【近畿】2024 秋季近畿大会結果まとめ & 2025 センバツ出場校予想(一般枠)
こんにちは!
2024年度の秋季近畿大会も11/4に全日程を終え、幕を閉じました。今日は大会結果を振り返り、長くなりますが僕の所感と来春のセンバツ出場校選考について述べていきたいと思います。どうぞ宜しくお付き合いください。
大会結果(トーナメント)
今大会の勝ち上がり表は、下図の通りとなりました。
結果は、東洋大姫路が17年ぶりとなる4回目の優勝を果たしました。おめでとうございます!
試合スコア
一回戦
準々決勝
準決勝・決勝
総括
今大会は4日間、計9試合を現地観戦することができました。その中での所感を述べていきたいと思います。
まず何よりも特筆すべき点は、東洋大姫路の強さでしょう。今大会は投打がガッチリと噛み合い、終わってみれば接戦もなく、他を寄せ付けない強さで優勝しました。その立役者が、今やプロも注目するほどの投手に成長した、絶対的エース・阪下くんの力投です。阪下くんは4試合中3試合を完投、27回⅔を投げて失点わずか1と、圧巻のピッチングを披露しました。兵庫県大会から安定した投球を見せていた阪下くんは、球質、コントロール、キレ、投球術全てが素晴らしく、落ち着いたマウンド捌きも光っていました。実質的に現時点での近畿No.1投手と言っても差し支えないでしょう。
東洋大姫路は打線にも爆発力がありました。県大会序盤こそ湿っていましたが徐々に調子を上げ、近畿大会では勢いそのままに存分にその威力を発揮しました。上位から下位まで打力のある選手が揃っており、どの打順からでも点を取る力があります。とりわけ今大会でキーとなっていたのが、6番を打っていた好打者・白鳥くんの存在と、1年生の渡邊裕太くんを8番に据えた采配です。
怪我の影響(?)で県大会に出場していなかった白鳥くんですが、今大会で復帰を果たすや否や早速大暴れし、要所要所でタイムリーを放つ場面が何度も見られました。東洋大姫路打線に欠かせない存在であることを、改めて強烈にアピールできたことでしょう。
また、県大会では4番も任されていた渡邊裕太くんを8番に据えたことも、大きく功を奏しました。この渡邊くんが単打を量産することにより、打線が途切れずに複数得点に結びつくシーンも数多く見られましたし、決勝戦では貴重なタイムリーも放ち、優勝に大きく貢献しました。この二人に加え、キャプテンの渡邊拓雲くんや伏見くん、見村くんなどの上位陣も相変わらず非常に力があり、東洋打線はまさに抜け目がないなと改めて感じました。
さらに、投手力と打力が目立つため見過ごされがちですが、東洋大姫路は伝統の強固な守備も健在で、今大会も4試合でわずか1失策と守備力の高さも見せました。その上、バントなどの小技もきっちり決める能力もあり、まさに岡田監督就任以前・以後の東洋の良い点だけを集めたような試合運びが続き、弱点を見つけることが難しいほどの強いチーム作りができていました。明治神宮大会、さらには来年のセンバツにおいても、優勝候補の一角として名を挙げられても何ら不思議ではない、見事な優勝でした。
準優勝の智弁和歌山も、非常に伸びしろのありそうな好チームでした。エース・渡邉くんと2番手の宮口くんが継投で試合を作り、準決勝まで大きく乱れることはありませんでした。特に宮口くんは140キロ台のストレートに伸びがあり、決勝戦では東洋大姫路打線も抑えるなどリリーフ登板での安定性が光っていました。これからの成長も楽しみな好投手です。
また、圧巻だったのは2番打者の福元くんでした。準決勝の市和歌山戦では2打席連続のホームランを放つなど、その打棒は多くの高校野球ファンに衝撃を与え、存在感をアピールしました。決勝戦でもあわやホームランかという大飛球を飛ばしており、相手バッテリーにプレッシャーを与える強打者だと感じました。
今大会の智弁和歌山を観ていると、戦術の変化が窺えました。これまで智弁和歌山と言えば、強打で打ち勝つ野球を最大の特徴としていましたが、今大会はバントを数多く仕掛け、スモールベースボールを採り入れていました。近年甲子園でなかなか結果を残すことができていないこと、また、新基準バットにより長打が出にくくなったことが大きく影響しているものと思われます。今夏選手権の初戦(対霞ヶ浦)においても、相次ぐバントの失敗が敗戦に大きく影響していただけに、中谷監督も戦術に自らメスを入れたのでしょう。この「新生・智弁和歌山」の戦術の変化とそれがもたらした結果は、今後の高校野球界に影響を及ぼすものとなりそうですので、要注目ですね。
この2校以外で衝撃を受けたのは、なんと言っても大阪1位・履正社と大阪2位・大阪桐蔭がともに滋賀勢に敗れたことでした。もっとも、夏の選手権で躍進した滋賀学園はもともと前評判が高く、絶対王者・大阪桐蔭をも倒す力があるという見方もされていましたが、滋賀短大附が履正社を倒したのはまさに”ジャイアントキリング”と言える衝撃でした。この滋賀勢の活躍により、大阪勢は98年ぶりのセンバツ代表「0」の危機に陥る事態となりました。
このように結果と内容を振り返ると、今大会は何が起こるかわからない高校野球の魅力を改めて感じさせるとともに、近年県内で苦しんでいた東洋大姫路が一気に近畿の頂点に昇りつめたり、大阪二強が初戦で姿を消すなど、近畿地区の力関係や趨勢にも変化が訪れていることを表してくれるものとなりました。
気になるセンバツ出場校予想
さて、今大会の内容を基に選考される、2025年センバツ出場校は一体どこになるのでしょうか。現時点で神宮枠、21世紀枠は未確定ですので、ここでは一般枠(6枠)について見ていきましょう。
(過去参考記事:センバツ高校野球 近畿地区選考の謎)
まず、ベスト4に進出した4校は当確となりますので、今回は優勝した東洋大姫路(兵庫)、準優勝の智弁和歌山(和歌山)、そして天理(奈良)、市和歌山(和歌山)は、センバツへの切符を手中に収めたと言っていいです。
5&6枠目の行方は
本題に入る前に、過去何度も物議を醸してきた選抜選考の「炎上対策」として高野連が2022年に公表した、「選抜選考ガイドライン」をおさらいしておきましょう。
秋季大会の試合結果と試合内容を、同程度の割合で総合的に評価する。
試合内容については、技術面だけでなく、野球に取り組む姿勢なども評価対象とする。
複数の学校の評価が並んだ場合、できるだけ多くの地域から出場できるよう考慮する。
府県大会の結果は参考にするが、選考委員が視察する地区大会の内容を優先する。
センバツ出場校の選考はこのガイドラインに沿って執り行われるため、よく頭に入れておく必要があります。
では、注目の5&6枠目は一体どこになるのでしょうか。今大会、ベスト8で敗れた滋賀短大附(以下、滋賀短)、大阪学院大高(以下、大阪学院)、立命館宇治、滋賀学園の4校を比較して2校が選ばれますが、どのチームも決め手に欠けており、選考は難航しそうです。その上で結論から言うと、今回は滋賀学園と大阪学院が選出される可能性が高いでしょう。が、僕はあえて滋賀学園と滋賀短大附が選出されると予想します。なぜこのような表現になってしまったのかと言うと、今大会の比較は少し視点を変えるだけで選考も変わってしまう、ややこしいものとなってしまっているからです。ここから、長くなりますがその理由を熟考していきたいと思います。
まず、4校がそれぞれ戦った2試合の内容を、府県順位や対戦相手を考慮せずに比較すると、滋賀短>滋賀学園≧大阪学院>立命館宇治ということがスコアから見てとれると思います。投手陣が粘ったものの2試合で1得点、準々決勝ではマダックスで完封負けを喫した大阪学院と、初戦は快勝したものの準々決勝で6回コールド完封負けを喫した立命館宇治が、実力評価において滋賀の2校に比べ不利と言えます。
そしてさらに対戦相手を考慮すると、初戦で大阪1位の履正社を破り、準々決勝でも奈良1位の天理を相手に中盤まで接戦を演じた滋賀短大附と、初戦で大会三連覇中の大阪2位・大阪桐蔭を破った滋賀学園が大きなインパクトを残しました。大阪学院は初戦で京都3位の北稜相手に1-0で辛勝し、準々決勝では兵庫1位の東洋大姫路に4失点の完封負け。立命館宇治も奈良2位の奈良に勝ったのみで、準々決勝では和歌山3位の市和歌山に大敗しました。ここも印象的には滋賀の2校が優位に立っており、インパクト度合いは滋賀短=滋賀学園>大阪学院≧立命館宇治と考えられます。
ここまでを選考ガイドラインに素直に従って考えると、実力的には滋賀の2校が評価されるのが妥当と判断できます。
無視できない「大阪枠」の存在
以前、ブログにて言及しましたが、センバツ大会には「大阪枠」なるものが存在していると言われています。これは2002年の秋季近畿大会にて大阪勢が3校とも初戦敗退し、1927年の第4回センバツ大会以来となる大阪代表「0」が確実と思われていた中で、近大附が「センター返しができる」という理由で翌年のセンバツに逆転選出されたことから、存在が示唆された枠です。この選出は伝説の「センター返し枠」事件として、今も高校野球ファンの間で語り草となっています。
この事件があったためか、「大阪代表が0になることなどあり得ない」とのことで、今回の選考においても地域性を理由に大阪学院が選出されるのでは、との意見がネット上では多く見られます。準々決勝コールド負けの立命館宇治を除く3校に実力差がないと判断されれば、ガイドライン3項の地域性が発動し、滋賀1校、大阪1校の選出の可能性があります。こうなると5枠目として滋賀の2校が比較され、県大会の直接対決の結果が基軸となり、滋賀学園選出、滋賀短が落選となり、大阪学院が6枠目で選出となるでしょう。また、ベスト8敗退校の比較で難航した場合は、勝利校のその後の結果も参考とされる可能性があり、その場合は大阪学院に勝利した東洋大姫路が、滋賀短に勝利した天理に準決勝でコールド勝ちを収め、さらに優勝までしているため、この結果も大阪学院にとっては追い風になるかもしれません。大阪学院は得点力不足がマイナス評価となり得ますが、優勝した東洋大姫路を4失点に抑えており、2試合を通じた投手力はある程度評価できるとも言えます。考え方によっては、一概に滋賀短>大阪学院と言い切ることもできないのです。
普通に考えれば、大阪1位2位を撃破した滋賀2校のどちらかを差し置いて大阪3位が選出されることには疑問が呈されるべきところですが、この「大阪枠」の威を借りて地域性が発動すれば、大阪学院の選出が確実となります。
参考となる2023年のセンバツ選考
このように難航が予想される今回の選考ですが、実は選考を占う上での重要な参考資料となる前例があります。それが、ガイドライン策定後初の選考となった2023年センバツの、神宮枠を巡る選考です。この年のベスト8の状況は今年の結果と類似しているため、振り返ってみましょう。
2022年秋季大会の準々決勝の結果は、下表の通りとなりました。
この結果、この年の近畿代表はベスト4の4校とともに5枠目に履正社、6枠目に彦根総合が選出されました。極めて順当な結果と言えるでしょう。
その後、大阪桐蔭が明治神宮大会で優勝し、神宮枠が近畿地区に与えられ、7枠目が選出されることとなりました。すなわち、残る高田商と社の比較となったのです。
そこでさらにこの2校の1回戦の結果を振り返ると、下表の通りとなっています。
この両チームそれぞれの2試合の結果を見ると、今大会の大阪学院、滋賀短との共通点が多いことがわかります。まず、高田商は準々決勝で完封負けし、2試合1得点という部分が大阪学院(府3位)と被り、社は県3位ながら他府県1位の天理を破っている点が滋賀短(県2位)と被ります。また、相関関係を見ても、高田商よりも県順位が上である天理を社が破っている点は、大阪学院よりも府順位が上の大阪1位・履正社を滋賀短が破っている点と共通しています。さらに、地域性で見ると兵庫1校(報徳学園)が当確している社よりも、奈良で1校のみ残っている高田商が優位という点が、大阪学院の地域性の優位さと一致します。
この2023年の神宮枠の選考予想は、高田商の得点力不足がマイナス評価となるものの、社も準々決勝でコールド完封負けしている点がマイナス評価となり、結果的に地域性で高田商が選出されるだろう、というのが大方の見方でした。
ところが、結局神宮枠で選出されたのは、社でした。この時、選考理由について大会事務局は、「地域性を俎上(そじょう)に乗せる以前の比較で、社に決まった」と純粋な戦力評価だったことを説明しています。つまり、「1回戦で複数点差をつけてX県1位校を破ったチームは、たとえ次戦でコールド完封負けを喫したとしても、2試合1得点のX県2位より勝る」という前例が確立されたのです。これを今大会に当てはめて考えると、滋賀短>大阪学院という図式が成り立ちます。
また、社が選ばれたもう一つの理由に、県レベルの評価も絡んでいると思われます。この大会では、兵庫1位の報徳学園が準優勝を果たしており、相対的な県レベルが兵庫>奈良だったという評価ができます。これを今大会に当てはめると、滋賀vs大阪の直接対決2試合でともに滋賀勢が大阪1位2位を撃破しているため、府県レベルが滋賀>大阪であったことは明白です。これも、滋賀短>大阪学院の図式を成り立たせる要素となります。
選考委員がこの前例を踏襲すれば、今回の選考ではやはり滋賀学園、滋賀短大附が選出されるはずであり、僕があえてこの2校を予想したのも、上記の理由からです。そして、東洋大姫路が神宮大会で優勝すれば、神宮枠を大阪学院に与えるべきだと考えます。もし大阪学院が一般枠で選出されれば、高野連がわざわざ明文化したガイドラインはたった2年で反故にされ、「大阪枠」の存在を含めた選考の不透明性が再燃し、高野連への批判も起きる事態となるでしょう。
ただし、やはりこれまで近畿の高校野球を引っ張ってきた大阪を高野連が切り捨てることも考え難く、”大人の事情”により大阪学院が選出される可能性の方が高いことは、注視しておかなければなりません。
「センター返し枠」事件から20年以上経ち、社会もSNS時代に移り変わり、関係者やファンの声が拡散されやすい世の中となりました。情報の透明性も求められます。今回の選考は、そのような社会変遷の中で高野連が本当に変革できたのかが試される、重要な選考になると言えるでしょう。
おわりに
6年ぶりの地元・兵庫開催ということもあって、今年の近畿大会はいつもよりも多くの試合を観戦でき、とても充実した時間を過ごすことができました。同時に、「中森・来田の明商が準優勝して、もう6年も経ったんか・・・」と、時の流れの早さも身に染みて実感しました。
次はいよいよ明治神宮大会に、我らが東洋大姫路が乗り込みます。前述の通り今年の選考は揉めそうなので、すっきりさせるためにも東洋大姫路にはぜひとも優勝してもらい、神宮枠を持って帰ってきてほしいところですね。
今年の高校野球シーズンももうすぐ終わりますが、最後まで楽しみたいと思います。
では!