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家族と一緒にネパール旅行-09

タクシーを降りた場所まで歩いて戻るとたぁは言います。

「宿からここまでそう遠くなかったよ」

彼曰く、道もそう入り組んでなく、大通りをまっすぐ進んでいたとのこと。

「それなら歩こうか」

そのほうが町をゆっくりと見ることができるし。

歩くのが好きじゃないたぁパパの顔は曇りますが、ママからも賛同を得たので、私の両親から借りてきたもう10年くらい前のガイドブックに記された地図を片手にどこに向かっていけばいいのか力を合わせて解明中。

今ではズレもほとんどなくなったグーグルマップ先生さえあれば、観光客でも迷うこと少なく目的地に向かえる時代ですが、たった15年、されど15年、状況は異なります。

ガイドブックを縦に横に動かしながら、みんなで頭を痛めていると地元の人が話しかけてきました。

おっ、また何か売りつけるつもりか。

彼は言います。

「どこに行きたいの?」

おっ、道を知らない私たちを騙そうとしているのか。

昨夜からお金問題が付きまとっている私たちの警戒心はとっても敏感です。

「タメルエリア」

宿の名前を言っても伝わらないと思い地区の名前を告げると、彼は交差点を挟んだ先の左斜めの道を指さします。

「タメルエリアはあっち?」

「うん、そうだよ」

「歩いて行ける?」

「うん、30分もかからないよ」

「ありがとう」

「気を付けてね」

そして彼は去ってきました。


おぉぉぉぉぉぉー。


私たちの目は見開きます。


道すがら 出会ったあなたは 導きの人


経験から得た知恵が自分たちを守ろうと疑ってしまったことは仕方がないのですが、それでも心が痛みます。

そうだよね みんな 良心は持っている


信号を渡り彼が教えてくれた道を進むと、そこは工芸品や補修店が立ち並ぶ地元密着型の生活ロードでした。
私たちが歩きながら彼らを眺めているせいで目が合うことは多いですが、何かを売りつけようとする気配は一切ありません。

観光地からほんのちょっと入っただけで、こんなに違う景色が見られるなんて。

やっぱり、自分の足で歩いて現地を知るって大切っ!


途中、私が購入した石の曼荼羅を作成しているお店がありました。

「のん、あなたの真似をしていい?」

たぁママは人が持っているものを欲する習性があります。

「もちろん」

そして彼女は太陽が大きく描かれた壁かけを購入しました。

ずっと進んでいくと別の寺院が見えてきて、タメル地区に到着したことを知ります。ここはすでにたぁ両親が知っている場所で無事、ホテルへと戻ってきました。


宿の中庭で休んでいると足とお腹に白と茶色の模様がある真っ黒な子犬が尾っぽを振りながら私たちの傍にやってきました。

元来、動物好きのたぁはすぐにその子に手を差し出し、撫でながらじゃれ合って遊び始めました。わんちゃんもすぐに彼に慣れて、写真を撮ろうとすると彼の下にお座りをするいい子。

すると宿のスタッフがやって来て、私たちに笑顔を送りながら犬を連れていってしまいました。
もしかしたらその子犬はここの宿のオーナーさんの子かもしれないし、宿で飼っている子かもしれません。もしくは誰かお客さんのわんちゃんで、私たちの邪魔にならないようにと連れて行ったのかもしれません。

それから数分後、

「キャゥーン」

犬の大きな叫び声が一声だけ聞こえました。

一瞬でたぁの顔は曇ります。

「あの子、食用だったんだ」

「えっ、なんで」

なんという発想。

「だってこの国の人はなんでも食べるでしょ」

それは中国の気がするけど。

「あの声は絶対に殺されたんだよ」

確かに鳴き声からしてポジティブな影響は受けられなかったけど、だからと言ってすぐに殺されたと理解するのもどうかと。

「多分、勝手に歩き回って探さないといけなくなったから怒られたんだよ」

「でもそんな声じゃない」

「それは、わからないんじゃん」

宿の人に真相を聞くこともできないし。

「そうだよね。そう思うのが一番だよね」

納得してくれた彼だけど顔が晴れることはありませんでした。



※2010年11月18-12月4日にたぁ両親とともに訪れたネパール旅行記です。



これまでのお話


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