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「きく」という言葉が好きな理由。~阿部暁子さん『鎌倉香房メモリーズ』シリーズ~
こんにちは。桜小路いをりです。
「きく」という言葉が好きです。
私のnoteでは、音楽や、誰かのお話を「きく」というときには「聴く」という漢字を使っています。
その理由は、「心」と「目」という字が入っているからです。
目で、耳で、心で、「聴く」。
音楽も、誰かの話も、そのスタンスで「聴いて」いるので、この字を使っています。
でも、私は「聴く」でも「聞く」でも、とにかく「きく」という言葉自体が好きです。
そのきっかけは、この本でした。
阿部暁子さんの『鎌倉香房メモリーズ』シリーズ。
主人公は、祖母が営むお香のお店「花月香房」を手伝っている高校生の香乃ちゃん。彼女は、人の心の動きを香りで感じることができる能力を持っています。
香乃ちゃんの淡い恋模様を描きながら、「香り」を鍵に日常の謎を解いていくミステリー小説シリーズです。
シリーズは全5巻。ほんわかとした雰囲気が漂っているので、温かな気持ちで読み進めることができます。
ページから、ふんわりと優しい香りを感じるような作品です。
このシリーズの中には、「香道」が出てきます。
簡単に言うと、お香を和歌などの文学作品に絡ませながら楽しむ芸道です。
着物などの柄として使われている「源氏香」も、もとは香道から生まれたものだったりします。
そして、香道では、香りを嗅ぐことを「聞く」といいます。
初めて知ったとき、すごく素敵な表現だなと、胸がいっぱいになったことを覚えています。
「香り」そのものがもつ物語や声に、ゆっくりと耳を傾けて、その「香り」と一対一で向き合う。
そんな姿勢が垣間見える表現ではないでしょうか。
「聞く」って、たぶんすごく難しいことなのだと思います。
ただ音として認識して、耳に入れるだけではなくて、その音の意味を理解して、さらに自分の心の中で消化しなければならない。
そして、「聞く」ことでしか、相手のことが分からないこともあって。
空気を震わせる音を言葉として受け取ることは、空気中に広がる香りをたしなむことにも通じるような気がします。
もちろん、『鎌倉香房メモリーズ』の香乃ちゃんのように、香りで人の心を知ることはできないけれど。
「きく」ことでなら、人の心の揺れに想いを巡らせられるから。
「きく」ことは、これからも好きでいたいし、大切にしていきたいです。
今回お借りした見出し画像は、光にふんわりと包まれたような、お花の写真です。やわらかな雰囲気が今回ご紹介した本のイメージに重なり、選ばせていただきました。
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