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麦子さんの心がほどけて-①

本日はまた訪問鍼灸で訪れている高齢者施設での話をご紹介させてもらいます。

私が担当させてもらってる方は高齢の認知症の方が多く、ご家族からの依頼で訪問しているケースが多いです。

大半の人が穏やかで「いつもありがとうね」みたいな感じで受けてくださっているんですが、ある時、先輩からの引き継ぎで拒否が強く難しい女性が担当につきました。名前は仮に麦子さんとしておきます。

先輩が担当していた頃、
大声で「やめてください」「帰ってください」「出ていってください」と言われたり、
念仏のように何度も何度も「帰ってください、帰ってください、帰ってください…」と唱え続けられたりと、なかなか受け入れてもらえず拒否が強いという話でした。

見るに見かねたケアマネより「男性より女性の方がいいかもしれない」ということで私とチェンジすることになりました。

初めてお会いした時の麦子さんの印象は
キレイで、気位の高そうな雰囲気を醸し出しておられ、最初から「何か用?」と警戒モードでした。

これはきっと長期戦で臨まないといけないんだろうなと腹を括り、いきなり距離を詰めようとはせず、少し距離を保ちながら、時間をかけて少しずつ信頼してもらえるようにしよう、というプランをたてました。

あまり例えとしては良くないかもですが、心を閉ざしている猫や保護犬なんかとの接し方をイメージして臨みました。

「言葉ではなく心を通わせる」
そんなイメージです。

猫や犬もいきなり触ろうとすると
シャーとかウーとか言われ、
引っ掻かれたり、噛まれたりしますが、

拒否の強い方は
引っ掻いたり、噛みついたりはしませんが、
言葉や態度はとても似通っています。

『なんか変なやつが来た。
なんだコイツは!?
あっちへ行け!出て行け!」
を態度で表現している感じです。

確かに見知らぬ人が急に部屋に入ってきたら怖いですよね。私でもきっとそうです。

だから、まずは不審者ではないこと、怖くないこと、そしてあわよくば心地いいことしてくれる人と認識してもらうのが第一目標でした。




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