鋸山に行って来たよ-23
これまでのお話
現在11時、朝から活発に行動してたくさんの影響を受けたせいかお腹が空いた。ちょっと早めだけどランチにしよう。大仏広場の端にはベンチが設けられているのでそこに腰を下ろす。
朝、セブンイレブンで購入したサンドイッチ。最初はおにぎりにしようと思ったけどたぁがサンドイッチを選んでおいしそうだったので私もつられて変更。それに大好きなゆで卵。
海を見ながら食べたかったけど日差しが強かったので、大仏様を前に食事をする。モグモグしている間はお互い話さないから二人して存在感大のそれを観察する。
「左足部分は石がレンガのように積み重なっているね。崩れて修繕された痕なのかな」
「いや。多分、元々その部分には石がなくて付け加えたんじゃないの。顔の左側も一緒だよ」
「本当だ」
そこまで気づいていなかった。たぁに自信ありげにそう言われるとそうだと思っちゃうよ。
ミスに気付いてしばらくは悔やみが残ってしまう後悔癖がある私は最善ルートを選べずに上り下りを繰り返す結果となってしまったことを思う。
「ちゃんとこの下の入り口から登ってくれば関東百名山通りのコースになったのに。ロープウェイで登って羅漢エリアで上り下りを繰り返して、大仏様に見るために下って、また上るってなんだかすごいよね」
ある意味、ブートキャンプだよ。
百尺観音に興味を惹かれてここに来た。目的はこの上にある。知識不足のままここに来てしまって大変申し訳ないんだけど大仏様があることは受付でパンフレットをもらうまで知らなかったんだよね。
観音様を見るため、そしてハイキングを続けるために「上らない」という選択肢はないんだかえど、「また上るのか」という思いは大きなため息を伴う。
「大丈夫だよ。ちゃんとコース通りに進んで行こう」
自分で予定は組まないけど、組んだ予定に汚点があっても文句を言わないでくれるたぁに救われる。
「ありがとう。そうだよね。遠回りが一番の近道っていうしね」
調子に乗って、今の状況とは当てはまりそうで微妙に(というか確実に)当てはまらないことを言ってみる。
昼に近づくにつれて広場にいる人の数も増えてきた。
皆、軽装なのでハイキング目的ではなく観光のために来たんだろうな。
そして白人さんやアジア人の姿が多いことに気づく。
コロナ渦、観光目的で日本に入国するのは難しいはず。ってことは彼らは日本に住んでいるということになるよね。
本当、私が幼かった頃に比べたら日本で暮らす外国人の数が増えたもんだよ。
たぁのことは棚に上げて、そんなこを思う。
まぁ日本人にも人気の鋸山。
ハイキングも日本寺観光も、おいしい海鮮目当てだとしてもたくさんの体験に溢れた場所、お互い楽しい時間を過ごしましょう。
食事も終わり、海側へと目を向けるとフェンス代わりに植えられた枝しかない植物にたくさんの芽が育っていた。
これからどんどん暖かくなる。それに向けての準備は着々と進んでいるようだ。
「鳥がいるよ」
鳥の楽園、ニュージーランドで生まれ育った彼はその姿を見つけるのが得意。
彼の視線の先へと目を向けると木の合間の石に立つその姿を見つけた。
ちょこちょこと動いては止まり、撮影チャンスを与えてくれたのに正面を向いた時の写真は残念ながら枝に邪魔され、わかりづらいものとなってしまった。
大仏様の下にも中腹エリア、表参道エリアがあって興味が引かれるものの、これ以上下ることは避けたい。それは次回のお楽しみと取っておいて11時半前、山頂を目指して歩き始める。
おみくじ掛けがなかなか見つからずウロチョロしていたら社務所隣の隠れたスペースにあった。
膝の痛みのせいで下るのは一苦労だったけど、上るには問題がないので一気に進んで行こう。
下山途中は気づかなかったけど一つの石仏様の周りには小銭が置いてあった。特別な一体とは思えないけど、私にはわからない何かしらのストーリーがあるのかもしれない。
座禅石からまっすぐ進んだ先にある岩のトンネルには二天門が祀られている。凛々しいお顔をされ、周辺の石仏様とは別物とはっきりと伝わってくる。
両国観音を過ぎ山頂へと向うと通りすがる人の数が明らかに増えた。
「昨日の午後に日本寺観光しないで、今日の午前中にしてよかったね。ゆっくり観光で来たよ」
「うん」
自然に囲まれて暮らしていたのに、私と出会い、一緒になるために大都会東京へとやって来て、最初はその人の多さに馴染めずにいたのに、今ではその利便性の虜となり、シティボーイと化したたぁ。
だけどやっぱり人混みは嫌いだ。
これからもっと人は増え、時と場所を同じする機会だらけになるから、彼の顔が曇り、行動に変化が生まれることは間違いない。長年の経験がそれを私に伝えてくる。
それにしても日本寺は軽く観光して終わりなんて思っていたけどとんでもない。なんだかんだでもうすでに2時間半もここで過ごしている。
たくさんの魅力にあふれたお寺、700円支払う価値は十分ある。
ロープウェイに乗るためだけなら、無意味な支払いだけどね。
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