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マッチングアプリに参戦したらバトルロワイアルが始まった

とある女から、「あなたは絶対モテる。コミュ力高いし話しやすいし」と言われ、大いに勘違いをした筆者は久しぶりにマッチングアプリに参戦した。

今回はその体験記である。


マッチングアプリは非情な弱肉強食の世界


マッチングアプリにおいて男は、「財力」「知力(学歴)」「身長」という要素が加点対象になる。
(清潔感は当たり前すぎるので外してます。また、アプリのユーザー層によって評価基準は多少の変化があると思います)

そう考える根拠は、女は女というだけで多くのいいねが集まり、日々大量のメッセージが届くからだ。
いいねが爆弾のように投下されメッセージがたくさん届くと、いちいち1人1人をちゃんと見ていられないので、ある程度男のスペックでふるいにかける作業が必要となる。

すると、身長、財力(年収)、知力という数値で可視化しやすい分野が評価対象となるのは必然である。(知力は偏差値などで数値化可能)

女は皆口を揃えて「優しい人がいい」と嘯くが、アプリ上で相手が優しいかどうかなど判定不可能であるため、そこは評価対象に全くならない。

そうした前提を踏まえた上で筆者のスペックを見てみると、

・ 足りない知性(バカ高校卒)
・ か細い年収
・ 貧弱な身長(身長159cm)

と何一つ加点対象がない。

つまり、マッチングアプリという弱肉強食の市場では筆者はほぼ勝ち目がないことを指し示す。



女性のプロフィールを見てみると、結構な率で「高身長男子が好きです!身長差があればあるほどいいな♡」と書いてある。



日本人男性の平均身長を大きく下回る筆者としては腹立たしいことこの上ないので、こっちも対抗して「爆乳系女子が好きです!大きければ大きいほどいいです♡」と返す刀で書いてやろうと思ったが、そもそも筆者は貧乳派なのであえなく断念した。

ここまで読んだ方からすれば、「だったらマッチングアプリやめろよ、この弱者男性が!」と口汚く罵りたくなるかもだが、大いに勘違いしてる筆者にそんな声が届くはずもない。
筆者はマジのマジで「自分はイケる」と思っていたのだから。

奇跡は起こるのか!?


自身のモテ度を著しく曲解した筆者は、それはもううっきうきで気になる女たちにいいねを送りまくるが、当然、必然、当たり前にいいねは返ってこない。

たまにいいねが返ってきても、メッセージを送ったらシカト。
稀にメッセージが返ってきても、AIチャットボットと錯覚するくらい事務的な応対しかしない女ばかりである。

筆者の市場価値は0に等しいのだから冷静に考えればこの結果は当然の帰結だが、それは今だからそう言える話であって、その時の筆者は「違う、こんなはずじゃ・・・」とまるで信じられないことが起きたかのように感じていた。
何とも滑稽である。

溶ける金、徒労に終わるいいね連打、無情に過ぎていく時間。

あまりにも想定と違う結果に筆者は段々運営に腹が立ってきたので、辛辣な低評価レビューを書いて退会してやろうと思った。がその時、奇跡が起きる。女優の卵とマッチングしたのだ。

突然バトルロワイアルが始まった


一緒にディナーをしようということで、筆者が4つほど店の候補を出して彼女はそこからイタリアンの店を選択。

こうして女優の卵の彼女と初対面と相成ったわけである。

彼女は白を基調とした清楚系の服装をしており、彼女の容姿をAmazonレビュー風に星で評価するなら、文句なく星5つの圧倒的美女だった。

写真通り。いや、写真以上である。

ご機嫌な筆者は軽やかなステップで彼女を店までエスコートする。
その店は記念日で使われるような雰囲気の良い店内で、デートには持ってこいのロケーションであった。しかもお客さんは自分たちだけしかいない貸切状態。
運も味方している。
場は整った。あとは、適当に注文をして彼女と会話を楽しむのみである。

話を進めていくと彼女の現状がどんどん詳らかになっていく。
彼女によれば、

・ 昔から演劇をやっており女優での成功を夢見てレッスンに励んでいる
・ とはいえ女優業だけでは食えないのでバイトを3つ掛け持ちしている
・ 最近はもう芸能系の夢は諦めて正社員を目指そうと思う

このような状態らしい。
マッチングアプリを始めた理由としては、元彼と別れて新しい人を探したいとのこと。
なんでも元彼が精神的に不安定な人で、喧嘩になると手こそ出してこないものの、声を荒げたり、全く話し合いに応じない部分があったらしく、それが彼女的には「怖い」と感じ別れを決断したらしい。

だから次の相手は温厚な人がいい、ちゃんと話し合いができる人がいいと言っていた。

その話を聞いて、家の中にアリ共が進入してきたら殺虫剤片手に、「てめえら家賃も払わないくせに何勝手に居つこうとしてんだクソボケがああぁ!!」とセコい雄叫びを上げ殺戮を繰り広げている、筆者のバイオレンスな一面は黙っておこうと思った。

「はっはっはっは。そこらへんは安心してくださいよ。僕は優しさが服着て歩いているようなもんですから。だいいちこんな童顔で可愛らしい顔をしている僕が激昂するわけないじゃないですか」

自分の童顔フェイスを傍証にし積極的にアピっていく。
実際はかわいいのは顔面だけであり、中身は虫けらの命を何とも思っていない殺戮者気質なわけだが、自分にとってメリットがないことはあえて言う必要はない。

そんなこんなで、お酒も入り完全に打ち解けた両者は初対面とは思えないくらい深い会話を繰り広げた。

趣味嗜好、過去の恋愛遍歴、ちょっとHな話、もし同棲するとしたらベッドはどこに置くか、部屋のインテリアはどういうイメージを持っているか、家事をどうするか、などなどを存分に語り尽くした。

悪くない雰囲気だ。
この調子ならあと何回かデートを重ねれば、恋愛関係に持ち込めそうである。

しかし、一通りディープな話をし終えたあと彼女は衝撃的な告白をする。

「実は私、しんまさんの他に3人の彼氏候補がいるんです」

「しんまさんも含めて候補者を4人まで絞りました。この中から誰を彼氏にするか選びたいと思ってて・・・。
皆には申し訳ないんですけど、もう恋愛で失敗したくないので、妥協はしたくないんです」

なんということだ。

Amazonレビュー星5の女だ。
筆者だけを見てくれるはずはないとは思ったが、まさかライバルが3人もいるとは思わなかった。

驚く筆者を尻目に彼女は続ける。

「だから、ちょっとこの4人で殺し合いをしてもらいます。バトルロワイアル」
「この殺し合いに勝った人と私は付き合いたいと思います」

実際彼女はそこまでは言ってないが、筆者にはそう聞こえた。
段々彼女がビートたけしに見えてきた。

脳内BGMが土屋アンナの「CHECKMAT」に切り替わる。

「どうしてみんな簡単に殺し合うんだよー!!」と藤原竜也ばりに抗議の声を上げたくなったがグッと堪えた。
男の人生は競争だ。欲しいものがあるなら競争に勝たねばならない。
ここで抗議の声を上げたら男として負けである。

筆者は至って平常心を装って彼女にこう告げる。
「ははは。頑張りますよ自分」

タイムリミットは1ヶ月弱!しんまに勝機はあるのか?


彼女にバトルロワイアル参加者の写真を1人だけ見せてもらう。
その彼は紛うことなきイケメンだった。なんでも地下アイドルをやってるらしい。

彼女はノロケる。「もうイケメンは本当罪ですよー!かっこいい///」

こちらとしてはそんなノロケを聞かされて面白いわけがないので、「でもねえそういうイケメンに限って浮気しまくり中出ししまくりっすよ。あとほら、喧嘩になったら多分殴ってきますよ。イケメンなんてろくなもんじゃないっすよマジで」と印象操作をして勝負を有利に進めようと思ったが、それはそれで筆者の株を下げそうなので、「マジイケメンっすね。この人に勝てるように自分がんばりますわ」と言うに留めた。

彼女と食事している今日この日は6月5日で、彼女いわく6月中に彼氏を決めたいとのことらしい。
つまり、筆者に残されているタイムリミットは1ヶ月切っているわけである。
この短期間でどれだけ距離を縮められるかが勝敗を左右するわけだが、他の参加者は筆者よりも前に彼女と関係性を構築してるらしいので、戦況は圧倒的に不利。

微妙な緊張感が流れる中、筆者と彼女は店を後にする。
筆者は彼女を駅まで送る。
道中でも会話は盛り上がったので、次のデート日も会話中に決まった。日にちは6月26日。

さてどうするか。
このまま26日まで何もアクションを起こさなければ、多分あっさり地下アイドルの野郎に彼女をNTRされる。
なんたってタイムリミットは6月末だ。

筆者が何もアクションをしなければ失点もないが得点もない。
性格上、守りに入るより攻める方が好きなのでここは積極的に攻めてポイントを稼ぎたいところだ。

こうして脳内会議の末、「悔いが残らないように攻めよう」と決意するに至った。

単純接触効果に賭けるしかない!


攻めようと思ったところで知性に欠ける筆者には具体的に何をすればいいかわからなかった。

なので手持ちのカードを確認する。
状況を客観的に分析すると、おそらく筆者の優位性は以下だ。

・ 家がわりと近いので会いやすい
・ 会話が弾む(コミュニケーションのズレがない)

逆に言えばこれくらいしか優位性はない。

他の参加者は筆者よりも前に関係性を構築しているというハンディキャップと、筆者の優位性を整理すると、取るべき戦略は、

短時間でもいいから接触回数を増やす

ことに尽きると思う。少なとも筆者はそう考えた。

お互い暇な身ではないので、会うとしても仕事の合間の1時間だけとかにはなるだろうが、お互いの行動範囲が重なるので都合をつけるのはそう難しくない。

接触回数を増やせば、26日のデート本番前に十分関係性が構築でき、この非情なバトルロワイアルに勝利できる可能性が格段に上がる。

無論、「頻繁に会うとかダルい」と思われるリスクは無きにしも非ずだが、彼女は本気で彼氏を探しにきているのだから、こっちが本気で向き合えば彼女も本気で応えてくれるだろうと願うしかない。

こうして筆者は単純接触効果を狙った戦法に全てを賭けることにした。

バトルロワイアル、あっけなく終幕


ノープランで会ってもそれなりにべしゃる自信はあるが、如何せん時間がないのである程度の方向性は定める必要がある。なので筆者は以下の2点をアピールしようと思った。

・ どこぞの地下アイドル野郎と違って僕は誠実ですよ!
・ 僕はあなたにちゃんと好意がありますよ!

好意と誠実性を訴えかける算段である。

彼女と会話した感じ彼女は次の彼氏に誠実性を求めているので、ここをしっかりアピールしておかないと、暴力ふるいまくり中出ししまくりの地下アイドルと一緒くたにされる。

好意のアピールは言わずもがなだが、加減を間違えると、「キモい」「必死すぎ」などの泣きたくなる辛辣評価が下るので、ここはうまいことバランスを取りアピっていかねばならない。

かくして、乏しい知性をフルに使い戦略と戦術が概ね決定した。
あとはそれを行動に移すだけだ。

そう思った矢先、彼女から一本のLINEが入る。

「すいません、もうこの人っていう彼氏が決まっちゃいました」

「でも私は予定をドタキャンするような人ではないので、約束通り26日会いましょう。そこでしんまさんに直接会って思いを伝えます(あなたの彼女にはなれないということを)」

※プライバシーの配慮及び読みやすいように一部文章を改変しています。

途端に膝から崩れ落ちる。手にとっていたスマホが宙を舞う。目の前が暗転する。

仮に筆者がプーチン大統領だったら、ヤケクソのあまり核ミサイル発射のボタンをグーで連打しているだろう。
自分がプーチンじゃなくてよかったと心底痛感する。危うく最高にショボい理由で核戦争が勃発してしまうところであった。

「まさかあの中出し野郎と付き合うことにしたんすか!?」と節操もなく聞いてしまいそうになったが、グッと堪え「お幸せに」的なLINEを送った。
男の根っこは痩せ我慢だ。

こうして非情なバトルロワイアルはあっけなく終幕した。
攻める前にこのような結果になったのでかなり心残りがあるが仕方ない。

このバトルロワイアル、FPの勉強よりはるかに努力したが、結果、FPは受かり彼女には振られた。

人生はいつだって無情である。

おわりに


とんでもないピエロを演じることになった筆者は、気分転換も兼ねて江ノ島旅行に行ってきた。そこで幸運をもたらしてくれるふくろうを買った。

この可愛らしいふくろうがいれば、苦労を吹き飛ばし、長寿が約束され、幸運が舞い込んでくるという。

次こそは幸せを勝ち取りたい。
神頼みならぬふくろう頼みである。

もう筆者はふくろうしか信じない。

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