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デジタルで小売は再生できるか(1/2)

NYで、今話題のb8ta(ベータ)の店舗を視察してきました。

日本でもアメリカでも小売業界は死屍累々で、アメリカでは今年に入ってからだけでもNine West, Claire's, Rockport, The Walking Company, Brookstoneなどが法的整理手続きに入り、さらにJ. CrewやNeiman Marcusの破綻も公然と噂されています。

いくら小売業の新陳代謝が激しいアメリカといえども、ここ数年の破綻数は異常です。特に、空前の好景気の最中にあってなお、不況時を上回る数の小売業者が破綻に追い込まれているという事実は、小売という業態がその歴史的使命を完全に終えたようにすら思えます。

Amazonの前には、リアル店舗は完全に消滅する他ないのか。

その命題に対する興味深い答えを提示しているのが、このb8taという2015年に設立されたスタートアップです。大都市の一等地を借りては、オフライン(リアル)でのプレゼンスを有しないガジェット系ベンチャーなどにそのスペースを細分化して転貸し、出店料を得る(要は地代のスプレッドを抜く)というのが基本的なビジネスモデル。

マンハッタンの場合、34丁目のMacy’s (Herald Square) という超一等地の1階に店を構えています。

男性用ファッションフロア、香水セクションの隣にありました。出入り口近く、視認性も店前通行量も申し分ない、非常に良い立地です。自分も六本木の東京ミッドタウン(三井不動産)に小売店を出店したことがあるので分かりますが、ぽっと出の会社がこのような区画を貸してもらうのは普通は無理です。

店舗内はこんな感じ。

今年6月、b8taのBラウンド(19百万ドル)のリード・インベスターにMacy'sがなったことがきっかけでMacy'sへの出店に至ったようです。Macy'sの将来戦略においてb8taが極めて重要な役割を担っていることは後述します。

図々しくも、General ManagerのBill Dennehyさんという方をつかまえて根掘り葉堀り聞いてきました。いい人です。ちなみに店員さんは彼を含めて4人いましたが、彼だけがb8taの社員で残りの3人はMacy'sの契約社員とのこと。

Billさんの話と諸々の情報を総合すると、b8taはこんな会社です。

■我々は、小売業を体験軸で再発明しようとしている。小売の将来がここにあると自負している。

■我々は、retail-as-a-platformの提供企業である。リアル店舗でのプレゼンスを欲するブランドやスタートアップ企業に、サービスとしての小売を提供している。

■オンラインでは埋没してしまうガジェットを大量のフィジカル・トラフィックの前に晒すことで、ブランド認知とコンバージョン(購買)につなげる。

■(Billさん曰く)あまり知られていないが、ガジェット系のスタートアップにとって、実はリアル店舗の出店は認知度向上という観点からは非常に効率(ROI)がいい。一方、実際に自分で出店しようとすると、スタートアップには当然そのノウハウもなく、経済的にも実務的にもまったく現実味がない。

■そこで我々は、リアル店舗での認知度向上を図りたいブランドに対し、ターンキーでの「リアル店舗出店」サービスを提供している。我々が全米各地に確保している超優良立地に、巨額のデポジットを積むことなく、すぐに出店できる。小売の知識も、商品ディスプレイのスキルも必要ない。

■ただ我々の強みは立地だけにあるのではない。ブランド側が提供したい顧客体験を、テクノロジーを使って店頭で提供できることが最大の強み。

■例1)天井のカメラ。(許可を得て撮影しています。以下同。)ダウンライトの下にある、2つレンズのカメラでトラフィックと商品前での挙動を計測している。商品を見たか、何秒見たか、タブレットに触ったか、商品に触ったか、何秒滞在したか等。これで、「商品発見のインパクトがどれだけあるか」が分かる。

■例2)商品説明タブレットの画面構成。全ての商品の横に同じ形のタブレットが配置されているが、タブレット内のメニューはどの商品も:

Overview(概要)-->Description(商品説明)-->Video(動画)
-->Gallery(写真ギャラリー)-->Buy Now(その場で購入)

で統一されている。これにより、メニューの差異による商品前滞在時間やコンバージョンに差(不公平感)が出ないように配慮されている。

■例3)店員さん自らが商品説明をした場合は、画面上に店員さんがチェックを入れる機能あり。これにより例えば「先週は100回商品説明をした結果、3件がコンバージョンに至ったが、今週は1件のみ。なぜか?説明内容を変えたのか?」などの検証を、出店者とb8taで実施できるとのこと。店員の接客スキル向上はもちろん、出店者側の説明資料作りの改善にもつながるとのこと。

店頭での顧客体験の最良化という観点で、この指標を非常に重要視している由。

■出店者からは基本的に出店料しか貰っていない。通行量や視認時間、滞在時間で追加フィーを取るような仕組みにはなっていない。定量データの取得はあくまで出店者による認知度向上とコンバージョン改善のためであって、それ自体で課金するモデルではない。データは出店者に基本的に全て渡す。

続く

#くじらキャピタル #事業再生ファンド #デジタルで小売を再生 #b8ta








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