社交不安障がい者が旅をする。#16
日課の朝散歩は、朝食を買いに行くのを兼ねて、宿から徒歩10分くらいのスーパーまで歩くことにした。
街に繰り出してみると、これまで僕が経験した東南アジア諸国との違いが見えてきた。
何というか、東南アジアというより、日本とかなり似ている。
チャットアプリは「LINE」が主流だし、道路は左側通行。
車も右ハンドル。
でも街中には、やはり屋台や出店が至る所に見受けられ、東南アジアっぽいカオスも感じる。
フィリピンやベトナム、カンボジアにも高い建物はあったが、ここまで広域にわたって建設されてはいなかった。
マニラなんかも高い建物はそれなりにあるが、どちらかというと一つの地区に密集していた。
そんなところからも、バンコクという街の広大さを感じつつ、やっぱり名古屋に似てるな、と思ってしまうのだった。
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午後、バンコクという街に慣れておこうと、散策してみることにした。
どこに行こうか迷ったが、折角なので有名なワット・アルンに行くことにした。
移動手段もちろん電車やバスだ。
公共交通機関が発達していることも、カンボジアだったらトゥクトゥク一択だったのにな、などと思ってしまう。
そうこうしている内に、目的の寺院に辿り着いた。
現地の人に紛れ込んでの初電車や初バスは少し緊張してしまうが、難なく乗りこなすことができた。
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入場料を払って敷地内に足を踏み入れてみる。
すると、遠目でも「なんかすごそう」だった寺院の詳細が見て取れた。
それは、色鮮やかな彫刻でびっしりと埋まっていた。
カンボジアでも王宮を見学したが、そちらとの違いは独特の色彩だった。
白ベースの塔には隙間なく彫刻が彫られ、その一つ一つに赤、黄、緑などで精巧に色付けされている。
何度も補修を重ねられているのだろうが、それでも近くで見ると圧倒された。
さらに、内部を見学できる建物もいくつかあるようだった。
入ってみると、瞑想する仏陀の像が大量に並べられており、合掌して祈る人たちの姿が目に入った。
この仏陀の像、日本でよく見るような大仏とは少し経路が違う気がする。
それに、カンボジアで見た仏陀は、ナーガの上に座っていた。
仏教といえど、さまざまな宗派が存在する。
たとえ陸で繋がっていたとしても、その在り方は地域によって特色が異なることがよく分かった。
ラジオやTV、ましてやインターネットなどない時代、情報は少しずつ形を変えながら、その土地独自の文化を形成していったのだ。
そのことを、ここまでの旅を振り返って実感した。
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やはりこの国は、他の東南アジア諸国と比べても、経済的に発展していることが感じられる。
仏教の寺院が点在する一方で、巨大なショッピングモールもいくつもある。
夜、何か食べようと思った僕は、コスパこいいレストランを探していた。
「バンコク レストラン 安い」で検索すると、いくつか記事が見つかった。
その中の一つ、比較的アクセスの良さそうなところに行くことにした。
着いてみるとそこは、ショッピングモール内のフードコートの一角のようだった。
「それにしても、このショッピングモール、めちゃくちゃデカいな」
フードコートだけでも広大で、数えきれないほどのお店が入っている。
自分がどこから入って来たのか分からなくなるほどだ。
先の2カ国との「差」に、なんとも言えない気持ちになってしまう。
結局、ライスとサイドメニュー2種類が65バーツという格安レストランで、夕食をいただいた。