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社交不安障がい者が旅をする。#18

時刻はまもなく14時。
この日は少し遅めに宿を出た。
何をしようか悩んだが、バンコクの巨大ショッピングモールを見てみようと思い、バスに乗った。

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SIAM PARAGON
SIAM center

巨大ショッピングモールだけでなく、モノレールの線路や道路が複雑に入り組むこの場所は、バンコクの中でも一際活気溢れる歓楽地のようだ。
一度ショッピングモール内に足を踏み入れれば、誰もが知る有名ブランドの直営店が所狭しと立ち並び、飲食店やフードコートも広大だ。

だが、どのショッピングモールも似たような雰囲気のため、全部同じじゃんと思ってすぐに飽きてしまう。
それはまた、人間の欲望をこれでもかと詰め込んだような場所に思えて、恐ろしさすら感じた。

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周辺をぶらぶらしていると、美術館を見つけた。
どうやら入場無料のようなので入ってみる。
館内はとてもおしゃれだ。
掲示されている美術館についての概要を見ると、新進気鋭のアーティストの作品を展示しており、無料で開放されているらしい。

散策していると、美しい絵画が目についた。
ありふれた日常の光景を描いた風景がなのだが、よく見てみると絶妙な色使いで陰影が表されている。
しかも、現実に目には見えない「場の雰囲気」までも、繊細なタッチで描かれていた。

他のアーティストの作品を見てもそれぞれに個性があり、一つ一つ足を止めて見入ってしまう。
アーティストの技術と感性が表された作品たちが、僕の「美」への感覚を刺激しているのを感じた。

「アートって面白いな」

今までも観光で有名な美術館に行ったことはあったが、芸術を鑑賞することの面白さを初めて理解した。

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さらに館内を散策すると、20代の若手アーティスト達による作品が展示されていた。
中でも、鮮やかな色使いで明るさを感じるが、よく見てみるとどこか不穏な気配を感じる一枚の絵が心に残った。

ぱっと見では個性的な絵だなで終わってしまいそうだが、不可解な点が至る所に見つけられる。
そのコントラストが面白いなと思い、館内を巡る中で思わず2度「見に来て」しまった。


芸術とは、頭で考えるものではなく、心で感じるものだ。
アーティストが作品にぶつけた繊細かつ独特な感性と、見る者の感性の対話こそがアートなのだ。
そこに、「こんなすごいもの見たよ!」と、誰かに自慢したいなどという邪念は一切なく、ただ目の前に表されたアーティストの「心」を自らの「心」で感じ、それに感銘を受けた。

そうして、気づけば2時間くらい経とうとしていた。
思いがけず「心を刺激される」体験をした僕は、もう遅い時間だし早く帰ろうと帰路に着いた。

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