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ガンダムの脇腹と団地のおばちゃん。
「ガンダム者 ガンダムを創った男たち」という本があって、制作者たちのインタビューによる構成の本なのだが、面白かった。
ミノフスキー粒子を考案した脚本の松崎健一。見事なコロニーのセル画を下描きなしで5分で描いてしまう美術の中村光毅。僕も子供の頃から名前を知っていたメカ・デザインの大河原邦男、そして富野由悠季の強固なポリシーを感じるインタビューなど、ボリューム・内容ともに読み応えのある一冊である。
でも、なんだか一番印象に残っているのは、アニメーション・ディレクター安彦良和のパートにあった、以下の部分だったりする。
「ガンダム」の横腹はいつも暗い色なんですよ。あれは影なんです。影だったら日向から日陰に行くと形が変わるはずなんですけど。そういう時代だったんですよ。こちらは「ガンダム」の試し塗りを、影なんかもつけた奴を仕上げさんにこういうふうにやりたいと出すわけですよ。そうしたらビンに入った絵の具をね、「ガンダム一体塗るのにこれだけ色が必要になるんだよ」と目の前で並べられるんです。それで、「これを我々は全部団地に配る。そしておばさんたちに塗ってもらう。それでいくらになると思う。塗る身にもなってみなよ。絵の具を配る身にもなってみろ、薄い利潤で生きている我々の身にもなってみろ!」って言われるんです。影なんかとんでもない(笑)
ところどころカットした抜粋ですがこんな感じのことを言っていた。
僕はもう、百草団地とか高島平みたいに大きな団地の部屋でそれぞれ、いっせいにガンダムのセル画に色を塗るおばちゃんたちが浮かびました。時代だよね。
コストを考えると、デジタルは偉大だ。偉大というか、こんな作業はデジタルでなければならない。でも中には塗るのがすごく楽しいとか、プロより上手くて早いとか、意外な才能を発揮するおばちゃんもいただろうなあとか思ったりする。
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