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鋸山に行って来たよ-21
これまでのお話
道を戻り、反対へと行くとそこに千五百羅漢道の日牌堂があり、その向かいは広場になっていて苔を覆った石などが転がっている。
たくさん安置された石仏の多くに首がついていない。特に下段に置かれたものはほとんどいっていいほどない。
以前、インドに訪れた際、美術館に行くと首を落とされた石像が並び、理由はイスラム教徒との宗教戦争だと教えてもらった。
ここも同じなのかな。
![](https://assets.st-note.com/img/1674694212115-ZlfUipkyD6.jpg?width=1200)
「どうして仏さんの首がないの?」
純粋に訪ねてくるたぁに憶測で答えるのは控えようと小さな文字が並ぶパンフレットに目を通す。
「日本寺は同じ仏教でも時代の移り変わりで宗派が変わったみたい。宗派が変わるたびに前の石仏さんの首を切ったのかな?」
つい宗教戦争が頭に残り、そんなことを口走ってみたけど、もうちょいちゃんと説明を読んでみるとそこには答えがちゃんと載っていた。
「あぁ、明治維新の時に排仏棄釈(仏教を廃する)運動があって、その時に切られたみたい。今も修復しているみたいだよ」
後にサイトで調べてみたら、理由はそれだけではなさそう。詳しくはこちらをどうぞ。
首が繋がった石仏さんをよーく見てみると確かに接着されたような跡が見られる。
こういう歴史はちょっと残念だ。
宗教とは人を救うためにあるのに、くだらない争いや決め事が原因でそれを慕って来た人の思いを無視してまたはわざと背くように破壊してしまうなんて。
他宗教を認めない小さな心が今の略奪世界に繋がっているといっても過言ではないと思う。
石仏さんと木々に囲まれた広場で深呼吸する。
なんて気持ちが良い場所なんだ。
これから行く方向を決めようと地図を広げて気づいた。
地図って2Dだから高低差が分からずにここまで来てしまったけど、どうやら地図の下に行けば行くほど道を下るってことらしい。
ルートを目で追う。
ロープウェイの入り口から石仏を見ながらここまで下ってきて、その先は登り、そしてそのだいぶ下に大仏さんがいる。
「あっ、間違えたっ!」
その声を聴いて「何事か」と驚くたぁ。
「折角ロープウェイで上まで来たのに、大仏さん見るために別の入り口近くまで下って、それから百尺観音や地獄覗き見てハイキングを続けるためにまた階段上って山頂まで行かないといけないよ」
「あーぁ」
落胆の声は漏らしつつも、たぁは決して私を責めない。元々優しい彼だけど、青空の下、緑に囲まれながら歴史を学べるこの場所がさらに彼の心を広めてくれているのかもしれない。
他のグループが来たので場所を譲ろう。
光を求めてさまよう枝のように根が地面を覆うように這いつくばるそれがまたなんとも美しい。生きる力だよね。
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立っている石仏さんたちの首もない。ちょっと残酷に見えちゃう。
![](https://assets.st-note.com/img/1674694279364-atuoHDs6XQ.jpg?width=1200)
向こうからやってくる人をまるで眺めているかのような石仏さん。
![](https://assets.st-note.com/img/1674694288631-bLJetHvLcG.jpg?width=1200)
普通に生きていてもたまに見かけることのある表情、ここにもやっぱり生がある。
百躰観音に到着し、まずは行き止まりとなる左へと進む。するとそこにはあせかき不動さんがおられた。
“あせかき”とはまたすごい名前が付けられたものだ。
![](https://assets.st-note.com/img/1674694304269-4P7agxFfZ3.jpg?width=1200)
白く変色した部分からそのような名前がつけられたのかな。
立派なお姿をされているのに、ついその名のせいで真夏にガテン系でめっちゃ働いて汗臭くなった男性を思い浮かべちゃうよ。ごめんなさい。
だけどこの不動様、よく見たら目が赤と青に塗られている。それに気づけばガテン系イメージは吹き飛び、一瞬にして迫力が増す。その発見をたぁに伝えると「おぉ」となんとも正解な返答を返してくれた。
力強くお守り頂いていることを理解したら百躰観音へと戻ろう。
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すごいな、この迫力。立たれているだけでこんなにも雰囲気って変わるんだ。
その近くで静かに苔に包まれながら祈りを捧げてくれる石仏様。
![](https://assets.st-note.com/img/1674694335807-UCqa7msLcQ.jpg?width=1200)
おとといまでの雨もあってか苔が青々として、木陰の岩にはまだ水が多く残っている。
精霊たちに囲まれて静かに無を見る姿こそが自然との共存なのかもしれない。そうなると意識を持って世界を変えたがる私たちってなんなんだろうか。
「水が岩の上から滴り落ちてその裏側を歩けるよ」
ピチャピチャと水が地面に落ちるものの、上の岩が突き出ていて歩く私たちにかかることはない。
「まるで滝くぐりだね」
座禅石から階段を下っていく。
豊かな自然の中に設けられたにしてはあまりにも立派な階段。お陰でゆっくりと風景を眺めながら下ることが出来るんだけど、階段が続くと左ひざの痛みが増す。一段一段、両足をつきながら降りていくけど左足に負担をかけたくないので軽くジャンプする。
「私の降り方変じゃない?」
「大丈夫」
他の人に見られたら恥ずかしいと思いたぁに確認するも悪い膝の状態を知っている身うちの判断は甘い。いずれにしても人はまだ少ないんだ、気にしすぎてもしょうがないし、これからもハイキングを思えばこそのこと。この際、変かどうかはどうでもいいか。
山に沿ってなのか太い幹を曲げていることが目立つ。
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その先に海が見え、大仏様の姿が見えた。
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うわぁ、でかぁーい。
無空真実の電子書籍です。よろしくお願いします。