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最近読んだ8冊

最近読んだ8冊をさささっとご紹介!

① この世の喜びよ

芥川賞受賞作をいまさら。この本のすごいところは、"マジで傷をえぐる"コンプレックス描写だと思う。「小学生のときうがいをしていたら、『お前つば糸ひいてるじゃん』と男子にいわれて、たしかにほかの人はそんなことはなかった。以降人がみているところでは口をゆすがなくなった」とか、「小学生のころ、服の生乾きの匂いがコンプレックスだった」とかとか。ちょうど嫌〜なところを突いてくる。しかも、登場人物の女性にちゃんと名前があるのに、二人称で「あなた」と呼んでくるから「私のこと?」と読者が引っかかってしまうテクニック(?)も憎い。なんだこのテクニック……

② みかんとひよどり

最近、最寄りの図書館のWEBサイトで電子書籍が読めることを知って、夜な夜なのぞいている。文学のジャンルもそこそこ充実しているし、前々から気になっていた『みかんとひよどり』もあるではないか。……というわけで読んでみた。ジビエ料理が美味しそう〜という描写はもちろんたっぷりあるんだけど、それ以上に自然と調和して生きる人間からにじむ人生の真理が描かれている。今となってはスマホとネットがない人生は考えられない。けど、私だって、歩もうと思えば、今からそれらすべてを手放して"自然と調和する人生"を歩めるのだよな……(←歩まなさそう〜)

③ きみは赤ちゃん

川上未映子の妊娠・出産エッセイ。現在妊娠7か月の私、鬼のように訪れる普遍的な悩みや共感ポイントにうんうん頷きながら読んだ(5年以上前の本なので参考にならないところもあるけど)。そもそも川上未映子は小説とか読むかぎり絶対的にペシミストだし(偏見)、だから好きなのだけど、私を含めてそういう人が子どもを産み育てたくなる心理って何なんだろう……という素朴な疑問があった。結局この本にも答えはなかったけど、心にバーンとくる文章が見つかったので何となく腹落ちした。姉さん、一生ついてきます……という気持ち。

④ 自分で名付ける

こちらは松田青子の妊娠・出産エッセイ。川上未映子よりもより怒っている!気持ちいいくらいに怒っている!未婚で母になる選択をした松田さんだから、パートナーとの関係が"システム上"ひとすじなわではいかないこともあるみたい。でも逆に自由度が高くて快適そうでもある。タイトルのとおり「自分が産みたいから産む。だから自分で名前を付ける」というすごくシンプルなメッセージなのだけど、それが許されないように感じる社会だからこそガンガンに響くのであった……

⑤ 香港少年燃ゆ

とくに2018年〜2021年あたり、香港のデモが激化してた気がする(活動家の女の子が捕まってショックだったな……)。この本は、そんな過激なデモに参加する一人の少年を追いかけた日本人ライターのルポ。デモに参加する香港人はみんな民主主義を誇りに思っている。でも香港の民主主義の土台を築いたのはイギリスの占領下時代で、香港のためというよりはイギリスのための戦略だったそう。悲しい歴史のなかで育まれてきた誇りをつむいで闘う少年のピュアな危うさよ……

⑥ 神と黒蟹県

架空の「黒蟹県」に異動になったOLをはじめとした黒蟹県近隣に住む人たちと、住人に擬態した神様(!)がたわむれる話。なにこの不思議で癒やされる世界観。私も超絶田舎の出身だからわかるけど、田舎にはときどき都会人には絶対に醸しだせない"おもしろオーラ"を醸しだす人が住んでいて、ホントに神様(や、悪魔のような何か)が擬態してるんじゃないか?と疑いたくなるときがある。フィクションなのに、そういうリアルなおかしみがたくさん詰まっている本だった。

⑦ 他人の家

部屋のなかでお化けに見られてる気がするとき、どうしてます?? 私は「ハッ!!」とか大きい声を出してみて、心の塩を盛ってます。表題のお話の主人公・シヨンは、「どうせ地球は巨大な共同墓地にすぎないのだから怖がることはない」と考えるらしい。地球上のどこにだって誰かしらの骨は埋まっているんだから、誰かしらの魂の上を巡っていて当然!という考えかた。ある種の諦観に救われるのは日韓共通なんだな……このほかの短編も、社会問題をはらみつつ人間の不気味さが出てて最高だった。韓国文学、中毒性あるなあ。

⑧ 体はゆく

私の体にはできないことが多い。運動もできない。ピアノも弾けない。K-POPのダンスを真似しようと思うと、「この体の動き一体どうなってるの!?」とパニックになってしまう。この本では、そういう「できないこと」が、テクノロジーの力で「できる」かもしれないと言う。体を強制的に「できる」状態にして脳に「こうやるのか!」とわからせて「できる感覚」を培う技術がそれぞれの分野で研究されているそうだ(実際、腕に障害があって挙がらない人が腕を挙げられるようになった事例もあるのだとか)。「できない」尊さもあるので、「できる」が必ずしもいいことではないけど……未知の可能性をひらくという意味では、おもしろくて希望のある研究だと思う!すげ〜時代だ!!

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