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その魚、凶暴につき

ティラピアというやつがいる。
日本では(特に首都圏では)あまり馴染みがないかもしれないけど、スズキの友達で沖縄にも棲んでいるらしい。
彼は臭みがなく、豊潤な肉質。 僕のお気に入りの食べ方はフライにして塩を付けるだけ。

ティラピアはアフリカでたくさん漁れる。 21歳の頃、ガーナに1年程いたので、そこで随分食べさせてもらった。

彼は獰猛な雑食で、どんな環境にも適応するから、世界中の色んなところに棲んでいるタフガイである。
そのタフネスさから、地域の生態を破壊されないか懸念されているらしい。

確かに、フライになった姿を見ても、どことなく「なんじゃいコラァ」という顔をしている。

ガーナで仲良くなったコフィという青年がいた。
彼はイギリス国籍を持ち、イギリスで弁護士資格を取得し祖父の祖国ガーナで事務所を開いていた。

ある日彼と一緒に酒を飲みに出かけて、ティラピアを食べていると「シンはティラピアみたいだね」と言われた。

よく意味がわからなかったけど、特に深い意味はないのだろうと思ってティラピアの顔のマネをしてみた。 2人でケタケタ笑った。

総合商社で働いていた時、会社の上司と鯛の刺身を食べていた。突然このことを思い出して、「似てません?」と口をパックリ開けた鯛のマネをしてみた。
上司には「唐突感がある」と言われ、その後1時間、彼が僕の年齢の時どれだけしっかりしていたかを延々と語られた。

日本社会では、意味と文脈が、ユーモアと寛容さより大切らしい。

1ヶ月後に僕は会社を辞めた。

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