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社交不安障がい者が旅をする。#1
中国に入国するのにビザが必要だとは、思いもよらなかった。
岐阜の実家に引っ越した後、わざわざ東京に出戻りするハメになったり、運転免許の更新が上手くできなかったりして、少し落ち込んでしまった。
それでも、半年前くらいからセッションをしてもらっていたコーチの
「失敗して、反省しているから、どんどん成長していますね!」
という言葉に、たしかに、数年前と比べるとレジリエンス高まったな、と思うのだった。
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最初の目的地は中国・上海だ。
中部国際空港から、飛行機で2時間ほどで着いてしまう。
近いなと思いながら機内を眺めていると、飛行機を擬人化(美少女化)したイラストが目に飛び込んできた。
「こういうサブカルを生み出したのは日本だけど、最近は中国でも人気なんだな。」
日本と中国、隣国同士、感性は似ているのだろうか。
いや、そもそも、昨今のアニメをはじめとした、日本のサブカル人気は、もはや世界規模だ。
そう考えると、日本のクリエイターに敬意を表したくなった。
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上海に到着した僕は、取得に手間取ったビザを携えて、入国審査に挑んだ。
「你的亲属住在中国吗?(親戚が中国に住んでるの?)」
「是的。我的叔叔住在中国。(はい、叔父が中国に住んでます。)」
簡単なやり取りを終え、無事に入国の許可を得た。
後から、もっとこういう言い方の方が良かったなと思いつつ、
「俺の中国語、案外いけるじゃん」
と、ちょっと自信がついた気がした。
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空港を出た僕は、早速宿に向かうことにした。
時刻は18時。
十数年前に来たことがあるとはいえ、見知らぬ土地で1人、無理はしたくなかった。
地図アプリで宿までの経路案内を調べると、地下鉄で1時間ほどかかるという。
つい、最安の経路で行こうという、いつもの癖を発動しつつ、地下鉄に乗り込んだ。
日本のとは違い、上海の地下鉄には座席にふかふかのクッションなどついていない。
プラスチック剥き出しの座席に腰を下ろしながらぼーっとしていると、対面に座った女性が持っていたキャリーケースが暴れ出し、隣の人にぶつかってしまった。
電車が停まる際の反動が、大きかったようだ。
そのまま眺めていると、彼女は謝ることなく、サッとキャリーケースを取り戻した。
日本の人の「他人への気遣い」レベルを10だとすると、中国の人は3ぐらいな気がする。
もちろん、全ての人がそうとは言わない。
しかし、彼女は、キャリーケースを他人にぶつけても、「对不起(ごめんなさい)」とは言わなかった。
日本の人はちょっとぶつかっただけでも謝るだろう。
「謝ったら負け」という感覚があるのかも知れない。
同時に、日本の人は他人に気を使い「すぎる」あまり、ストレスを溜めたり、周りに合わせがちなのかもしれない。
そんなことを思った。
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地下鉄を降り、街に出ると、不意に懐かしさが込み上げてきた。
「そうそう、この匂い。中国だな〜」
脳裏に染みついた、ちょっと厳かな雰囲気のその「匂い」を街の中で感じ、まだTVがブラウン管の時代に中国に来ていた頃の記憶が蘇る。
そして、続けて目に飛び込んできたものに、少し感動してしまった。
それは、バスだった。
頭上の電線から電気をもらって走っているらしいそのバスは、独特な見た目をしている。
そういえば、「角生えバス」と子供の頃勝手に呼んでいて、その見た目が大好きだったな。
そうだ、子供の頃、中国に来て一番ワクワクしていたのは、この「角生えバス」を見たり、乗ったりすることだった。(角が生えてて、2連結になってるのとか、最高にワクワクした。)
自分で模型を工作したり、絵に描いたりするくらい、このバスが大好きだった。
日本ではほとんど見ることができないそれを、中国ではよく見かけた。
僕が海外とか、異文化とかに興味を持ったのは、この強烈な体験が元になってるのかも知れない。
そんな気がした。
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街を見やると東京都心を走っているような近未来的なバスも走っている。
いや、むしろそちらのバスの方がよく見かけた。
中国も昔と比べてかなり変わった。
日本より変化の激しい国だろうが、それでも、少しばかりの寂しさとともに、まあ、大人になるってこういうことなのかな、と思うのだった。