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30年ぶりにニューシネマパラダイスを観て、やっぱり泣いてしまった話

 初めてニューシネマパラダイスを観たのがいつのことだったのか、もう正確に記憶にないのだけど、Wikipediaで調べてみると日本初公開は1989年らしい。1989年といえば、自分は高校生。「当時の彼女と一緒に観に行ったこと」「映画を観て、初めて涙が堪えられなくなったこと」のふたつを強く記憶しているから、たぶん初めて観たのは大学生の時に違いない。高校生の時に、いっしょに映画を観に行く彼女なんていなかったから。
 当時のこの映画の評判といえば名作名作大傑作といったもので、いっしょに観た彼女ももちろん大絶賛。「好きな映画はなに?」と聞かれたらとりあえず「ニューシネマパラダイス」と答えておけば、合コンでも絶対にハズさないような、そんな社会現象のひとつにまでなっていたような気がする。
 その後、その彼女とのご縁が切れてしまったり、バイトが忙しくなったり、社会人となって働き始めたら単純に時間がなかったり、映画からすこし離れてしまって、相当に気になる映画でなければ映画館まで足を運ばないようになっていたけれど、ここ昨今のインターネットのおかげで、逆に映画というメディアの完成度と作品性を見直すようになってきた。
 そんなわけで2020年くらいから、邦画を中心にたくさんの映画を観るように。アカデミー賞はチェックしていたけど、ハリウッド製の大作アクションには興味がなく、「自分が好きな映画」がぼんやりとわかってきたような気もしていた。
「あなたにおすすめの作品」に「ニューシネマパラダイス」が出てきたのは先月のこと。あぁ、懐かしいな、とは思ったけれど、今さら観るでもないよなぁ、というのが正直なところで、ダウンロードだけして、しばらく放置しておいたんだけど、ふと週末に時間が空いて、観てしまった。
 明らかに泣きどころが違っていた。50を過ぎた自分が涙を堪えられなくなったのは、やっぱりトトがシチリアに帰ってくるシーンなんだけど、椅子に座って編み物をしている母が、ドアベルが鳴ったとたんに「トトだわ」と気づいて、編みかけのセーター(?)を椅子に放り、玄関に向かう場面。編みかけのセーターがアップになって、どんどんほどけていく。カットが変わると、玄関でトトを迎える母が毛糸をひきずっている。
 思い出しつつ書きながら、もういちど涙が滲むくらいにしみたシーン。「母は何でもわかってる」と言葉にしてしまえば軽い。今の自分が何をすべきか後頭部を殴られたような気がしたし、願わくば20代前半の「ニューシネマパラダイス」初見の自分にも、この思いを伝えられないものか。


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