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社交不安障がい者が旅をする。#7
ホーチミン滞在4日目。
止まっているホステルに新たにやってきた旅人と、一緒に街を巡ることになった。
タイからやってきたという彼は、朝散歩に出かける僕に着いて来ていたらしく、歩いていると声をかけて来た。
旅人同士、どこから来たの?とか、どこ行くの?とかしばらく話しながら歩いていた。
一緒に朝食をとった後、何となくの流れで、特にどこに行くか決めていない彼と、行動を共にすることになった。
既に粗方行きたいところには行き終えた僕は、どうしようかと思った。
1人であれば、今日は宿でゆっくり過ごそうと思っていたからだ。
「展望台とかあるよ」
事前に調べていて、まだ行っていない場所を教えた。
彼はどこでもいいみたいな調子だったが、とりあえずそこに行くことにした。
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到着すると、まだ施設が開く時間ではなく、少し待つことになった。
久しぶりの英語だけでのコミュニケーション。
中国にいる間は、中国語漬けの生活だった。
普段とは違う言語を使っていろいろ話すのは、楽しかった。
30分くらい待つと、施設に入れるようになった。
だが彼は展望台の入場料が高いと思ったらしく、行く気がなくなってしまったようだった。
僕も、正直行っても行かなくてもいい場所として、リストから外していた場所だった。
しかし、折角ここまで来たのと、英語で上手くやっぱいいやという事をはっきり伝えられず、1人で登ることにした。
79階に上がると、その景色は思ったよりも良いものだった。
高いところから出ないと、楽しめない景色もあった。
地形や街の様子。
空港に着陸しようとする飛行機。
駅から駅へと走る電車。
ホーチミンの街が一望でき、ここでしか見られない景色に、しばらく見入ってしまった。
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それからも、彼と共にカフェに行ったりしたが、内心、少し疲れも感じていた。
それは、初対面の人と2人きりで行動を共にするから生じた、完全に自分のペースというわけには行かないこと、彼のことをまだ完全には信用できていなかったことが原因だった。
1人でいると、自分のペースを守れる反面、時々寂しさも感じる。
でも、誰かといると寂しさはないけれど、その代わり失うものがあった。
もしかしたら、彼は、自分が自分らしくいられるような、波長が合う人じゃないかったのかもしれない。
北京で姉といた時は、-家族だからというのもあるが-とても安心して、自分らしいペースで、一緒の時間を楽しんでいた。
そんな自分にとって居心地の人が、この世界にどれだけいるかは分からない。
でも、そんな人を、僕は心から大事にしたいなと、改めて思った。