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第70期王将戦に向けてー藤井聡太三冠への道ー

今月22日より開催される、第70期王将戦の挑戦者を決める挑戦者決定リーグ。ここを勝ち抜けば、来年1月から開催予定の第70期王将戦七番勝負へと進み、王将位を持つ渡辺明名人へ挑戦できる。

勿論、王将戦の挑戦者となり、渡辺明名人との七番勝負を制し、年度内に藤井聡太三冠、そして九段昇段を見たい。但し、それは並大抵の事ではなく至難なのは百も承知である。そこで、藤井聡太二冠が王将位を獲得し、三冠になる道とはどのようなものかを探ってみる。

①まず管見の限り、同年に棋聖・王位をW挑戦・獲得した棋士は、豊島将之竜王と羽生善治九段しかいない。

羽生善治九段が獲得した1993年当時、竜王・王座・棋王の三冠を保持した上で棋聖・王位にW挑戦・獲得し、五冠となっている。前人未踏の七冠独占となるその道中であるが、その恐ろしさたるや、筆舌に尽くし難い。

一方、豊島将之竜王は2018年当時、羽生善治竜王・菅井竜也王位にW挑戦・獲得し二冠となっている。つまり、現藤井聡太二冠に最も似ている状況と言っていい。無論、当時の豊島将之二冠は順位戦もA級であり、名人挑戦へ向けて邁進中なので、全く同じというわけではない。

ちなみに豊島将之二冠はこの後、第68期王将戦挑戦者決定リーグ戦に前期の挑戦敗退者として参戦している。その時の成績は3勝3敗と再度の挑戦とはならず、残留ギリギリの4位で終わった。但し、リーグ最終戦まで3勝2敗であり、当時の渡辺明棋王に勝っていればプレーオフ進出の望みもあったわけで、最終戦の勝敗が分かるまで結果は分からなかった。

この事から、棋聖・王位を獲得した豊島将之二冠であっても、当時の王将戦挑戦者決定リーグ戦では惜しい結果となったのである。では次に藤井聡太二冠が、王将戦挑戦者決定リーグ戦を勝ち抜くための条件を見てみる。

②王将戦挑戦者決定リーグ戦は規定が幾度か変更しており、現行に近い第2期・第31期~第69期を見てみる。その中、6勝全勝して挑戦できなかった例は無論ない。次に、5勝1敗で挑戦できず、プレーオフにも進出できなかった例が1度ある。それは第37期王将戦挑戦者決定リーグ戦で南芳一八段が全勝し、中原誠名人が5勝1敗で終わった例である。その内容は、リーグ最終戦で直接対決となるまでお互い全勝したので、必然的に勝った方が王将戦に挑戦できる図式であった。

他、4勝2敗となると挑戦できなかった例は多いが、第43期以降の規定(勝敗が同数の場合のプレーオフ進出は上位者2名の直接対決に変更)での例を見る。するとこの規定にかかり、4勝2敗のトップ同数にもかかわらず、プレーオフ進出にできなかったのは管見の限り、第43期の郷田真隆五段・第46期の丸山忠久六段・第52期の森内俊之名人・第53期の谷川浩司王位・第68期の広瀬章人竜王の5名である。

この5名に共通していること、それは皆二次予選からの勝ち上がりによって挑戦者決定リーグ戦に参戦していることである。つまり、データ上ではあるが、藤井聡太二冠がこのリーグ戦を勝ち抜くためには4勝2敗が少なくとも必要となるのである。

昨年の挑戦者決定リーグ戦でも4勝2敗であり、今年は更なる進化を見せてくれると期待は過分にしているが、他の6名も実力者ばかり、そう楽観視できるものでないだろう。それでも、藤井聡太二冠なら勝ち抜き、年明けのタイトル戦へと駒を進め、渡辺明名人に挑戦し、王将位を奪取してくれるに違いない、とドキムネさせながらリーグ戦開始を楽しみに待っている。

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