離職率を半減させた話
とある会社の社長に就任した時、離職率を2年で半減させることができました。
理由についてのアンケートを取った訳ではないので断言はできませんが、多くの従業員と話した感覚でいうと、下記が大きく寄与したのではないかと考えています。
1)業績改善によりボーナスが大幅UPしたこと
2)実質的に凍結されていた昇給・昇格も復活し、給与水準が全体的に上昇基調になったこと
3)トップライン(売上高)急成長に伴う新卒・中途社員の大量採用により、部下や後輩が増えたこと(自分が面接・採用した多くの部下を抱えることで辞められなくなった、との声もありました)
4)部下が増え、部門も増えたので、管理職ポジションも増加したこと
5)会社の成長戦略や方針が明確になり、将来がある程度見通せるようになったこと
6)「会社の業績改善や戦略の策定・実行に、自分は貢献している!」という自己肯定感を持ってもらえるようになったこと
7)経営への信頼がある程度回復できたこと
これらの結果、閉塞感が打破され、「会社の将来は明るい」「自分もそれに貢献している」と思ってもらえるようになり、退職者が激減したのではないかと思います。
もちろん、単なる幸運だったのかもしれません。
残念だったのは、自分の社長退任後、離職率が再び悪化したという噂を聞いたことです。
自分の退任が引き金になるほど人気のあった社長でもないですし、業績がすぐに悪化したとも思えないので、おそらく上記の1)~3)については、さほど変わらなかったのではと推測します。
そうなると、5)、6)、7)あたりに何か問題があったのかもしれません。
今となっては真相は分かりませんが、もし本当に5)~7)に問題があったのだとしたら、お金やポジションだけでは従業員、特にナレッジワーカー(知識労働者)を引き留めることはできないという厳しい現実を示しているのかもしれません。
ピーター・ドラッカーが喝破した通り「肉体労働者は、仕事がその労働者を必要とするより労働者の方がその仕事を必要としているので、生産設備から離れては生産活動ができないが、ナレッジワーカーは、生産手段(=脳)を自ら保有しているので、機動的」な訳です。
自社の最重要財産にして唯一の生産手段である従業員(ナレッジワーカー)は、今晩家に帰ってしまったら、明日出社してくれるとは限らない--。
彼ら・彼女らはいつでも生産手段を持って、次の会社に移ることも、独立することもできる--。
この戦慄すべき事実をどれだけ真剣に受け止めるかで、ナレッジワーカーに依存する会社のあり方が大きく変わります。