商業系高等学校のスゝメ
こんにちは。この度は本記事をクリックしてくださり、ありがとうございます。
この記事では、中学から高校への進学に商業高校を視野に入れている方、または現在商業高校に通われている方のお役に立てればと思い、筆者の経験談を語ります。
または「商業高校ってどんなところなん?」という方にもお読みいただければ幸いです。詳しくはWikipediaなんかを読めば制度は分かると思うので、今回は在学時の体験をお伝えします。
高校における学科について
高校は習う内容によって大きく分けて普通科・専門学科・総合学科に分かれます。
普通科は大体の人が考える「高校」と思って間違いないです。漫画やアニメの中の高校も大体は普通科だと思います。
専門学科はその中でさらに職業学科とその他専門学科に分けることができます。職業学科は農業や工業、水産といった「卒業後の進路と結びつきやすい」内容を勉強する学科です。もちろん商業科はこの中に含まれます。その他専門学科はダンスや演劇、芸術など「普通科よりは専門的なんだけど職業学科ほど人数は少ない」といった感じの内容をするところです。
総合学科は普通科と専門学科のいいとこ取りを目指したようなシステムで、5教科の共通科目の他に専門科目を選択的に受講できるようなパターンが多いです。
令和3年5月時点で、全日制・定時制の高校生のうち73.3%が普通科の生徒であり、専門学科は21.2%、総合学科は5.5%となっています。商業科単独で見るならば全体の5.7%です。(文部科学省「学校基本統計」より)
例えば40人学級で全員が定時制と全日制の高校に進学する場合、約29人が普通科へ、約9人が専門学科(うち2人が商業科)、残りの2人が総合学科へ進学するといったところでしょうか。もちろん地域差や年代差はあると思います。
普通科とは何が違う?
普通科と違うのは、普通科目の少なさです。国語、英語、数学、理科、社会のいわゆる普通の科目が週あたりに少ないです。では、そのほかの時間に何をしているのかといえば専門科目です。専門科目とは、簿記や情報処理、原価計算や商業計算、実践演習などです。
簿記って何?という方に簡単に説明すると、品物を売る会社の大きな家計簿をつける作業といってもいいでしょう。商品在庫・お金の管理をするのに役に立ちます。
情報処理とは、パソコンを使うための基礎知識であったり、実践的な文書作成から表計算ソフトの使用を学びます。これらは社会に出てから役に立つだけでなく、例えば卒業後に大学や専門学校に進学した時のデータ整理やレポート作成にも役に立つ知識です。
原価計算とは、売上の元になる費用を計算することです。商品に対して適切な値段設定ができるように計算していきます。商業計算もそれに似たもので、利回り計算(一か月の借り入れにあたり利子がどのくらいつくのかの計算)や、ヤードから平方メートルへの単位換算など、幅広く電卓で計算していくものです。
実践演習は、筆者の母校では三人一組のグループになって学内の架空会社を経営し、他の学内架空会社との取引を一年間通して行う実践的な実習でした。従業員の給料計算や仕入れ、売り上げの管理もします。小切手を使う練習などもありました。このあたりは学校見学に行った際に見るのもおすすめです。
このように、普通科科目を皆さんが学んでいる間に専門科目を学んでいるのです。週当たりの単位数は商業科目もそこそこ多くなります。
また、これらには検定が存在します(全商のビジネス文書実務検定や簿記実務検定など)。詳しくは後述しますが、皆その検定試験に向けて日々研鑽しています。
どう過ごせばいい?
筆者のおすすめは「検定資格を取りまくる」ことです。資格の勉強のコツを早いうちから身につけることで、大学在学中や社会人になった後の資格取得の勉強がやりやすくなるからです。
商業高校に在籍していて、「やることがない日」はほぼ存在しないかと思われます。なぜなら、毎月なんらかのテストないし検定に追われているだろうからです。
検定試験は、商業・情報処理合わせて年間に十種類程度はあるでしょう。全国商業高等学校協会が開催しているものが商業高校では一般的ではないでしょうか(詳しくはこちら)。入学式の日に「就職するにせよ、進学するにせよ、これらの資格のうち3つ以上で1級に合格するように」と言われたことは今でも覚えています。
全国の商業科の生徒はこの資格取得の勉強に苦しむことが多いと思います。筆者の母校では簿記の単位には資格の取得が影響していました。全商簿記3級に合格しないと簿記1の単位が出ないのです。
また、英検や漢検を個人で受験する人もいました。英検や漢検などは推薦入試で活用できる場合がある為、取っていても損はないと思います。
商業科目を教えられる人は身近にいないことの方が多いと思います。検定勉強で分からないことがあれば学校の先生をうまく活用するといいでしょう。先生は質問に対して快く答えてくれる筈です。合格率は学校の評価に関わりますしね。
授業が開講されていないのに検定だけある場合もあります。その場合は無理して取得する必要もありませんが、独学でできるものもあります。対策テキストを買って(学内での販売があります)コツコツと続けましょう。筆者の高校では、全商主催の検定の全科目一級合格者がいました。卒業式の日は表彰されておられました。
進路はどうする?
進学組と就職組に分かれます。この辺は普通科でも同じところがあると思います。
進学組は、主に四年制大学、短期大学、専門学校に推薦で進学することが多いです。主に経済、経営、商学にまつわる学部学科に行くことが多いですが、最近では福祉分野などにも推薦枠を持っている学校が多いかと思われます。進学して、専門科目への知識を深め、商業高校の先生になる方もいらっしゃいます。国立大学、有名私大への推薦枠も存在します。
就職組は、一社だけに決め、就活を行っていくスタイルの都道府県が多いです。中には就活で何社かに応募できる都道府県もあります。詳しくは学校側に聞いてみるのが良いかと思われます。高校卒業後すぐに就職すると、同学年の大卒が就職する頃に社会人5年目になり、たくさんの経験が得られまるのがメリットです。
筆者の友人は、私立薬学部に進学しました。その方は一般推薦を狙いました。もちろん一般推薦なので、商業科目、普通科目をオール5程取っておられました。その上、普通の入学試験を受けるのでハードだったと思います。これは相当特殊な例ですが不可能ではないようです。
また、筆者の友人その2は、有名私大の経済系学部に進学しました。その方は、取れる資格を片っ端から取っていき、ITパスポート、日商簿記2級、プログラミングまでこなす方でした。そんな友人2は、日々の内申点、評定平均をもりもり稼ぎ、有名私大への推薦枠を得ました。
さらに友人3は、専門学校でプログラミングを学ばれ、SEとして活躍中、友人4は地元大手企業に就職されました。
筆者のいとこは、商業高校から私立教育大への推薦をもらい、現在教育実習中です。
ちなみに筆者は、AO入試を使って大学進学しました。というのも、進学したい学部が名前を変えてリニューアルすることになり、推薦枠がその年からなくなってしまったからです。もちろん自己PR文の効果的な書き方やや面接の仕方などは就職担当の先生がみっちり教えてくださいました。その後は進学した学部が好きで院進学をしました。
このように進路は様々です。
商業高校へ行くデメリット
デメリットは、進学の選択肢が偏ることです。学校推薦で大学進学を目指す場合、どうしても経済系学部への推薦が多くなります。運よく自分の好きな学部が推薦枠にあればいいですが、理系学部などは無いに等しいでしょう。推薦以外の一般国公立受験となると、それはもう茨の道です。習っていない科目が多すぎるからです。地学や物理、数Bなんてまず習いませんでした。生物も、教科書の半分ほどをかいつまみながら取り組んだくらいです。それらの科目で分からない問題が出てきたときには、学校の先生に尋ねるしかありません。塾などに頼らずに受験勉強をするのは難しいでしょう。
筆者の場合、英語・生物・化学の授業数が少なく、大学に入ってからえらく難儀しました。学部で必要な基礎知識を習ってないな、と進路次第では実感するかもしれません。
話はややそれますが、勉強のしにくさというところでは「商業科目を家で勉強している時に、わからないことを周りに聞いても周りの人もわからない」というところもデメリットかもしれません。対策としては授業をちゃんと聞く、わからないところは素直に先生に聞く、成績の良い友人を作っておく、といったところでしょうか。
商業高校へ行くメリット
地元で就職したい!という人にはとてもとてもお勧めです。即戦力になりうるスキルが身についている状態で就職ができます。全国企業の地域支店から地元企業まで、地域にある会社とのパイプがあるところが多く、卒業生同士のつながりで物事が動くようなこともあります。また、高卒で入社した場合、人材育成の手厚いフォローがあるところが多いと聞きました。
筆者の場合はまた違ったメリットを享受していました。
筆者は中学のころから数学が大の苦手でした。何なら算数のころから苦手だったと思います。今振り返ってみると、普通科へ行っていた場合、数Ⅱなどについていける筈もありません。そのような意味では、数Ⅱが必修でない商業高校へ進学してよかったと思っています。
また、筆者は暗記や電卓捌きが得意だったため、商業科目には向いていたようでした。そのおかげで、検定一級もいくつか取得でき、資格勉強のコツもつかめました。国家資格取得の時にもそのノウハウは生かされました。
まとめ
進学するか、就職するか進路の決まっていない人で、普通科目に苦手感がある方には商業高校も一つの道としておすすめかもしれません。
平均以上の成績をとりつつ、就職にも進学にも有利なように検定資格を取り進めておくと、進路の選択肢は広がります。
興味が湧いたことを追求するために、勇気をもってAO入試などの特殊な入試で他学部、他のジャンルの専門学校へ行くのもアリだと思います。