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妊活、そもそも妊娠ってどういうこと?

妊娠ってどういうこと?


妊娠とは、すなわち精子と卵子が出会い、受精が成立したのち、子宮内に着床、胎児が発育していくことを指す。それは妊活してなくても十分浸透した知識であると思うのだけど、この平たい説明文の影でものすごい化学であったり偶然であったり神秘であったり、悲喜こもごもが全ての妊活中の男女の中に起こっている。
理屈でいくと、女性には月に一度排卵が起こり、そのタイミングで性交を行うと受精が成立、その後ゆっくり一週間程度かけて受精卵が子宮へ移動し、着床という明快な流れで妊娠は成立する。それも精子の寿命は5日程度と卵子より長いので、排卵の2日前、前日、当日を狙って性交し、排卵した卵子を余裕を持って待ち受けるという鉄則も確立されている。が。
だいたい排卵は一体何月何日何曜日、何時何分に始まるのか?排卵後の卵子の生存時間は24時間といわれているけど個人差は、というかわたしの卵子寿命は何時間なの?同じく精子の鮮度とか、それもどっちも高齢だったらどうなるの?
明朗に思える受精、着床ステップでさえ一筋縄にはいかない。今後はもっともっと科学が進んで数値化され、可視化されていくのかもしれないけれど、現時点では最後は神様にお願いするしかないという点で古代中国と変わらないのかも。そう、超音波や血液検査なんて技術もなかった古代の中国における妊活というものは一体どんなものだったのか?

東洋医学における妊娠とは

東洋医学において生殖活動に最も重要なのが「精」と呼ばれる存在である。

東洋医学における「精」は、生命活動の源であると考えられているエネルギーです。身体の中に蓄積されており、生殖機能や成長、免疫力、神経活動などの様々な生理現象に関与しているとされています。

精は、陰陽五行説に基づいて、陰陽の相互作用や五行の生成・制御によって分類され、五臓六腑や経絡と密接に関連しています。また、精は体内で消耗されることがあり、不摂生や過労などによって消耗すると、病気や不調の原因となると考えられています。

母親の精と父親の精が出会い、そこに母親の命門の火(みょうもんのひ)と呼ばれる一種のエネルギーのスパークの働きで受精が成立するとされる。

東洋医学において、「命門の火(みょうもんのひ)」とは、腎臓の機能を指します。腎臓は東洋医学において、生殖・成長・発育・老化など、体の機能に深く関わる重要な臓器とされています。

命門は、体の下部にある腰の部分に位置する穴であり、腎臓が存在する場所でもあります。腎臓は、命門に位置する「腎」と呼ばれる経絡と深く関係しており、命門の火とはこの腎の機能を指しています。

命門の火が強ければ、腎臓の機能が良好であることを示し、生殖機能や体力の維持などに良い影響を与えます。逆に、命門の火が弱ければ、腎臓の機能が低下し、生殖機能や体力の低下などの問題を引き起こすことがあります。

科学的に正確な排卵予測も難しかった古代では性交の時期うんぬんよりもむしろ精や命門の火のクオリティ、すなわち卵子や精子、ホルモンバランスといった双方のコンディションに重きをおいていたことが分かる。

妊娠というのは当然平時の生態活動ではなくて、非常事態、というか種の保存をかけた一大事である。平時の生態活動というのは比較的よく知られている五臓六腑とその気血の流れる経路(正経と呼ばれます)がきちんと機能していることが健康の基本。しかしながら妊娠という一大事には奇経と呼ばれる普段はあまり治療等で意識されない経路の存在ががぜん重要度を増すのである。川で例えると本流が正経、支流が奇経といったいったところ。本流に勢いがあれば余剰分のエネルギー(気血)を蓄えたり、足りなくなったらチョロ出ししたりというバッファーシステムのように働くのが奇経と考えられている。
妊娠が成立すると五臓六腑と正経が普段通り生態活動の維持のために働いているプラスで赤ちゃんを育てるため、蓄えてあった余剰エネルギー使うために奇経が今こそ、とアクティベートされるのだ!

こうして見ると日常生活を送るだけで精一杯、余分な蓄えなんてないよ、という働き高齢女子が妊娠するのが元気な若者より難しいのは当然といえば当然。規則正しく健康的な食事をとり、極力ストレスの少ない生活を日々送ることでエネルギーを蓄えるのが妊活の基本というのも納得。

腎ってなに?

平常運転を担うのがいわゆる五臓六腑、というけれども、中でも妊活、妊娠において例外的に最重要と言っていい活躍をするのが腎である。腎、すなわち腎臓なわけだけれどもここでは西洋医学的、解剖学的な腎臓とは概念が違うというか、それゆえにその役割の理解が難しいところ。

東洋医学における「腎(じん)」は、腎臓を指すだけでなく、体内の生命力や精神力を司る臓器系統を指す総称的な用語です。東洋医学では、腎は身体の根本的なエネルギー源と考えられており、生殖や成長、免疫力、骨や歯の強さ、脳の機能など、様々な生理的機能に関わっているとされています。

また、腎は水の代謝や排泄も担当しており、東洋医学では「腎気(じんき)」と呼ばれるエネルギーが腎を通じて尿を作り出し、体内の余分な水分を排出する役割を持っています。腎気は、身体のエネルギーが不足したり、ストレスや過労などの外的要因によって消耗することがあるため、健康維持のためには腎を養うことが重要だとされています。

我々のよく知る水分代謝において中心的な働きをするのはもちろんのこと、腎が生殖活動や細胞分裂といった、DNAや遺伝子に深く関わるのは意外な気がするのだけど、つまりはおしっこの状態で生殖能力を見ることも可能なんである。

腎が生殖活動で重要になってくるのは、腎こそが先に登場した精を貯蔵するところだから。ちなみに精の場合、食べ物を消化して作られる気血の余剰分が奇経に貯蔵されるのとは違う仕組みになっている。腎に貯蔵される精は生まれたときから増えることはなく、むしろ日々のエネルギー源として消耗され減っていき、なくなったときに精が尽きる、すなわち命を終えるということになる。これって生まれたときから減り続ける卵子と同じではないですか。

この腎に蓄えられた精が計8つある奇脈のうち、任脈と衝脈という経路を通して養分を与えられ、子宮へ運ばれる。受精が起こらなければ経血となって衝脈を通って排出される。これが東洋医学における月経の仕組みである。
任脈、衝脈によって精が運ばれるあたり、この奇脈の働きはホルモンの役割と言えるのかも。受精が起こると経血となって流れてしまっていた血が体内に残り、母乳となったり肌を潤し、髪を豊かにすると考えられているのも面白い。母乳が血液から生成されるは間違いないし、肌や髪のコンディションが向上するのはまさに妊娠によるエストロゲン効果ではないの。

東洋医学と西洋医学を照らし合わせていくのは面白いけど、やっぱり二つは全く別物。古代中国にはホルモンなんて概念はないし、卵巣や卵管、さらにいえば脳に当たる臓器もない。それに代わって五臓六腑や経路、気血水や精という物質、そして陰陽という概念で人間の生理学をきれいに説明しているのだから感動的ですらある。そう考えると東洋医学は全く違う角度から一般的な生殖医療プラスで妊娠・出産をアシストするツールとして十分に可能性があるのが分かるような気がしてくるではないですか。


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