3つのレジリエンス 新見正則
ストレスからは逃げられない
僕たちはストレスの中で生きています。僕たちの身体や心に悪影響を与えるものをストレスとよびます。命に関わるストレスからは逃げる必要がありますが、命に関わらないストレスであれば、それに耐えてみるのも大切なことです。ストレスから逃げ回ってばかりいては、ストレスに強い身体と心はできません。
レジリエンスはストレスに対抗できる力
ストレスと戦うためにレジリエンス(Resilience)が必要です。レジリエンスは回復力、復元力といった意味です。僕にはどうもしっくりきません。僕のイメージは「健康を維持するためにレジリエンスを鍛える」という感じです。
レジリエンスには3つあると思います。
①肉体的なレジリエンス(Physical Resilience)、
②精神的なレジリエンス(Psychological Resilience)、
③霊的なレジリエンス(Spiritual Resilience)です。
暑さに慣れる(身体的レジリエンス)
身体的なレジリエンスでは「暑熱馴化」がわかりやすいです。暑さに堪える身体能力です。暑さから逃げ回っていては暑熱馴化を鍛えることができません。徐々に暑さに慣れることで鍛えられます。
また、持久系のランニングなども、(正しく)鍛えれば鍛えるほど、走れる距離が伸びます。感染症も同様で、感染症に罹って復活すると免疫力が鍛えられます。ですから、インフルエンザでもコロナウイルスでも不顕性感染(感染するが発症しない)を繰り返すと、重篤な状態を避けられます。
心の強さ(精神的レジリエンス)
精神的レジリエンスも大切です。つまり、心の強さです。ハラスメントから逃げ回っているだけではハラスメントに対応できる強い心にはなりません。適度のハラスメントなら心のレジリエンスを高めているのだと理解して楽しめばいいのです。すると心のレジリエンスは鍛えられます。うつ病になるもの心のレジリエンスが貧弱だからです。子どもの頃から、そして大人になっても常に心のレジリエンスを鍛える習慣が大切です。
生きる意味、真なる苦しみ(霊的なレジリエンス)
霊的なレジリエンスは身体的レジリエンスに内包されることもありますが、別に考えるとわかりやすいです。がんの終末期(西洋医学的治療が終わった後)を迎えた時に、スピリチュアルペインという状態になります。自分の人生の意味や目的、自己の存在価値に対する苦痛のことです。これも霊的なレジリエンスを鍛えると軽くなります。霊的なレジリエンスを鍛える方法のひとつは、感謝と祈りです。
霊的なレジリエンスと延命の関係
最近は腫瘍精神科という領域が注目を集めています。終末期を迎えた患者さんや家族の精神的ケアを目的にしています。心安らかに死に対応しようという作戦です。
僕の経験では、多数のがん患者さんを治療していると、霊的なレジリエンスが鍛えられている方は、終末期を迎えてもなぜか長生きです。霊的なレジリエンスが弱い方、特に終末期では治療の甲斐なく亡くなることを多く経験します。
こんな不思議な経験は、腫瘍精神科の専門家も同じように経験するのでしょうか。そして、霊的なレジリエンスが延命につながる機序(免疫力を上げる機序など)にとても興味があります。
身体的、精神的、そして霊的なレジリエンスの鍛え方はいろいろです。自分でレジリエンスというキーワードを理解して、日々レジリエンスを鍛えてください。それがご自身の健康創造に必ずつながります。