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社交不安障がい者が旅をする。#2

寝違えた首の痛みとともに、ふらふらと辿り着いたのは、上海城市规划展示馆(上海市都市博物館)だった。

毎朝のルーティンを終え、南京路と外滩を目指して歩いていると、人民广场(人民広場)に出た。
この広場の周辺には、博物館が点在している。

せっかくなので、どれかしら入りたいと思っても、事前の予約が必要と言われてしまう。
中国版LINE『微信(WeChat)』で予約しようとしても、電話番号が間違っていると言われ、予約できない。
手当たり次第に予約できないか試していると、上海城市规划展示馆の予約ができたため、見学することにした。

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そこは、上海市のこれまでの生い立ちと、これからの発展について展示している博物館だった。
なんでも、上海市城市总体规划(通称上海2035)という構想の元、创新之城(革新)、人文之城(人文)、生态之城(生態)の3つの軸で都市を発展させていくのだとか。

館内の展示はなかなかに見応えがある。
これで入館無料はお得だなと思った。

だが、展示を見るうちに、疑問が生じた。
それは、

「徒に都市の発展させることが、本当に人々の幸せにつながるんだろうか。」

ということだった。

文明の発展によって、人々の生活はどんどん便利になっていく。
でも、同時に、何か大切なものが失われてしまったような気がした。
それに、

「自分たちはこんなすごいものを作り上げた。」

そう世界に誇示したい心があるような気もしてしまう。
それが、本当に人々の幸せにつながるのか、こんな明るい未来が待ってますよ!と見せつけてくる裏で、ねっとりとしたモヤモヤが、心の中で渦巻いていた。


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博物館を出た僕は、当初の目的地である南京路へ向かった。
そこは巨大な歓楽通りで、上海でも人気の観光スポットだった。
他の国にも、似たような歓楽通りは存在する。
特に買い物に興味のない僕は、空いた腹を満たそうと、一際賑わっている商業施設に足を踏み入れた。

中に入ると、いろいろなお土産何並んでいた。
日本では見かけないそれらに、中国っぽいなと、懐かしさと、どこか実家に帰ってきたような安心感を覚えた。

3Fに上がると、フードコートが広がっている。
どんなものかと見ていると、元気なおばちゃんに呼び止められ、大衆的な定食を出しているブースで足を止めた。
おばちゃんは早口で自慢のメニューを紹介してくる。
そんな彼女に負け、お昼はこの店で食べることにした。

頼んだのは、トマトと卵の炒め物(豚肉入り)。
ガッツリしてるけど、これで41元だった。

「好吃吗?你还要不要米饭?(おいしい?ごはんまだいる?)」

食べっぷりが気に入ったのか、おばちゃんが声をかけてくれる。
うまいと答えつつ、サクッと平らげてしまった。

「挺好吃的。谢你啊!(うまかったよ!ありがとう!)」
「好吃的吗,有空的时候再来!(うまかった?また来な!)」

帰り際、おばちゃんと言葉を交わしてその場を後にした。

「やっぱ、こういう人との繋がりっていいな。」

最後にこんなやりとりがあるだけで、41元払った以上の満足を感じていた。


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店を出た僕は、南京路をさらに東に歩いた。
しばらくすると、上海で最も有名であろう、外滩(ワイタン)に突き当たった。

あいにくの天気だが、独特な見た目の電波塔『东方明珠塔』と、高層ビル群が立ち並ぶその景色は、なかなか壮観だった。

15年前くらいに、家族で訪れた時の記憶も蘇りつつ

「この景色、NYに似てるな」

と思った。

水辺を隔てて見える高層ビル群。
そう言われるとNYのあの景色をイメージするかも知れないが、外滩の景色もそれと酷似していた。

「やっぱ、意識してるのかな」

世界一の国と称されるアメリカ。
そのアメリカに追いつけ追い越せとばかりに、対抗意識を燃やして、張り合おうとしている中国の姿を垣間見るのだった。

(ちなみに、一年前にNYに行った時も天気は☔
僕は雨男だという確信も強くなった!笑)

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外滩から当てもなくぶらぶらしていると、豫园(豫園)に辿り着いた。
別に豫園を目指していたわけでわなかったが、歩き疲れ、雨にも嫌気がさしていたので、見学することにした。

適当に見物していると、夕食の時間になった。
ここには観光客向けの大きなフードコートがあった。
色とりどり並んでいる出来合いの料理から、好きなものをとって、会計するスタイルのようだ。

僕は、少なめにと意識しはつつも、結局は腹9分くらい食べてしまった。

帰り道。

「そうか、あれは罠か!」

と気づいた。
食欲をそそる料理をこれでもかと並べ、来た者の欲望を刺激する。
その罠にまんまとハマり、食べ過ぎてしまった。
食べ過ぎは悪
そう知っていながら、つい食べ過ぎてしまう。

自分の適量を知るとともに、今度からブュッフェ形式のレストランに近づく時は、食べ過ぎないない覚悟をしてからと決意した。

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