第64回短歌研究新人賞応募作30首「セーターの毛玉のような愚痴が多々」

性懲りも無く、応募したのでした。
今は育児でいっぱいいっぱいの日ばかりだけど、
性懲りも無く、これからも続けていきたいなと思っています。短歌も、その他も。

というわけで以下、30首お焚き上げ!
なむなむー
(応募内容から少し改変した歌もあります)

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ゴルフ場にはなりたくない地図だけで「ゴルフ場ね」と言われるような

チリコンカン、チリコンカンの響き良し異国の昼の鐘にも聴こゆ

コロナ禍の怯えを知らぬ嬰児のあくびが私に三度感染

嬰児の手のひら泳ぐガラガラの綺麗な音に触れようとして

川の字の一画目になる二画目のためにいくらでも腰を折る

加湿器がごぽりと息をする部屋で我ら等しく胎児となりぬ

母となりやっと分かったあの善人この悪人にも母はいるのだ

祖母は呆け祖母なのだけど祖母でないどこに行ったらまた会えますか

己がため強きを助け時として弱きを間引く我の手の罪

コロナ禍のさみしい街で有線がひとり愛を歌っててロック

線香も覚えていない祖母と撒く彼岸の水はわずかにぬるい

飢えを知らぬ私に祖父は山程の野菜を今年も届けてしまう

腐らせた野菜がべたりと貼りついて命長しや生きろよ人間

カミツレの踏まれていつそう香ること知らぬであらう女らの群れ

さめざめと泣いていたいから上向きに咲くチューリップを敬遠してる

見たことない知らないもので輝くな我が青春よ故郷よ君よ

掃除ロボみたいになりたい躓きをエラーと言いたい助けられたい

完璧になれない母(われ)に吾子からの出来損ないの拍手喝采

セーターの毛玉のような愚痴が多々あれどそれでも家族と暮らす

保育園送りし後の座席には子の形した虚無が座りぬ

好きだというコッツウォルズに似せた庭造りて母を少女に還す

泣く孫を毎夜寝付かす父は多分その両腕に海を飼ってる

久々に面会できた祖母はもうニ時間後には灰となる人

朝焼けに青と黄色と哀しみと祈りがあってほらね綺麗だ

目一杯苺を喰みし吾子抱けば我にも春が匂ふ幸せ

あの子これ好きだろうかが恋、何も聞かずに買って帰るのが愛

髪を切る、口紅を折る、今日からは私を縛る私を捨てる

ふるさとを喰い物にした郊外の大型モールで糞して帰ろ

菜の花の黄色い声援受けながら全体重で踏み込むペダル

電動の毛玉取り器はさりさりと禊ぎに一番近い音する

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