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9月21日:アラスの和約

本日9月21日は、フランス王シャルル七世とブルゴーニュ公(善良公フィリップ)がアラスの和約を締結した日です。

1435年パリ包囲戦のさなかに、ブルゴーニュはイングランドとの同盟関係から離脱してフランスと和睦。英仏百年戦争の趨勢が大きくフランス優位に傾くきっかけになりますー

一説によると、シャルル七世がひざまずいて先代・ブルゴーニュ無怖公殺害の件を謝罪すると、善良公は大変驚き「王が臣下の前でそんなことをしてはいけない」と諭して立たせる一幕があったとか。
本心からの行動か、事前に打ち合わせ済みのパフォーマンスかは諸説ありますが、二人の性格がよく出ていると思う。

パリ包囲戦は、1429年9月にもジャンヌ・ダルク主導で行われましたが、わずか5日でシャルル七世は撤退を決意。ランスでの戴冠式後〜ジャンヌ捕縛の間のできごとなので、『7番目のシャルル』でももうそろそろ…ですね。(あまり詳しく書くのはやめておこう)

戦闘を回避したいシャルル七世と、好戦的なジャンヌが対立したともいわれます。一般的には「ジャンヌの進言を聞き入れないシャルル七世が悪い」といった風潮なのかな。

なお、6年後、1435年のパリ包囲戦では、事前に軍資金3年分調達→開戦していることから推測すると、1429年の包囲戦中止は(よく言われるような)ジャンヌへの嫉妬ではなく、資金不足が原因だと考えられます。

だって、オルレアン包囲戦が終わってまだ4ヶ月しか経ってない。

\オルレアン防衛にかかった費用の話/

ジャンヌに言われるがまま、突発的にパリに遠征して包囲戦を仕掛けたとして。
兵士1万人の食料はじめ、物資をどこで調達するのでしょう?
シャルル七世は略奪を禁じているから現地調達できないし、長期戦になりそうなら撤退するのは仕方ないと思う。
調子に乗った暴君なら、短絡的かつ無計画な攻撃を仕掛けて、失敗を部下の責任にするんでしょうけど。

ジャンヌ絡みで悪者にされがちなシャルル七世ですが。
敵味方に関係なく犠牲を最小限にしようと考え、国土を荒らさないように気を遣ういい王様だと思うんだけどな。

ちなみに、1435年のパリ包囲戦は、「3年分の軍資金」と「アラスの和約」のおかげで10ヶ月で奪還に成功します。3年がかりの計画を10ヶ月で成し遂げたのはリッシュモンとデュノワの手腕ですね。

『7番目のシャルル』では、リッシュモン大元帥の指揮官としての功績をなかなか書けないのでフォローしておきますw

\ヘッダの画像中央はブルゴーニュ公ですがアラスの和約とは無関係/

▼7番目のシャルル、聖女と亡霊の声

あらすじ:不遇な生い立ちの王が百年戦争に勝利するまでの貴種流離譚。
フランス王国史上最悪の国王夫妻——狂王シャルル六世と淫乱王妃イザボー・ド・バヴィエールの10番目の子は、兄王子の連続死で14歳で王太子になるが、母と愛人のクーデターで命からがらパリを脱出。母が扇動する誹謗中傷に耐え、19歳で名ばかりの王に即位したシャルル七世は、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。

父母の呪縛、イングランドの脅威、ジャンヌ・ダルクとの対面と火刑、王国奪還と終戦、復権裁判。没落王太子はいかにして「恩人を見捨てた非情な王」または「勝利王、よく尽された王」と呼ばれるようになったか。

※noteのヘッダとアルファポリス版の表紙画像はPicrew「IIKANJI MAKER」で作成したイラストを加工し、イメージとして使わせていただいてます。

▼7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】

※アルファポリス版の表紙画像は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。


自著の紹介

既刊:デュマ・フィスの未邦訳小説『トリスタン・ル・ルー』

2022年10月21日、シャルル七世即位600周年記念にリリースしました。
Kindle版(電子書籍)とペーパーバック版があります。

新刊:『十九世紀の異端科学者はかく語る』

ジョン・ラボック著『The Pleasures of Life』第一部を翻訳・書籍化しました。訳者・序文で「ダーウィンとラボックの師弟関係」を書き下ろし。

web小説『7番目のシャルル』シリーズ

シャルル七世が主人公の小説(少年期編青年期編)連載中。
関連エッセイ、翻訳などもあります。


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しんの(C.Clarté)
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