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鋸山に行って来たよ-33

これまでのお話


せっかく眠気に襲われたのに私の気が貼っていたせいか、良い眠りとはなかなかいかない。浅い意識で彷徨っていると女性らしいちょっとよからぬ、というか私とは波長が異なるエネルギーが布団の横に立っていることに気づいた。
こういう時、天然石を持っているとバリアを張れるのだけど残念ながら今は持っていない。だけどイメージだけでも助けになるかな。

魔除けとして利用されるアメジストを周辺に並べてもなんだか落ち着かない。ローズクォーツに変えると安定はしたけどバリアにはならない。そこで内側に水晶、ローズクォーツ、アメジストを並べて、外側を水晶で包み込んだらやっと安定した空気へと変わった。

疲労した体は眠りに就いたけど頭はどうしても働いてしまう。
トイレに行きたいと起きたのは朝4時半。
気づかぬ間に丑三つ時(深夜2時-2時半)が過ぎたことを知って気が休まるも、外の風が窓を揺らしてヒューヒュー、ガタガタ、音を立てている。とりあえずもう少し寝よう。


6時55分、どうにかそれなりの睡眠はとれたものの体は重たい。
今日は東京に帰るだけ。
10時にチェックアウトを済ませ、11時までお土産などみながら時間つぶししたら海が見えるレストラン、ザ・フィッシュで最後に海鮮を堪能して帰るだけ。
焦ることないと目覚ましを8時にかけ直してもう一度目を瞑る。

7時40分、パチクリ。急に目が覚めた。
布団から出て目覚めているであうたぁに声をかける。

「風の音すごかったね」

「うん」

今もその音は絶えない。

電車動くかな。

寝ぼけながらもそんなことが頭をよぎった。

「うまく寝られた?私は昨日よりかは良かったけど、熟睡は出来なかった」

「温度調節が難しくて何度も目が覚めたよ」

プロフェッショナルスリーパーであるたぁは一度寝たら朝まで起きないが基本。

「お風呂、行くけどどうする」

私は懲りずに最後まで温泉を楽しみたい。

「ぼくはいい」

「布団の中から動画でも見る?」

「うん」

布団の中でうずくまるたぁにiPadを渡すと嬉しそうにほほ笑む。睡眠中の温もりを宿した場所でダラダラしたい時ってあるよね。


浴衣を纏いお風呂へ向かうと今日も私一人。
夜にはいつも何かを体験しただけにちょっとした怖さを感じたけど、朝の日差しに照らされた浴室はまるで浄化されているように異なるエネルギーが感じられた。

何度もお世話になったお風呂もこれが最後。色々あったけど体を暖め癒してもらったことには変わりない。最後にお礼を伝えておこう。

だけど今日もシャワーからお湯が出ない。

もしかしたら使っている場所が悪いのかも。

すべて試してみたけど、ぬるいお湯にすら出てこなかった。仕方がないのでお風呂のお湯で体と頭を洗い、もう一度お風呂に浸かるとせっかちな頭はまた何かを考え始める。

昼までこっちにいたら家に着く時は16時回っているよね。帰ったらやりたいこといっぱいあるんだけど。

急に気持ちに変化が生まれ、部屋に戻ってたぁに尋ねる。

「ねぇ。ランチここで食べないで今から帰ってもいい?」

「いいよ」

スケジュールを自分で決めない分、文句も言わないでくれるのは非常にありがたい。
お土産を買えずに、今日食べようと楽しみしていたアジフライ定食がいただけないのは心残りだけど、それ以上に「帰りたい」と思う気持ちが勝っているのでそれに従うことにしよう。

現在、8時半前。
電車の時間を調べると9時19分の電車に乗れば正午には家に戻れそうだ。

予定が決まれた早速準備に取り掛かろう。

使ったシーツ、浴衣、タオルは玄関ホールの隅にまとめて置き、布団を畳んで、荷物をすべてまとめ、二泊三日お世話になったお部屋にお礼を告げる。
なんといってもこの宿にはガーディアンエネルギーさんが宿られているんだから。

9時前、予定よりもちょっと早めに部屋を出る。
朝からスタッフのおばちゃんたちはよく働いている。

「今日も晴れていていいですね」

「そうですね」

すごく風が強いですけど。は言わなかった。
あっ。スタッフさん、昨朝も同じ言葉かけてくれたな。


「鋸山周辺に外国の友人やたぁの両親、連れてきたら喜ぶと思う」

「うちの親?」

「うん」

「喜ばないよ。日本寺だけでも上り下りが激しいし、新鮮な魚の良さもわかるかわからない」

たぁのママはともかくお父さんは歩くのが嫌いだ。膝が悪くとかじゃなく、健康だけどハイキングとか歩くのが好きじゃない。
それに生の魚というものに食べられていないの事実なんだけど。

「ボブ(たぁの弟)は?」
彼はモダン料理が好きだし、フィッシングもやるからね。

「あー。だけど彼もハイキング嫌い。室内トレーニング派だし」

確かに。彼の筋肉ムキムキはトレーニングマシーンあってこそのものだからね。

たぁファミリーには不向きでも、きっと体力もあって動くのが大好きな合気道仲間たちには喜んでもらえる可能性大だろう。

周辺には他にもいろいろな見所あるから私たちはまた来よう。アジフライ食べたいし。

浜金谷駅に着いてロープウェイの案内を見てびっくり。

「今日、ロープウェイ運転休止だって。私たちラッキーだよ。雨と強風の間にハイキング出来たんだ」

「本当だね」

ホームに向かう陸橋から海を眺めると昨日よりも雲が多く、白波を立てる海は荒い。

旅行の前日、関東地方では結構な雨が降っていたのに、当日からお空はぴーかん晴れてくれた。
風など強く感じられなかった昨日でさえ地獄覗きの崖では強風に見舞われたのに、陸橋の高さですらビュービュー風の音に包まれて髪の毛が四方に飛んでいる今、切り立った崖上では二割、いやっ三割増しの恐怖となるだろう。


うひゃぁ~、くわばらくわばら。


無空真実の電子書籍です。よろしくお願いします。




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