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最初からグローバル(1/2)

「100%デジタル」と並ぶ、くじらキャピタルのもう1つの再建理念が「最初からグローバル」です。

これは、最初からグローバルな顧客と投資家を想定し、そこから逆算して事業設計をすることで、国内市場の制約を超えた価値創造と成長を実現しよう、という考えです。

人口が激減し内需が縮小していく国内市場に頼っていては、衰退と破綻は避けられないので:

製造業であれば海外市場への輸出、あるいは海外生産・販売拠点の設置。

立地の制約がある商売であれば積極的かつ真っ当なインバウンド対応。

ファンドとしては、海外投資家へのEXITを最初から想定した準備。

を突き詰めよう、という考えです。

・・・え?それだけ?と思われるかも知れません。

この程度の考えであれば、どの企業・ファンドでも当たり前に取り組んでいることであり、あえて理念の一つとして掲げるほどのものではないのでは?という意見もあるでしょう。

それを敢えて打ち出すくじらキャピタルは、何が違うのでしょうか?

3つあると考えています。

1)グローバル対応を、単なる多言語対応ではなく「顧客体験」「マーケティング」軸で考え、奇をてらわず、自己満足に陥らず、徹底した海外顧客目線で進めようと考えていること。

2)国内事業の延長線上ではなく、最初からグローバル前提で事業を再定義し、それに対応した顧客接点・ストーリー・サービスラインナップ・組織の再構築をDay1から実践しようとしていること。

3)ファンドとしても最初からグローバル前提でEXITを考え、例えば投資先企業のIFRS対応・財務情報英語化・クラウド化等をDay1から実践しようとしていること。

なぜこのような考えに至ったのでしょうか。

それは、「グローバル対応なんかどこでもやっているだろう」とタカを括っていたところ、実は全くそうではなく、実際に見聞きした中堅中小企業のグローバル対応があまりに拙いことに衝撃を受けたからです。拙い以前に、対応すべきポイントが完全にずれていて、いたたまれない気持ちになるケースが非常に多かったからです。

例えば:

■海外売上比率がかなりに高いのに、輸出は全て専門商社任せで、輸出先の市場のことも知らなければ、現地のエンドユーザとも会ったことがなく、そもそも現地に行くことすら稀な精密部品メーカー

■海外輸出を試みたものの、知名度の問題から日系輸入業者に取り扱ってもらえず(世界的な日本酒ブームといえども、輸出額は年間187億円(2017年)に過ぎず、取り扱ってもらえるのは日本酒トップメーカー数社のみ。かつ一定量以上の需要家は現地日本食レストランに集中してしまっているという現実はあまり知られていません)、それ以上の努力はせずにあっさり断念してしまう酒蔵

■ユニークな技術で海外からの引き合いが多いにも関わらず、海外での展示会出展を「英語が苦手なので・・・」と最初から検討もしないメーカー

■インバウンド需要を取り込もうと頑張るものの、元々デザイン的に厳しい自社サイトを英語・中国語・韓国語併記にすることでさらにサイトが怪しくなり、UU・PVが劇的に低下してしまった温泉旅館

■単なる越境EC

■・・・だけでは儲からなくなってきたので、自社で在庫を抱えて勝負に出たところ、ブームが去って大量の不良在庫を抱え、さらに業績が悪化してしまったEC企業

■世界的に有名なキャラクターを使ったテーマパークにも関わらず、ショーの内容が衝撃的に幼く、また日本的な要素が多すぎてアジアからの観光客が「???」となっているキャラクターブランド企業

等々。枚挙にいとまがありません。

もちろん大変な努力はされているのでしょう。ただ、そもそも外国語が絶望的にできない上に、異文化理解力が低すぎます。日本人は、自分たちが思っている以上に外国語、特に英語が下手なのです。

(英語が下手すぎると、海外顧客は、不便を通り越して「不安」になることを日本企業は感覚として理解できていません。)

また、単に「多言語化すればいいだろう」という以上の思想がないことも大きな課題です。さらに、メディアや政府が無責任に垂れ流す「日本は海外でこんなに人気」といった誤った言説を盲信してしまうのも、大問題です。

ターゲットとする海外の消費者を明確に定義しておらず、またそのターゲットの「旅(ジャーニー)」にどう寄り添い、どう顧客体験を最良化するのかについても何らの思想がない。

その海外顧客がどこで自社のことを知るのか、どのような文脈でSNSで共有されるのか、なぜ製品やサービスの購入を決断するのか。

海外消費者の目線に立ち、個々人の文化的特性や事前理解に応じて、「ジャーニー」をできるだけ快適で(言語を含めて)違和感のないものにしよう、という考え自体が存在していないように見えるのです。

一言で言うなれば「顧客体験」軸の不在。
あるいは「グローバル対応=多言語対応」という誤解。

国内では個々人をセグメンテーションして細かくアプローチしているのに、外国人になるとなぜか国籍すら無視して一まとめにする粗雑さ。

それなりにうまくいっている企業ですらこの状況ですから、経営不振に陥っている中堅中小企業は、もはや問題外のレベルにあります。

だからこそ、くじらキャピタルは、そこにチャンスを見出しているのです。

(続く)

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