『夜の街で』1話【ー思いつき長編ー】
夜の新宿歌舞伎町。
薄いピンクのMGMのバッグを背負った女の子が一人で座り込んで泣いている。
周りの人は知らんぷり。見て見ぬ振りをして過ぎ去っていく。
そんな中一人の男が声をかけた。
長い髪を金髪に染めた、黒い革のジャンパーを着た男だ。
「大丈夫? 何かあったの?」
「どっか行って。どうせ勧誘でしょ。」
「でも、女の子が泣いていたらほっておけないじゃん。」
「本当に大丈夫だから。話しかけないで。」
「わかった、じゃあただここにいるから、気が向いたら話しかけて。」
女の子は無視した。
それから5分ほど経つと女の子のほうから口を開いた。
「本当に無言でそこにいるんだね。」
「そうするって言ったじゃん。」
「ただの口説き文句かと思った。」
「まさか、こんな普通に可愛い子ほっとけないでしょ。」
「セリフが完全にホストだ。」
「ホストだからね。」
「だよね。」
男がここで提案した。
「話聞いてあげたいけど、ここだとそろそろ店長に怒られちゃうからさ。お店来ない? 何も頼まなくてもいいよ。初回料金で2000円だけもらえればそれで大丈夫だから。」
「うん、わかった。」
男が手を貸して立ち上がらせると、二人は店に向かって歩き始めた。
「この辺危ないからもうちょっとこっちおいで。」
そう言って男は女の子の腕を引っ張り、そのまま手を握って指を絡ませた。
女の子は何も言わずにそれを受け入れた。
そのまま店に着くと男は女の子を席に座らせて、システムの説明をし始めた。
「一応ルールだから料金の説明をしておくね。初回料金だから2時間飲み放題で2000円でh」
「いいよ、知ってるから言わなくて。だから早く隣座って。」
「わかった。飲み物はどうする? もしあんまり強くないならソフドリもあるけど。」
「お酒が良い。」
「わかった、ちょっとだけ待っててね。」
男が黒服にお酒を準備するよう指示すると、黒服は鏡月のボトルとグラスを持ってきた。
すぐに男はお酒の準備をすると女の子に渡した。
「君も飲みなよ、私だけだと申し訳ないから。」
「ありがとう、じゃあお言葉に甘えていただくね。」
そうして男は自分のお酒も作ると、女の子と乾杯をした。
「答えにくかったら答えなくてもいいけど、今日はどうしてあんなところで泣いてたの?」
「わからない。」
「わからない?」
「なんか、泣きたくなったの。」
たまにこう言う不思議な世界観を持つ構ってちゃんがいるが、
なんか今回は違う気がした男はさらに聞いた。
「そうなんだ、其の前は何してたの?」
(続く)