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コンサルタントの「問題解決」ノート術 #4:因果関係で徹底的に考える

ここまで、楽して成果を出すために図解のパワーを使おうという話しと、ロジカルシンキングには分類・相関関係・因果関係という3つのステップがあること、そして因果関係を図解する作法を説明してきました。


ここからは、因果関係で表したものをチェックする方法を説明していきます。大きく分けると2つのグループがあります。ボックスの内容そのものをチェックするグループと、つながりをチェックするグループです。
全部で7つあるこのチェック項目は、正式には「論理の妥当性の検証Categories of Legitimate Reservations:CLRs」と呼ばれるものです。

わかりやすい内容かどうか?

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ボックスの内容の明瞭さをチェックします。
言葉の定義がきちんとされているかどうか、共通認識が出来る文章になっているかどうかをチェックします。

まず演習として、「品質問題は、会社にとても大きな損害を与える」を明瞭になる表現で書き直してみてください。

最初の「最短のスケジュールを作成する」という文章を例に挙げると、”最短”という言葉が何を比較基準にしているのかわからないですし、どのくらいの期間であれば共通認識として”最短”として合意できるか曖昧です。
この場合は、「納期を守れるスケジュールを作成する」と書き換えれば明瞭な表現になります。

「品質問題は、会社にとても大きな損害を与える」を、わかりやすい表現に書き換えると「品質問題で会社は次の取引の機会を失う」が模範解答となります。

そもそも、存在しているか?

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明瞭な表現が出来たとして、果たしてその内容は存在しているでしょうか?
たとえば、「二酸化炭素は、地球温暖化の原因である」という文章を例に挙げると、確かにそういう説もありますし、地球温暖化に関与していないとは言い切れないですが、唯一の原因だと断定するほどの根拠は今のところありません。
また、抽象的な表現も存在するか怪しいものです。たとえば、「上司は私を正しく評価していない」という文章は、”正しい”という言葉が抽象的なため、本当かどうかチェックできません。より具体的な表現、事実に基づいた表現に書き換える必要があります。

存在しているかどうかの検証は、一部だけのことを全部と言っていないかチェックすることも含まれます。「みんなが危機感を持っている」という文章の「みんな」は、本当に「一人残らず全員」なのでしょうか?
どの範囲なら成り立っているのか、範囲を限定した自分なりの内容に書き直してみましょう。

「みんなが危機感を持っている」は、「多くのマネジメントが会社の将来について危機感を持っている」が模範解答となります。

因果関係が成り立っているか?

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わかりやすい内容かどうか?」「そもそも、存在しているか?」の2つは、内容そのものをチェックしてきましたが、ここからの5つはつながりのチェックです。
原因と結果をつなげたときに、「もし…ならば、結果として…である」という文章が成り立つかどうか確認する必要があります。これは、矢印の陰に隠れている理由が存在するかどうか、単なる相関関係なのかどうかを確かめることです。
たとえば、もし「全社員が一生懸命働く」ならば結果として「会社の利益があがる」という例の場合、かならずしもその結果が起こらないことはすぐにわかりますね。直接的な因果関係はないと判定できます。
もう一度、相関関係と因果関係のパートを読み返して、理解を深めておきましょう。

原因が十分かどうか?

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このチェックは、結果が記述された原因と理由だけで起こるのかどうかをチェックします。

それでは、演習です。
もし「燃料がある」かつ「発火源がある」ならば「火がつく」という因果関係があったときに、原因は十分でしょうか?
書き漏らしている原因を考えて、ボックスとして加えてみましょう。
ヒントは、小学校の理科の実験を思いだして下さい。

別の原因があるかどうか?

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このチェックは、ある結果に対して、複数の原因が存在するかどうかを確認するためのものです。
たとえば、もし「Aさん宛てにメールを出した」かつ「メールサーバーがダウンしていた」ならば「Aさんはメールを受け取っていない」という因果関係が成り立ちます。この時、「Aさんはメールを受け取っていない」という同じ結果を引き起こす、まったく異なる原因はないでしょうか?
別の原因はいくつも考えられますが、一例を挙げるなら「Aさんのメールアドレスが間違っていた」があるでしょう。

それでは、演習です。
もし「先月より販売数が落ちている」かつ「注文があると在庫から出荷する」ならば「先月より在庫が増えている」という因果関係が成り立っています。この場合、同じ結果を引き起こす別の原因はありませんか?

原因と結果が逆さまになっていないかどうか?

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原因と結果の順序が逆になっている場合があります。

たとえば、もし「煙が家から出ている」ならば「家が火事である」という因果関係を描いたとします。なにをもって火事であることを判断したかというと”煙”なのは確かですが、時系列で考えてみると、因果関係が逆転していることはすぐにわかります。正しくは、もし「家が火事である」ならば「煙が家から出ている」となります。

原因と結果が逆さまになることは、日常会話の中ではかなり頻繁に起こります。丸ごと理解しているので違和感を感じないことがほとんどですが、問題を解決しようとしているときにはそれでは役に立ちませんね。

「ようやく桜がほころんでできて、春を感じるね」という会話の時には、因果関係が…なんて野暮なことを考えずに、「お花見にいこう!」と答えておきましょう。

他の現象が起こっていないかどうか?

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このチェックは、書かれている原因から生じる他の現象を考えるものです。
効果があるはずのプランをいざ実行してみたら、別の悪い影響が生じてしまい、プランが台無しになる時も。このような時は、他の現象を見落としている場合が多いのです。
もし「海外に工場を移す」ならば「労務費が下がる」という因果関係が成り立っています。この場合、もし「海外に工場を移す」ならば「技術が国外に流出する」という因果関係も予測できるわけです。

たとえば、フィットネスクラブを例にした演習をしてみましょう。
もし「新規会員が増える」ならば「売上が増える」という因果関係が成り立っている場合、同じ原因から生じる他の現象は他にありません?

この場合は、「トレーニングの待ち時間が増える」「施設の稼働率があがる」などが考えられます。

予測される他の結果は、かならずしも悪いものばかりではありません。ただ、良い現象は予測していなくてもリスクが増えるわけではないですが、悪い現象は予測して事前に対処する必要があります。よく言われる「リスクマネジメント」とは、発生しうる悪い現象を事前に予測して、発生確率を下げる策を用意したり、発生した場合の影響度を下げる策を実行したりするものですので、このチェックが有効です。
網羅的に他の現象を予測するためには、「分類」を上手く使うといいことは言うまでもありません。

また、このチェックは、最初に考えた因果関係が本当に成り立つか吟味する時にも使えます。
原因Aと結果Bの関係が、時系列に起こっているし、言葉の上では因果関係としても誰一人として異議を唱えないものであっても、現実に起こっていることではない場合があります。

たとえば、もし「市場が縮小している」ならば「自社の売り上げが下がっている」という因果関係を書いてみると、おかしいところは無さそうですね。この時、原因と結果を結びつけている理由は、「自社の市場シェアは変わっていない」が矢印の裏に隠れています。
では、「市場が縮小している」ことによって生じる予測される他の現象は無いでしょうか?
考えられるのは、「他社の売上が下がっている」です。
マーケティングデータや営業からの情報で、実際に起こっているのは「他社の売上が上がっている」ことが確認されたとしましょう。こうなると、もし「市場が縮小している」ならば「他社の売上が下がっている」という因果関係は成り立っていないことが証明されたことになります。であれば、「自社の売り上げが下がっている」ことの本当の原因は、別にあるはずです。

事実であることが確認されているふたつの現象「自社の売り上げが下がっている」と「他社の売上が上がっている」が起こっているなら、共通の原因は「自社のシェアが他社に奪われている」となります。
つまり、最初の因果関係では前提条件を「自社の市場シェアは変わっていない」と思い込んでいましたが、実際にはシェアを失っていたことを見出せました。

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自明だとか常識だとか思われている前提条件や間違った思い込みは、直接洗い出して吟味しようとしてもなかなか難しいでしょう。しかし、予測される別の現象を考えてみることで、見直すべき前提条件や思い込みを明らかにすることが出来るのです。

因果関係をチェックする7つのポイント

因果関係のチェックポイントが7つもあると、習得するのが難しいという印象を受けるかと思いますが、読み上げながら順に確認して違和感がなければひとまずOKです。7つのチェックポイントをまとめて覚えられるよう、チェックするときに質問をまとめて書いておきますので、ぜひ活用してください。

CLRまとめ

「論理的思考」や「ロジカルシンキング」という言葉は、論理は思考のなにか一部分であるかのような間違った印象を与えます。しかし、論理と思考は別物で、論理的作業は思考を支えるものであり、論理は思考の過程を紐解くためのものなのです。
むしろ、思考は直感や閃きや論理的飛躍そのもので、自由な発想によって突然生まれたもので構わないのです。本来、論理とは、結論としての思考を筋道立てて後から説明するためのものです。どんな前提から、どんな理由でその結論が導けるのかを、まだ結論に納得していない人に向けて説明できるようにするのが、論理です。

ですから、ロジカルシンキングというのは、コミュニケーションを円滑にするための技術であって、言葉を操って相互理解を深める目的をもっています。自分が結論に至るまでの思考の過程を、ひとつひとつ丁寧に筋道立てて他人に伝えられるようにするのが、本当の「ロジカルシンキング」です。この定義を覚えて、なにか推理小説を読んでみてください(ちなみに、お勧めはM・ナイト・シャマランの『シックスセンス』)。そのストーリーがいかにロジカルに練られているかがわかるはずです。

ここまで、論理的に考えるということを少し難しく説明してきましたが、決して特殊な能力ではなく、言葉を覚えてからずっとやってきていること、それも毎日毎日繰り返しているコミュニケーションが論理的に考えることそのものなのです。

まとめ

ここまでで、書くことによって4つのパワーが得られること、ロジカルシンキングには3つのステップ「分類」「相関関係」「因果関係」があること、因果関係で考えるとはどういうことか、7つの因果関係のチェックポイントを説明してきました。

次からは、いよいよシチュエーション毎にどんな図解で問題解決が出来るのかを伝授していきます。

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桜谷慎一|GrabFuture
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