新宿で同居してるADHD2人が熱海秘宝館でテレワークした話(後編)
やっと曲がり道に入れた。ちょっと進むと短いトンネルがあり、トンネルを抜けると綺麗な海と熱海の街が一望できた。
仲介者は「カフェはどこ!?」「テレワークできない!」と騒いでいて「秘宝館でやればいい」と返すと「集中できない!」とか言ってた。
「秘宝館行ってらっしゃい」と元気なおじいちゃんの誘導で狭い駐車場に車を停め、入場料1700円を払ってついに秘宝館入場。
いきなり昭和のエロオヤジの悪ふざけみたいな亀の人形があり、中も昭和のノリのエロマネキンやエロ映像だらけだった。
入ってすぐのところにおみくじがあった。100円を入れると鳩時計みたいにドアが開き、等身大の巫女さんのマネキンが現れた。手に持った茶色の台に丸まったおみくじを乗せていた。「こんなん出ました〜」と言って台をこちらに傾けたが、おみくじは台の角に引っかかり落ちてこなかった。
巫女さんはおみくじを持ったまま回れ右して去って行った。
「今の何?」
「多分、おみくじが落ちてくる予定だったけど引っかかって落ちてこなかった」
俺は100円払って丸まったおみくじを見た。回れ右した時にマネキンの尻が見えたがそれすら腹立つ。
あとで店員に100円もらった。
次は壁に書かれたメガネの絵。このレンズ部分を覗くとエロい映像が見えると言うもの。覗く度に内容が変わるので俺は全部見たかったが、ADは少し覗いてどっか行った。まだ意識はテレワーク。
その後しばらく1人で秘宝館を楽しんだ。
ソファに座ると目の前の鏡にエロい映像が映ったり。
乳首を押すとくだらないアニメーション(ビーチに寝そべっている女性マネキンが「エッチな視線を感じるわ〜」とか言うとパンツがめくれてマネキンの股間部分が見える)が始まったり。
意外と若いカップルが多くて1人で来てる人は見当たらなかった。皆ささっと通る中、1人で乳首を押しながらじっくり進んだ。
お1人様のサングラスをかけたインド系の男(以下:ナムル)が現れた。ナムルもじっくり見たい派だからか進むペースが合って、2人で秘宝館に来ているみたいになった。
曇りガラスの一部が普通のガラスになっていて、そこから中を覗ける展示があった。中にはTHE・時代劇な髪型をした女性マネキンが裸で露天風呂に入っていた。しばらく覗いていると、突然俺の目に向かって勢いよく放水され
「うおっ!?」
と声を出してのけぞってしまった。ガラス越しだからもちろん濡れないし、誰かと見ていればちょっとふざけたり笑ったりできる。しかし1人で覗いていた俺は、くだらないと侮ってたマネキンにしてやられたような恥ずかしさと、声を出してしまった自分が信じられない気持ちになった。後にナムルも同じようにのけぞっていたが声は出してなかった。
ちょっとしたゲームコーナーもあった。100円の射的コーナー、的に小銭を投げるゲーム、100円で動く卑猥なロデオマシン。
射的は卑猥じゃない普通の銃。スカートを履いて尻を突き出した2体のマネキンの下に的がある。的を射抜くとスカートがふわっと浮き上がりマネキンの尻が見えると言う仕様。2人分の銃があったがナムルを誘うわけにもいかず1人で遊んだ。
泉の中に神様が丸太を抱えて立っている。丸太はよく見ずともチ○コである。泉のふちにある的に小銭を投げて当てると、泉が光るとともに丸太が放尿した。ADが帰ってきたので放尿を見せてあげようと思い再び小銭を投げた。的から大きく外れたが泉は光り輝き丸太が放尿した。
「当たり判定広っ。車の鍵持ってる?」
鍵を手にしたADはどっか行った。冒険者は1人でロデオに乗った。とんだじゃじゃ馬である。
ハンドルを回してマリリンモンローのマネキンのスカートを浮かせたり。モナリザの絵画の前で自分が一回転するとモナリザが裸になってたり。土産コーナーのクレーンゲームでは熱海秘宝館の文字が入ったライターを4本取った。そして出口。そこにはロープウェイがあった。どうやら熱海駅から10分車で走ればロープウェイでここまで来れたようだ。早く言え。
秘宝館の屋上はひらけた青空で「熱海」と検索したらトップに出てくる絶景そのままだった。屋上のテラス席では我が相方ADがPCを開いてテレワークしていた。
話しかけると、大きく伸びをしながら「全然進んでねー!!!」とか「もう出ないと間に合わない!!!」とか言ってるから急いでプリクラを撮った(?)。ナムルに頼まれ熱海の絶景をバックにナムルを撮影した。
帰りの運転は俺。ADは車に乗り込まず、助手席のドアに手をかけたまま、元気な誘導のおじいちゃんに「この辺に、オススメの、美味しいご飯、食べれるお店、あります?」とか聞いていた。急いでなかったのか。怖い。
帰りの車内でADはPCを開いたままぐったりしていた。夕陽で赤く染まり始めた海には目もくれず、虚ろになりながら「仕事しなきゃ」とか言ってた。
目覚まし代わりにラジオ配信してた。途中、高速で事故があり、何十キロも渋滞と表示され、別ルートに変更。新ルートをスマホで検索したため、車のナビとスマホのナビが正反対の道を案内して車内は大混乱。特に高速の分岐は絶対に間違えられないためギリギリまでスマホの画面を拡大していた。ETCカードがなかったため、料金所が出現するたびに緑(一般用)を探し、いちいち現金を支払わないといけない、誰がどれだけ払ったか覚えていないといけない。想定外の事態に弱いADHD2人はストレスを溜めていた。緑を求めて東京を出てきたのに。
運転交代。目的の分岐ルートに入り安心していたら、突如フロントガラスが曇り始め、仲介者が「前が見えない!!!」「死ぬ!!!」とパニックに陥っていた。俺も慌てて暖房をいじったが、なんとなくついたので消し方がわからずパニックになった。慌てて窓を開けると曇りが晴れていき、命の危機を脱した。
その後サービスエリアで一旦休憩、車から降りようとすると、ADが「助手席のシートにガムがついてる」と言った。どうやら眠気覚ましに噛んだガムがなぜかお尻の下に潜り込んだようで、運転席にも同様にガムがへばりついてた。おしぼりを買って必死でこそぐも取れず「いくら払うんだろう」「もう今日車返すのは諦めよう」と仲介者は目に涙を浮かべていた。運転を交代した。
助手席から「ゆっくりでいいから」「落ち着いて」「人だけは轢かないで」と言われながら運転し、なんとか新宿に到着。レンタカーも30分くらい余裕を持って返せた。シートのガムも「全然大丈夫です」と言ってくれて、ゴミも車内に置いたままで大丈夫とのこと、ガソリンスタンドに寄るのを失念していたがガソリン代もフロントで精算してくれた。「至れり尽くせり」と検索したらトップに出てくる景色そのままだった
テレワーク旅行が終わった。
帰宅後に支出を調べたら、朝食1500×2円、レンタカー7000円、有料道路7000円、ガソリン2500円、昼食1700×2円、秘宝館1700×2円、その他諸々で二人合わせて27000円だった。車関係高え。これが秘宝館最寄りの熱海駅まで電車で行けば片道2時間半で1500×2円、合計二人で15000円ぐらいで済んだ。
次は計画を立てて、おすすめの温泉行って神社行って飯食べて水飲んで、2人じゃなく3人で、秘宝館を見て回ろう。
ADHDの日常はラジオで配信してます↓↓↓↓