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真によきものを見極める  新見正則


貧乏な子ども時代、僕が「とうちゃんとかあちゃんに、なにかあったらどうすればいいの?」と母に尋ねると、決まって「寺に行けばいい」と言われました。その寺の候補のひとつが、福岡県の久留米近郊にあったお寺でした。

尊敬する師からいただいた言葉

母はそこの住職や、住職の奥様と昔からご縁があったようです。そのお寺には国武自然という無宗派のお坊さんもときどき来られ、僕も久留米にあった国武自然先生のご自宅を母と訪問していました。国武自然先生は僕のことをいつも気にかけてくれていて、僕が現役で私立大学の医学部に受かったとき、でも浪人をして国立大学を目指したいと相談に伺った時に、「1年でも早く一人前になるのも悪くない選択肢ですよ」とご指導頂きました。しかし、僕はそのお言葉に反して浪人して、国立大学の医学部と慶應義塾大学の医学部に受かり、最終的に慶應義塾大学へ入学しました。そしてお礼に伺った時に頂いた、お茶碗とその箱に次のように書かれていました。

 1980年12月8日

  「古きもの必ずしもよきにあらず、
   新しきもの必ずしもよきにあらず、
   よきものがよきなり」

    と我が畏友迦洞無坪氏に教えらる。
    我一生の宝句に育てられ今日に至る。
    若き友、新見正則君に句と共に贈る。

迦洞無坪さんは広島の生野島にいらした陶芸家と聞いています。国武自然先生が迦洞無坪さんから頂いた言葉を僕に贈ってくれた形になっています。国武自然先生は坊主であったと同時に、洋画家であった坂本繁二郎先生のお弟子さんでもあったそうです。あるとき絵画も頂戴しました。

僕にこの言葉をくださった翌年、国分自然先生は残念なことに交通事故で他界されました。物心ついてから、20歳を過ぎるまで僕の人生の師でした。この言葉は僕の座右の銘としてその後も僕の人生に影響を与え続けています。

伝統と未来が一緒に存在する場所

オックスフォードでのつらい留学中も、「古きもの必ずしもよきにあらず、新しきもの必ずしもよきにあらず、よきものがよきなり」と心で唱えていました。オックスフォードは歴史ある大学群ですが、そんな古さのなかにいつも新しさが加えられています。この意味でもオックスフォードは僕の原点であり、本当に学問の聖地でした。

最新医学とトラディショナルな知恵の両方を活かす

オックスフォードから帰国後、本邦初の大学病院でのセカンドオピニオンを保険診療で行いました。西洋医学で治療する方法がないとき、漢方にたどりついたのも、この言葉のお陰でした。

思い込む前に立ち止まってみよう

漢方医には、古きものがよいと思い込んでいる人がいます。歴史ある古典に処方の原典を求め、処方選択の理由を遠い過去に求めています。現代の生薬と昔の生薬が同一であったという証拠もないのに、過去にだけ根拠を求めるという考え方には、今でも抵抗があります。漢方は数千年の歴史のうえに成り立っており、西洋医学のように日進月歩の勢いでは進歩しないので、僕が書いたたくさんの書籍が簡単には古くなりません。この点は本当にありがたいことですよね。

僕も実は新しいものが大好き

西洋医は新しいものが好きです。サイエンティストであり西洋医でもある僕は、実は新しいもの好きです。その方が進歩や進化を感じるからです。しかし、西洋医学関係の書籍は遅くても数年、早ければ1年で古くなります。そんな進歩のスピードは魅力的ですが、しっかりついていくためには相当の勉強が必要です。

単にあるだけでは「よきもの」にはなれない

この言葉は、人にも、会社や組織にも通じます。年長者が必ずしも偉いわけではなく、若い人が実は偉いわけでもなく、勉強している人が偉いのでしょう。会社や組織も、歴史ある会社が必ずしもよいのではなく、新しいものがよいのではなく、よいものがよいのです。

これからもそんな視点を大切に生きていきますよ。国武自然先生はいまでも僕の心の師なのです。

明日の夜21時はYouTubeライブ漢方Q&A!
漢方の本はいろいろあるけれど、
早くマスターしたいなら新見先生と勉強するのが一番ですよー! 
勉強して疑問を見つけたらYouTubeで質問して下さいネ

がん患者さんのサポートにも漢方が使えます
古くならないから1冊勉強すればずっと使える知識です


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