり……その気持ちは痛いほどよくわかりますし、私自身ある時期は学校で勉強ができるほうだと天狗になっていたこともあって本当に恥ずかしい限りなのですが……
小さなころからあまりに競争的な環境に置かれることは果たして幸せなのだろうか?という思いがあるのです。
ペーパーテストで驚異的な成果をあげる、いわゆる「受験天才」に惹かれ、早稲田大学を卒業後大手金融機関に就職、受験研究に専念するため受験総合研究所を立ち上げたという伊藤さん。
少子化にも関わらず加熱する都内の中学受験、受験情勢のめまぐるしい変化、子どもたちのためにどう受験と向き合えばよいか。じっくり伺いました。
とりあえず知るべき中学受験事情
全国的な少子高齢化。それでも、東京では中学受験競争が過熱しています。東京23区内では、中学受験をする子どもの割合が35%、小学校受験をする子どもの割合が10%とのこと。
ひとりっ子家庭も増え、子どもひとりに教育投資を集中させる傾向が強まっていると伊藤さんは指摘します。
中学受験は親子の受験とも言われ、ネット上でも保護者コミュニティで励ましあう動きがあります。
(10万人の「じゅそうけん」アカウントフォロワーの内、かなりの割合が中学受験をする子の親御さんだそう。)
私立の小学校や中学校・高校は男子校・女子校・附属校・カトリック系など様々なカラーがあり、教育方針も違います。また、公立中高一貫校や高専という選択肢もあります。
子どもが小中高とどのような環境で過ごすか。
生活態度に自信がない場合は、内申点制度を回避するために中学受験をするのは有効な選択肢のひとつで、ペーパーテストが得意な子どもには中高一貫校が適している可能性もあると伊藤さんは話します。
(ただ、わたし個人としては内申点制度のおかげでダメダメだった生活態度などがある一定のレベルまで鍛えられた面もあり、一概には言えないところです。)
特に早い段階の受験(小学受験や中学受験)について、
子どもを地元の学校に行かせようと考えていても、中学受験や学校に関する情報を集め、全体としてかかる教育費や子どもの個性などを考慮して現実的にどういう選択肢があるのか検討することは決してマイナスにはならないと感じました。
ただし、早期からの受験勉強は能力開発につながる側面もありますが、教育虐待につながる懸念もあるということは忘れてはなりません。
受験で子どもを幸せにできるのか
子どもの受験を考えるとき、大人としては自分の体験を基準にしてしまいがちですが、受験の風景は刻一刻と変わっています。
子どもたちの数が減り、倍率なども私たちの時代から大きく変わっています。総合型選抜の枠が増えている大学もあります。就活や社会人生活においては総合型選抜で問われる能力がそのまま活きてくるとも伊藤さんは話します。
これまでは難関大学に入学したという事実が就活において強いラベルとして作用してきましたが(その功罪はさておき)終身雇用が当たり前ではなくなる中で、いわゆる「良い」大学に入れば安心安泰という時代ではないと伊藤さんは語ります。特にこれからの子どもたちにとってはそうかもしれません。
医学系や技術系、専門職など手に職をつける選択肢もさらに人気が高まりそうです。
子どもの年齢が上がってくるにつれて、子どもの受験に親が関与する割合は減っていきます。実際に子どもの意思を尊重したほうがよいと伊藤さんは話します。
(困難を極めますが)いったん自分の体験に基づく受験観をリセットして、よい情報を渡し、見守ってあげる。それが大人たちにできることかもしれません。
そして未来のある皆さんは受験であまり思いつめすぎずに、自分がどういう人間なのか、将来自分はどう生きたいのか。冷静に考えるチャンスととらえて、この先の長い人生幸せに過ごしてほしいと切に願います。
人の数だけそれぞれの事情や過去があり、生き方があるので、どんな道を歩んだとしても幸せと感じられる瞬間があれば良いなと思いますし、皆でそういう社会にしていきましょう。
(純粋な思いですが、偉そうに聞こえたらすみません。)
CROSS DIGのインタビューでは伊藤さんにもっといろいろなお話を伺っています。ぜひコメント欄に感想をお寄せください。チャンネル登録もよろしければぜひ。
伊藤さんの著書「受験天才列伝――日本の受験はどこから来てどこへ行くのか」には、受験天才の輝きと日本における受験の歴史について書かれています。