鋸山に行って来たよ-29
これまでのお話
面白みに欠けた補正道だけど木の根や石ころはないから景色を見ながら歩を進める。
かわいいね。
緑色の蕾はニョっと上を向き、葉はスカートのように斜め下へと伸びて、社交界で人目を引きそうなドレスみたい。
昨日も楽しませてくれたすずらんのようなお花がリンリンと鈴を鳴らすように応援してくれている。
白ではなく薄黄緑なのがなんとも印象的だ。
歩き続ければどんなに楽しくても、どんなに辛くても、文句を言っても目的地は必ず近づく。それがハイキングのいいところ。
保田駅まで2.3㎞の看板が見えてきた。同じ方向に道の駅、小学校があることも教えてくれている。となれば電車に間に合わなくとも道の駅で時間つぶし出来るかも。良い情報ゲット。
高速道路が見えた頃、乾いた骨が落ちていた。
幸い事件に巻き込まれそうな人間のものではなさそうだけど、サンサン太陽に照らされる中、ちょっと、いやっ。結構、不気味。
他の木に巻き付きながら伸びる蔓の木、発見。
ちょっと絞めつけ過ぎでしょ。
その木に頼って伸びているんだからもっとお手柔らかにお願いします。
いくつかの家が見えてきた頃、道端に咲く妖精のようなお花。
こっちは手を上へと伸ばし、ポージングするモダンダンスの一場面のようだね。
久しぶりにタンポポを目にして、庭先に咲く桜も見事。
なんだ、補正道路も面白いじゃないか。
春の暖かさを感じて喜んでいるのは人間だけじゃないんだね。それを視界を通して楽しませてもらいました。
住宅地を歩いていたら道は二手に分かれた。案内板などなく、どっちに行けばよいのかわからないよ。
こんな時は・・・・・・3DMAP。
ハイキングトレイルを確かめたり、山の高低差を確認するために活躍するアプリケーションだけど、道に迷った時にも最高のアイテムだ。WIFIが繋がらない時は特にね。
今回の旅で唯一道に迷ったのが住宅街だけだったのは幸いだったな。
マップを確認したたぁの指示の元、左に曲がると線路が見えてきた。
駅まで後少しだ。
生け垣なのかな、コレ?
生きてないかもしれないけど。
確かに中には入りにくいけど、家は丸見えなんだよね。
アート作品ですよ、アート。
あっ、そうなんだ。
アートと言えばなんでもアートになってしまう昨今。
芸術とは何だろうか。
まぁ、いいや。
線路下に流れる川は生活水がそのまま流れているんじゃないかと思うほどに汚い。だけど近くを通っても匂いはなかった。
ポジティブスマイル三人衆に見守られ、パワーをもらう。
異次元ポケットを持っているドラえもんさんとは林道が補正道路になった時に会いたかったけど、ここで会えても嬉しいわ。
その先にはウィンクするドラえもんをソフトスマイルのダブルアンパンマンで挟んだ三兄弟もいた。
地味な道路にオレンジと赤のカラフル消火栓ホール。これなら緊急にすぐに見つかりますね。
真面目真面目と称される日本人だけど、ちょっとしたところに遊び心があって、クスっとさせてくれるセンスがたまらなく好きです。
15時18分、約6時間のハイキングを終えて保田駅に到着。
目標としていた電車に乗るには15分足りなかった。
次の電車は15時56分発。三十分くらい時間つぶししないといけないけど途中に道の駅はなかったな。
「足が疲れてるからベンチに座ろうよ」
近くの案内所へと行こうとした私にたぁが言う。
「わかった」
休憩所に行くと缶コーヒー片手に工事服を着たおじさんが座っている。
私たちと空間を共にするのが嫌だったのか出たり入ったりした後、改札へと消えていった。
無空真実の電子書籍です。よろしくお願いします。
〈お知らせ〉
来週、四カ月過ごしたニュージーランドから日本へと戻ります。しばらく生活を整える雑用に追われるので翌木曜日のアップはお休みします。4月にまたお会いしましょう。